消えゆく合格掲示板 ネットで速報の大学増える
2008年03月07日
合格掲示板の前で抱き合って喜び、先輩の胴上げで宙に舞う――。春のこんな風物詩が、大学から消えつつある。合格発表をホームページ(HP)や携帯電話サイトだけですます大学が増えているのだ。私立大では半数以上がキャンパスでの掲示をやめており、国立大でも廃止の動きが出始めた。志望校から重い足どりで帰る挫折の光景もまた、少なくなっている。
7日午前、神戸市内にある神戸大の4キャンパスで、11学部計1926人の合格発表があった。同大学はHPと掲示板の両方で発表しているが、法学部を受験した大阪府立三国丘高校(堺市)3年の桝井妙子さん(18)は、灘区の六甲台キャンパスに足を運んだ。掲示板と受験票の番号を何度も見比べてから笑顔をみせた桝井さんは「頑張ってきた成果を、この目で確かめたくて」と話した。
ただ、こんな光景もやがて消え「今は昔」のこととなるかもしれない。
大阪大は、昨春の07年度入試から掲示板での合格発表をやめた。5年以上前にHPで合格者の受験番号の発表を始めたところ、掲示板を見に来る受験生が減り、ピーク時の半分ほどになった。「時代の流れです」と明田敏彦・入試課長。
掲示板の設置に手間や金がかかることもあり、私立大では10年以上前から学内掲示をやめる動きが始まった。国立大では3年前に東北大が初めて廃止し、群馬大が2年前、大阪大と横浜国立大が昨年にやめた。文部科学省の調べでは、昨春、一つでも掲示しない学部があった私立大は全561大学中311。国立は全83大学中4だった。
合格者の受験番号がわかる携帯サイトの活用も広がっている。大学情報センター(大阪市)は昨年から、国公立大の委託を受け、サイト上で大学ごとに合格番号を示すサービスを始めた。契約は昨春の23大学から今春は34大学に増えた。今春導入した大阪教育大や奈良女子大の担当者は「今時の受験生にはパソコンを開くより携帯の方が使い勝手がいい」と話す。
一方、学内掲示にこだわるのは東京大だ。合格者の受験番号が載る学生作成のHPはあるが、大学運営のものはない。渡辺省三・本部入試グループ長は「頑張ってきた受験生にとって一生で一度のドラマチックな感激の場。大事にしたい」と話す。
6年前にHPでの発表を始めた立命館大も、掲示板は小さくしつつ、学内掲示を続けている。HPで合格を確かめてから来て、掲示板の前で記念撮影する受験生がいる。片田賢史・入試広報課長は「学内で臨場感をもって合格を味わいたい人がまだいるので、やめられない」という。
(朝日新聞)
掲示板での合格発表は、ひとつの季節の風物詩であって、大事にして欲しいと思う。
入学試験は、人生のひとつの大切な節目であって、合格発表は、そのセレモニーだから。
「掲示板に費用がかかる」とかいってケチる問題じゃないし、「使い勝手」の問題でもない。
掲示板に合格者の番号や名前が掲出されるのをドキドキしながら待つ。
合格して歓喜する人もいれば、不合格で肩を落とす人もいる。
合格発表会場に向かう途中で、肩を落として帰路につく友人とすれ違ったり、
合格して帰宅する道すがら、これから合格発表会場に向かう友人とすれ違ったり。
不合格者のことを思いやったて、喜びの表現を控え目にしたり、
自分が不合格であっても、友人の合格を讃えたり、
合格発表の場がひとつの社会の縮図であり、またとない社会勉強の機会であったりもする。
合格掲示板は、廃止してはならないと思う。
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