警察庁の「自転車三人乗り禁止徹底」の動きに、子育て中の女性らから反発が出た。うなずいてしまった。
共働きのため、五歳児と一歳児を保育園に預けている。着替えなど四十センチ四方の布袋いっぱいの荷物を持ち、歩いて通園する。曜日によっては昼寝用布団の敷布と掛け布のセットが加わる。自分の仕事用カバンもある。
この“標準装備”を持つと、子供二人の手を引けなくなる。三人乗りの危険性は分かるが、手放しの幼児を歩かせるのも危ない。きょうだいが違う園になったり、家から遠い園になることもあり、三人乗り派は少なからずいる。
こうした子育て世代の事情を、警察庁はどこまで理解していただろうか。気になるデータがある。同庁男性職員の育児休業取得率は二十府省庁平均を上回ったが、1・2%(二〇〇六年度)。職員に占める女性職員の割合は9・3%(同年一月現在)で、同府省庁のうち三番目に低い。
育児中の職員はいるだろうし、このデータだけで決め付けられない。安全対策上、規制は必要かもしれないが、今回の規制強化は少子化対策には逆行してみえた。
母親らの反発を受け、同庁は「安全性が確保できる自転車の開発」を前提に三人乗り容認に転換したようだ。子供用ヘルメットの普及促進や、自転車専用レーンの本格設置、三人乗りの安全教育などの安全対策も合わせて考えられないものか。
政府は「新待機児童ゼロ作戦」や企業のワークライフバランス推進支援など「官民挙げて」少子化対策に取り組むという。そうであれば、あらゆる政策に育児支援の視点があっていい。 (鈴木穣)
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