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2008年3月17日

 金沢市内の小学校で、六年生が校舎への感謝の気持ちを込め保護者や地域住民らとトイレを清掃した。新入生をきれいなトイレで迎える気配りも見られる

「江戸しぐさ」と言われる生活の知恵がある。「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」などがよく引き合いに出される。「傘かしげ」は傘を外側に傾け濡れないようにすれ違うことで、「こぶし腰浮かせ」はこぶし分だけ腰を浮かせて席を詰めることだ。また、雪かきの配慮は「金沢しぐさ」と言われている

町で暮らすにはそのための不文律というものがあろう。古くさく煩わしく思うが、聞いてみればいずれも当たり前のことだ。思いやりや助け合いの心である。児童らのトイレ清掃はまさにその表れだ

近年、映画や写真集、テーマパークなどで昭和三十年代が注目されている。貧しくても明るく暮らしていた時代への懐古なのかもしれない。だが、それとともにそこには戦前からの価値観が残っており、「金沢しぐさ」のような社会の常識に対する暗黙の合意があったからでもあろう

勝手放題のモンスターがはびこる現代で、人々が「安住の地」を求めているとも言えようか。


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