県内の6割近い中学校で5日、卒業式が行われ、多くの卒業生たちが夢と希望を胸に学びやを巣立った。弘前市の南中学校(奈良岡憲一校長)では122人の卒業生が式に臨んだが、音楽教諭で今年度、病を押して吹奏楽部の顧問を務め、3月末で定年退職する一戸則夫教諭が卒業を見届け、最後のタクトを振るった。
県教委によると、この日卒業式を行ったのは県内175校(付属中含む)のうち100校。今後、19日まで各校で行われる。
弘前市の南中学校の卒業証書授与式では、奈良岡校長が卒業生1人ひとりに卒業証書を手渡し、「卒業おめでとう。深い感謝の下で決意を新たにしてほしい」と激励し、北海道開拓の父ウィリアム・スミス・クラーク博士の言葉「少年よ大志を抱け」を卒業生に贈った。また、在校生代表の送辞を受け、卒業生の鎌田紘輔君が「先生からの言葉、家族の支えがあったからこそ今がある。未来に向かい、新たな可能性を見つけていきたい」と答辞を述べた。
この日は吹奏楽部顧問の一戸教諭が吹奏楽演奏の指揮を執り、教員として最後の大きな舞台となる卒業式を盛り上げた。
一戸教諭は、2、3年ほど前に病気で左腕が不自由になったことから、現在は指揮を執るのが難しい状況にある。以前、弘前市の第三中学校で吹奏楽部顧問を務めた時には、生徒たちを全国大会まで導いた経験を持つ。
南中学校では今年度、前任の顧問が転校したことから、病を押して顧問に復帰した。その結果、部員34人と少ないながらも、見事念願の県大会に出場し、銅賞入賞を果たした。
卒業式の終盤には、卒業生による「我(わ)が行く道は」の合唱が行われ、一戸教諭が壇上に上がり、最後の指揮を務めた。卒業生たちは、涙をぬぐいながら合唱に臨み、無伴奏で美しいハーモニーを会場に響かせていた。
卒業式を終え、一戸教諭は「南中にいた9年間で、合唱の出来はきょうが一番良かった。卒業式で指揮を執ったことは本当に良い思い出。達成感にあふれている。今になり最後ということを実感している」と話し、生徒たちの成長に目を細めていた。
【写真説明】吹奏楽部の指揮を執り卒業式を盛り上げる一戸教諭=上 卒業証書を手に退場する弘前南中の卒業生たち=下