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人・あきた:49校で「命の教室」を開催、県動物管理センター・坂本尚志さん /秋田

 ◇重さと大切さ実感して--県動物管理センター所長・坂本尚志さん

 自殺率が12年連続全国1位と命の重さが問われている秋田県。捨て犬や猫の殺処分から譲渡事業までに携わる県動物管理センター所長として、消えゆく命やそれを見守ってきた職員の姿を通して命の大切さを実感してもらおうと、06年から県内の小中学校などで「命の教室」を開いている。

 父の勧めで、県の職員に。35歳で秋田市保健所に配属され、初めて犬を殺処分した。当時は1匹ずつ押さえつけて、注射を打つ時代だった。週に1回、多い時には一度に120匹の命を止めた。「つらいし、誰も死ぬ場面は見たくない。それでも犬を大事に世話し、最期を見届ける同僚の後ろ姿に感動していた」

 各保健所での殺処分は県動物管理センターに集約されるようになり、そのセンターに配属された06年、藤里町で連続児童殺害事件が起こった。いじめ自殺も社会問題になっていた。「命が軽んじられるこの現状になんとかメスを入れたい」。その一心で生み出したのが命の教室だった。

 教室では「ありのままの姿を見せたい」と、殺処分のためガス室に追い立てられる犬や5分後には殺処分されてしまう犬一匹一匹に優しく声をかけて世話する職員の姿など、センターの日常生活を追ったテレビのドキュメンタリー番組を上映する。

 子供たちの前に立ち、センターの活動を紹介するほか、心臓の音を聞き比べて、犬も人間と同じように生きていることを実感してもらう。時には、交通事故で失った右足の義足を外し、けがに絶望して自殺を試みた自らの経験も話す。これらはすべて「命を大切に感じてもらいたいから。自分を大切にできるようになれば他人も大事にできる」からだ。

 命の教室はこれまで49校で開催し、6351人が参加した。人事異動のある県庁を離れて、動物愛護にじっくりと取り組むため、この春、早期退職するが、命の教室はほかの職員の手によって引き継がれていく。心配はしていない。「センターには命を考える題材がたくさんがある。きっとうまくいく」【馬場直子】

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 ■人物略歴

 ◇さかもと・なおし

 旧十文字町(現横手市)出身。麻布大獣医学部卒。獣医師免許を取得後、75年、県職員に。横手保健所や秋田市保健所の勤務を経て、06年4月から県動物管理センター所長。妻(58)と2人暮らし。長男(27)と次男(26)は独立し、東京に住む。55歳。

毎日新聞 2008年2月17日

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