【ニューデリー栗田慎一、北京・大谷麻由美】中国チベット自治区ラサで起きた大規模な暴動で、インド北部ダラムサラにあるチベット亡命政府は16日、ラサ市内で少女5人を含む80人の遺体が確認されたと明らかにした。中国当局は国営新華社通信を通じ「犠牲者は10人」と発表している。亡命政府側の主張が事実なら1989年のラサ暴動の死者16人を大幅に超える。国際社会が対中批判を強めるのは必至で、胡錦濤指導部は難しい対応を迫られそうだ。
これとは別に、暴動はチベット自治区以外にも拡大。四川省北部アバ・チベット族チャン族自治州では16日、数千人の僧侶らのデモ隊と治安当局が衝突し、僧侶を含む8人が死亡したという。
「チベット独立」などを叫びながら行進していた僧侶らに対して、治安部隊が催涙ガス弾を発射した。また、ロイター通信は同州で約200人が警察署に火炎瓶を投げ、抗議したと報じた。
一連の抗議活動でラサ以外で死者が出たとの情報は初めて。四川省の省都・成都の旅行会社で働く男性は毎日新聞の電話取材にアバの状況について「まだ混乱状態のままだ」と語った。
ワシントンに本部を置く国際人権団体もこのデモで参加者4人が射殺されたとの目撃情報を伝えた。青海省でもデモが確認されており、今回四川省で抗議活動が発生したことで、暴動のさらなる拡大が懸念される。
一方、新華社電によると、北京滞在中のラサのドジェ・ツェジュグ市長は16日、「ラサは平穏だ」と述べ、治安回復を強調した。暴動から2日経過したラサでは、抗議行動や衝突などは起きていない模様だ。
毎日新聞 2008年3月16日 22時43分 (最終更新時間 3月17日 0時35分)