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イギリス ゲイ・ポルノ産業におけるHIV感染
2008/03/16 11:50
コンドームを使用しないセックス、いわゆる「ベアバック・セックス」により出演モデルをHIVなど性感染症の危険にさらしたことがBBCの番組で明らかになったとして、3本のゲイ・ポルノDVDが販売中止となった。
BBCによると、販売中止となった3本中2本のDVDでは、8人のモデルがベアバック・セックスをしており、うち4人が撮影後の検査でHIV陽性と診断された。HIV陽性と診断されたモデルのひとりは、感染の原因となった撮影が収められたDVDが市場に出たことについて、「困惑している」という。
また、3本のDVDとは別に、16歳の少年をゲイ・ポルノに出演させた上、ベアバック・セックスをさせたとしてゲイ・ポルノ・プロデューサーであるルーファス・フォークス容疑者(写真右)が逮捕されている。
これらの事件を受け、イギリスのベアバック・ポルノの先駆者Icreme社は、今後はコンドームを使用したゲイ・ポルノのみを発売するという。
1980年代のHIV感染拡大後、ゲイ・ポルノ業界では、コンドームを使用しない作品はタブーとされてきた。しかしBBCによるとこの4年間、ベアバック・ポルノ制作会社の数は急増。ゲイ・ポルノ市場の60%を占めるという。
医療関係者の中には、この事態について、HIVやその他性感染症の増加にもかかわらず、社会におけるHIVを含む性感染症への認識・理解が不足していることの現れだと指摘する人もいる。
リャーリング・クロス病院のセクシュアル・ヘルス・アドバイザーのセリ・エバンスさんは、「私たちは、長い間コンドームの使用を訴えてきた。しかし、人びとはそれに飽きてしまい、『そんなことは全部知っている』と考えているのかも知れない」という。
アメリカにおけるゲイ・ポルノ監督の先駆者チ・チ・ラリューさんは、ベアバック・セックスに、強く反対の立場を表明。「ゲイ・コミュニティが経てきた苦悩を忘れ、どうして私たち(ゲイ・ポルノ業界)は、ポルノのために人を危険にさらすようなことをしているのか」と言い、消費者に対し、コンドームを使用しないポルノDVDをボイコットするよう呼びかけている。
イギリスでは、ゲイ・ポルノのスティーヴン・ブルーワー監督が、ベアバック・ポルノに反対するキャンペーンを展開。同監督はプロデューサーや出演モデルらに、ゲイ・ポルノ産業におけるHIVなど性感染症のリスクを最小限にするための新たなガイドラインを作成し、賛同を呼びかけている。
ブルーワー監督はBBCに対し、「HIV陽性であることをパートナーや両親にどう伝えたらいいか分からないと言って18歳のモデルが私の肩で泣くなんてことがないようにしたいだけ」と話している。(翻訳・編集 Sam) |