諏訪赤十字病院(諏訪市)は15日、「市民公開がん講演会」を同市文化センターで開いた。ノンフィクション作家の柳田邦男さんが「豊かな生、豊かな死のために」と題して講演。「人生論としての生と死」という観点から、死が近付いた時、残された時間を悔いなく生きることが大切とし、死と前向きに向き合い、生きがいを見つけ、自分自身で人生の最終章を創(つく)っていくことが人生の満足感につながると語った。
柳田さんは、2月末にすい臓がんで亡くなった友人の職人の逸話を紹介。59歳で進行性のがんと診断されたその職人は絵画の額装を手掛けていたが、妻と娘に工房を継いでもらおうと仕事を教えながら闘病生活を続け、最後の最後までやり遂げたという。
「死が近付いても暗いものととらえず直視し、残された人も共有する。癒しとは、つらいことに真正面から向き合い、一生懸命生きること」とし、「自分が亡くなってから残された人の心の中でどう生き続けていくか。最後の生き様が大事」と強調した。
人生の納得を得るにはどうすればよいか。柳田さんは「どんな小さくてもいいから生きがいを見つけ、希望を捨てないこと」と指摘。「生と死は一体。残された人にとっては始まりであり、その時支えになるのが亡くなった人が残したもの。精神性はつながっていく。その意味を見つけることが、その人にとって大事になる」とした。
講演会は、同病院が地域がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて行っているがん教室の一環で開催。市民ら約800人が聴講した。