Exhibitions in Caen 2006
2006年展示会 カン・メモリアル

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 館に入って正面のカウンターで入場券を買う際「サンテックスの展示を見るだけなのだけれど」と言ってみたら、「それならここに掲示してある料金とは別立てよ」と全館観覧の半額以下のチケットを打ち出してくれました。主なミュージアムは入場者の出身国を調査しているらしく(他のミュージアムでも同様の質問を受け、キーボードからなにやら打ち込んでいましたから)、「日本! いままで来たことがないわね」と言われました。【Caen Memorial :訳せば“カン平和記念館”でしょうが、実態は、大反攻上陸作戦によってナチスドイツを追い落とすきっかけとなったノルマンディ地方に建てられた“戦争・兵器博物館”です。ただし、展示は第二次大戦だけではありません。】
 そのカウンターの右正面に、机・サンテックスの銅像・Pilot de Guerre の原稿の一部、の3点が展示されていました。これは観覧料を払わなくとも見ることが出来ます。


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幸運にも、撮影取材に行き会わせました。
撮影のために取り除かれるプラスチックケース。

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むき出しになった机。

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ナイフで刻まれたサインや絵がいっぱい。著名人が多いことで有名。

 友人のひとり、ベルナール・ラモットの部屋にあった机。サンテックスがニューヨークで住んだ部屋の以前の住人であったマレーネ・デートリッヒをはじめ、サルバドール・ダリやチャールズ・チャプリンの名があるそうです。(探したのですが、確認できませんでした)

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サンテックスのサインも彫られています。

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これは別の場所に彫られた、とても小さな犬か狐。
サンテックスの手による物ではないと思われます。

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何のために使われたのか、明らかに人為的に明けられた等間隔の孔。

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机の下はこんな状態。

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コインやメダルがやたら埋め込まれています。中には鍵なども。

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下辺左の四角い物は金のプレート。

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このプレート、日本の田中貴金属が販売した物です。
(同社に問い合わせた結果、歯科材料純金プレートと思われます)

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右側二人は記念館の係員。他は撮影を終わった取材陣。

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もと通りプラスチックケースが戻されます。


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サンテックスの銅像(コンスエロ作)


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2番目の夫、ゴメス・カリリョのシルクハットと杖、コンスエロの帽子と髪飾り。

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船旅用の大型トランクと帽子。


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南米時代のサンテックスが着たレインコート。折れたプロペラも。

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入り口付近から見た展示室の概要。


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サンテックスとコンスエロの結婚式招待状(一部)
紅いゴム印は「コンスエロ相続遺産」

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コンスエロの「黒い花嫁衣装」
(以前見た時より生地が疲れている様子で、少し心配です。)


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サンテックスの軍装。床の紅いリボンが付いた勲章はレジョン・ドヌール

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彼はトランプ手品が得意だった。

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特許公示公報と申請原稿。


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ニューヨーク時代のコンスエロのスーツケースや衣服・帽子。
絵は後の時代に描いた素描。

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コンスエロの手鏡・ヘアブラシ・オペラグラス。
バッグ前の香水はゲラン社の Vol de Nuit。


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水彩絵具。Le Petit Prince 原画もこれで?

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タイプライター(レミントン社製)・万年筆・インク壺兼文鎮。

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袋だたきに遭う原因となったラジオ放送“まずフランスなのだ”。

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シルビアのブレスレット

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 何の説明もなく、ひっそりと展示されていました。直感的に「シルビアが贈った“金のブレスレット”に違いない」と確信しました【サンテックスの死後、コンスエロの手に渡ったことは判明しています】。もしそうならば、表にはサンテックスの名前と血液型が彫られているはずです。ご覧の通り、革のサックに邪魔され、しかも透明プラスチックケースに保護された上、裏から覗くためには展示エリア(立ち入り禁止)に入らなければならないという二重三重のガードぶりで、プレートの表は見ることが出来ませんでした。
 画像では読み取れないでしょうが、裏側(写っているのは湾曲したプレートの内側、すなわち、肌に密着する部分で、裏側に当たります)に彫られた文字は2行、「SANS ADIEW /“RENARD”」とあります。こんな文言が彫られていたとは、まったく予想外の驚きでした。込められた思いの深さが、ひしひしと伝わってきます。

 簡単に日本語化できませんが、大まかに言って 2 × 2、4通りの多義性を持ちます。つまり、“adiew”の主語と“RENARD”が誰かと言うことです。

 「さよならは言いっこ無しね、キツネさん」
 「さよならは言わないわよ、キツネさん」
 「お別れだなんて言わないで、キツネより」
 「必ず帰ってきてね、キツネより」

 Renard は男性名詞ですから、シルビアと解釈することには異論が集中することでしょう。しかし、“RENARD”とクォーテーションマークで囲まれているからには、これが Le Petit Prince の“renard”でありことは明白です。そして、「renard は私だ」とシルビアは信じていたに違いありません。女性名詞 renarde ではそれが誰を指すかがばれてしまって都合が悪いから、男性名詞にしたのだと私は(そしてシルビアも)考えています。だとすればこのブレスレットに刻まれた言葉の意味は、後半のふたつの内のいずれかになります。前線へ出立する恋人に向かって、あなたならどの言葉を選びますか?

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酸素マスク・手袋・帽子・時計。


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出版社に宛てたコンスエロの手紙の3ページ目(最終ページ)。
(英文。Le Petit Prince の続編を書きたいと提案している。)
署名代わりのキスマーク(最初のも二番目のも気に入らなかったのでしょう)

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グラース時代のコンスエロの遺品。

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 上記カンでの展示会で楽しみにしていた“Le Petit Prince の原画”は「渡り鳥にぶら下がって旅立つプリンス」と「ヘビと話する塀の上のプリンス」の2点だけが展示されていました。原画は撮影禁止でしたので、公開する画像はありません。

 「渡り鳥にぶら下がって旅立つプリンス」は通常のスケッチより大きな作品らしく、額に入れて飾られた絵は部分だけでした。

 「ヘビと話する塀の上のプリンス」の塀は、筆による色むらがかなりあり、印刷されたものとは違った感じでした。

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