事務用品などを買って、領収書をもらうことがある。
「あて名はどういたしましょう」
「毎日新聞、としてください」
店員とこんなやり取りをして、受け取った領収書を見てビックリすることがある。「毎日親聞」や「毎日新文」だったりする。
思わず店員の顔を見つめてしまうが、自分だって偉そうなことは言えない。
先日の裁判取材メモ。「しつけをこえた幼児ギャクタイそのもの。ソボーでしつよう、ようしゃのないもの」。裁判長の言葉を、急いで聞き取るせいもあるが、漢字がすぐに頭に浮かばない。
パソコンのお世話になって、文字を手書きする必要のない生活が続き、頭から漢字がこぼれ落ちるのだろう。利便をもたらす技術革新の一方で、日本の文化を作ってきた漢字が、悲しんでいるように思えてならない。【長谷川力】
毎日新聞 2008年3月16日