アフガニスタン初の女性ポップスター誕生か　反発の声も

カブール（ＡＰ）　タリバーン政権崩壊後のアフガニスタンで初めて、女性がスター誕生番組「アフガンスター」で最後の３人まで勝ち残って注目を浴びている。

リマ・サハールさんは、本来保守的なパシュトゥン人の女性で、タリバーンに縁の深いカンダハル出身だ。

「アフガンスター」は米国の人気番組「アメリカン・アイドル」のアフガニスタン版ともいえる番組。放送中は飲食店のテレビの前に大きな人だかりができるほどの人気だ。

出演者はスタジオの聴衆と審査員３人の前で歌を披露し、視聴者からテキストメッセージで寄せられた投票で勝ち抜いていく。過去の優勝者はレコード会社との契約をものにしている。

サハールさんは２０００人の応募者の中から勝ち残ってきた。過去の回で女性が５位まで勝ち残ったことはあったが、３位まで進出したのは初めて。残る２人は２１歳と１９歳の男性だ。

女性がテレビの歌番組で成功していることに対し、保守層からは批判の声も出ている。２００１年に崩壊したイスラム教強硬派のタリバーン政権下では、女性は１人で外出することさえ許されず、音楽やテレビは禁止されていた。保守系の聖職者協議会はカルザイ大統領に対し、「アフガニスタンが現在のような状況にある中で、女性歌手は必要ない」と抗議した。

サハールさんさんの出身地カンダハルでは、「パシュトゥン人女性がテレビで歌うことはわが国の文化に反する」と眉をひそめる男性も。

これに対して若者たちは、この番組が女性の地位向上に役立っていると反論する。番組の司会者は、アフガンスターの大ヒットで、同国の平和な側面を世界に示すことができたと話した。

サハールさんら勝ち残った３人は、このほどカブールで記者会見。ブルーのスカーフで髪を覆ったサハールさんは、現状を覆さなければ女性の地位向上はあり得ないと言い、「痛みなくして得るものはない。わたしたちの国ではアーティストは歴史的、文化的存在だった。わたしはアフガニスタンの人たちの投票でここまで来たのです」と訴えた。

ファン向けのイベントでは、３人の写真を撮ろうと数百人が詰め掛けた。「女性と男性は平等だ。何も問題ないよ」と、鮮やかな色のシャツにコーランをあしらった金のネックレスを下げた男性は言う。

もっとも識者からは、勝者が才能ではなく民族で選ばれてしまうのではないかと懸念する声も。最終選考に残った３人は、それぞれアフガニスタンを代表する民族のパシュトゥン人、ハザラ人、タジク人だ。

また、女性が必ずしもサハールさんに投票してくれるわけでもなさそうだ。イベントに集まった女性ファンは全員が、白いレザージャケット姿の１９歳の男性、ラフィ・ナーブザダさんにまっしぐらだった。