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2006年5月10日 (水)

「私のこだわり人物伝〜松田優作〜」(2/4)

「おまえ、『野獣死すべし』の脚本引き受けたのか。いいか、伊達はこうやって振り向くんだよ。」とあるパーティー会場の中、脚本家の丸山に向かって、松田優作はこういうと、うつろな表情で、ゆっ・・・・・くりと、一分間ぐらいかけて振り向いて見せた。その後、優作は役作りに入り、体重を8キロ落とし、奥歯を四本抜いた・・・・。

リリーフランキーさんの、松田優作思い出話、今夜は、『野獣死すべし』のお話でした。脚本家の丸山さんは、「そんなの大藪晴彦の主人公じゃないじゃないか」と思いつつも、ゆっくりと振り向く意味と格闘しながら、脚本を書き上げたという。

松田優作の演じる伊達は、元エリート通信社の社員。特派員として戦場に赴き、そこで狂気にさらされ、人を殺すことのみに快感を感じる殺人者となって帰ってくる。やくざや銀行を襲って金を奪うが、金は目的ではなく、やがて伊達は、仲間も恋人も追ってくる刑事も殺し、映画は不可解なラストシーンを迎える。脚本家の丸山さんも意味がわからず、撮影の仙元さんが、監督の村川さんに聞いたところ、「優作に聞いてよ」と言われたという・・・。

丸山さんの書いた台本の上から、松田優作の手で書かれた台詞がびっしりと大量に書き込まれ、殺人者伊達はこの世に解き放たれた。この映画で描かれた狂気は、松田優作自身の、「演じる」ということへの狂気だったのかもしれません。

次回は、丸山さんを追い込んで、優作が書かせた、未発表のシナリオに関するお話です。丸山さんは、あまりに追い込まれるので、「優作を殺して、俺も死のう」と、何度も考えたんだとか・・・。

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コメント

『野獣死すべし』には、いろいろな逸話があって、
主人公の伊達邦彦が長身でないことを知るや、
足を切って身長を縮めようと本気で考えてたそうです。
さすがに村川透は、これで退いてしまって、
優作とのコンビ解消になってしまったようです。
(とはいえ本当の遺作となったジョイナーと共演の単発ドラマで再び組みますが…笑)
もっとも丸山さんにとって、松田優作は人生最大の恩人でしょうから、
「優作を殺して、俺も死のう」という気持ちは痛切だったんでしょう。

そういえば、ちょうど『野獣死すべし』が公開された時、
次回作も『海燕ジョーの奇跡』(深作欣二監督)で決定してて、
劇場で特報も流れててましたが、
それが流れたいきさつも気になるところです。

投稿 katsu | 2006年5月10日 (水) 23時18分

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