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「バイオ燃料生産は温暖化を促進する」と研究者らが指摘
2008/02/18

【ブルックリンIPS(カナダ)=スティーブン・リーヒ、2月8日】

 バイオ燃料は開発当初から温室効果ガス(GHG)の排出量を10%から20%削減でき『化石燃料に代わるクリーンなエネルギー』としてもてはやされてきた。しかし、最近この利用促進をめぐり専門家の間で深刻な問題点を指摘する声が広がっている。

 『サイエンス(Science)』誌は7日、「バイオ燃料は従来の化石燃料よりも多くのGHGを発生させている」と結論付けた2つの研究論文を公表した。

 1つ目の研究論文で、ミネソタ大学の生態学者、デビッド・ティルマン教授は「バイオ燃料生成のために多くの耕作地を利用することはGHGを増大させることになる」と述べた。

 燃料用作物を栽培するためにはGHGを吸収する多くの植生を伐採し、広大な土地を開墾しなければならない。一方で、残った土地から食物用作物の栽培農地も確保する必要がある。この結果、食物価格の高騰や(非耕地から耕地への用地転換による)森林破壊などを招く恐れがあり温暖化を促進することになる。

 環境経済研究者のティモシー・サーチンガー氏はもう1つの研究論文の中でバイオ燃料用の作物畑に転換した際に出るCO2量と、生産されたバイオ燃料の使用によるCO2排出削減量が等しくなる時間を試算した。

 この試算結果によると、トウモロコシ由来のエタノールの場合は167年、インドネシアやマレーシアの泥炭地をパームやしの畑に転換する場合で423年もかかるという。つまり、バイオ燃料由来の『CO2債務』を返済するためには数百年もの莫大な月日を要することになるのである。

 民間環境保護団体『ネイチャー・コンサーバンシー(Nature Conservancy)』のジョー・ファージョン氏は「温暖化を緩和するために、バイオ燃料の生産目的で広大な土地を開拓していくのは全く意味が無いことだ」と指摘した。

 バイオ燃料の今後について、ティルマン教授は「食物用作物の栽培に適さない農地に植えられた多年生植物を利用したり、(木材や藁など)廃棄物バイオマスからバイオ燃料を生成することは有益だ」と述べた。また、バイオ燃料の生成に関する国際的な規準を設けるなど法整備の必要性も強調した。

 『バイオ燃料推進』に疑問を投げかける研究論文について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=松本宏美(Diplomatt)/IPS Japan山口響

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バイオ燃料いいことなし、と批評家
アフリカ・バイオ燃料:『可能性と課題』

(IPSJapan)

ブルックリンIPSのスティーブン・リーヒより、『バイオ燃料推進』に疑問を投げかける研究論文について報告したIPS記事。(IPS Japan山口響) 資料:Envolverde







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