トヨタのCSR
トヨタの組織作りのノウハウに関する本を読みました。
リンク: Amazon.co.jp: トヨタの「問題解決」で会社が変わる! (ベスト新書 153): 本: (株)OJTソリューションズ.
本書は、トヨタ勤続40年以上のベテラントレーナーたちとリクルート出身の営業マンたちから構成される人材育成支援会社・OJTソリューションズが、今まで培ったノウハウを公開し、一般企業で会社を変えるための、問題解決の考え方を伝えるものである。
というような内容の本ですが、これを読んでトヨタのCSRについて、勝手に考えてみました。
トヨタにとって、本業としてのCSRとは何か?ということについてです。
トヨタという企業はかなりCSRに力を入れていると思います。
トヨタのウェブサイトを見ると、社会貢献活動のメニューの多さに圧倒されます。さすが世界一の大企業であります。
しかし、本業としてのCSR、マイケル・ポーターが言うところの戦略的CSRとなると、ハイブリッド・カーの開発くらいしか思い当たりません。
自動車メーカーが社会から突きつけられている課題は環境対策ですから、ハイブリッド車や燃料電池車の開発だけで十分“本業としてのCSR”やってるじゃないかとも言えます。植林事業にも力を入れてますから、環境対策としてはやるべきことはやってるとも言えるでしょう。
しかし、世界が抱えている大きな問題は環境だけではありません。貧困、病気、教育といった早急に解決すべき問題が他にもあるのですが、このような分野に自動車メーカーが本業として貢献するにはどうすればいいか? これはちょっと難問でもあります。
アジアやアフリカの貧困国に学校を作る。そのような事業にベネッセのような企業が取組むのはまさに本業としてのCSRですが、自動車メーカーが本業として取組もうとすれば、自動車の技術者を養成する学校を作るとか、あんまりメインストリームとは言えないことしか思いつきません。
ところが、トヨタという会社の本業は、クルマをつくることではないんじゃないか? そんなことを考えてしまったわけです。これを言うと、トヨタでクルマを開発している人に怒られそうですが、トヨタはたまたまクルマを作って成功しているだけで、ホントはクルマじゃなくてもよかったんじゃないか?
たとえば、レクサスは世界の高級車に新し価値観をもたらした凄いクルマですが、その凄さは、日産がGT-Rという凄いクルマを作る、という方向性とはまったく別です。
日産やホンダ、ベンツやBMWやジャガーなどの外国メーカーなどのクルマ作りの情熱と、トヨタのそれでは向いてるベクトルが違うように思えるわけです。
だから、たとえば日産は、フェアレディやGT-Rといった、たいして儲かるはずもないクルマのファンを大事にしますが、トヨタはあのソアラのファンでさえ、平気で(?)切り捨てちゃったりします。ようするに、古いタイプのクルマ好きやクルマ屋の情熱とは方向性が違うのですね。トヨタの本業はクルマ作りじゃないかもね、と僕が考える理由です。
じゃあ、トヨタの本業って何なんだよ!?というと、それは「強い組織作り」ではないかと。
トヨタって、ホントは強い組織を作るとか、そのためにカイゼン運動をするとか、そういうことがホントに好きなことであって、その対象はクルマ作りじゃなくてもいいんじゃないかなと考えてしまったわけです。
そう考えると、トヨタにとっての本業としてのCSR、戦略的CSRの具体的な方向性がハッキリと見えてきます。「強い組織作り」のノウハウの提供です。
世界中で何百万という数のNPOが、世界を変えるために日夜頑張ってますが、残念ながらトヨタと較べればヘナチョコな組織も多いですし、たとえばフェアトレードで貧困国を救おうと考えても、現地の工場がヘナチョコで苦労するという例など山ほどあります。情熱もアイデアも素晴らしいけれど、事業経験が乏しいという社会起業家志望の人間もたくさんいます。そんな人たちに、世界最強のトヨタ流組織作りのノウハウを提供する。
あるいは、既に強力な組織を持っている大手NPOと提携して、さらなるカイゼン!カイゼン!カイゼン!を推進していく。
そうなれば、世界はもっと早いスピードで変わっていくでしょう。
そもそも、社会起業家が台頭してきたのは、国連や世界銀行などの仕事の効率が悪いというところにも理由があるので、トヨタのカイゼン・エキスパートがトレーナーとして世界銀行や国連をカイゼンしていくのも世界のためには良いことだと思います。
#ま、世界銀行も国連も受け入れないでしょうけど。
それでトヨタはどうなるかというと、世界最大の組織運営コンサルタント会社になるとともに、新興国で数多くの企業を育て、先進国の大手NPOを傘下に収め、世界で初めて企業とNPOを事業の両輪とした超巨大コングロマリットになるわけです。
これは、世界最強の組織作り集団であるトヨタでしか実現できません。金さえあれば出来るというわけではないので。
かつて、世界最大のコンピュータ・メーカーであったIBMが、パソコン部門を売り飛ばしてコンサル会社に変身して成功したように、ビジネスの世界では何が起こるか分かりません。GEもいまや金融会社です。トヨタが自動車メーカーを脱却する日が来てもおかしくないと思うのですがどうでしょう?(竹井)
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