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2007年12月25日 (火)

「三十四丁目の奇跡」を今見ると?

一昨日、映画「三十四丁目の奇跡」をご紹介しましたが、実はこの作品、当ブログのテーマとも密接な関係があります。この映画、実は「戦略的CSR」の映画でもあるのです。

ひょんなことから百貨店メイシーのオモチャ売り場で働くことになった、ホンモノのサンタクロースであるクリス・クリングル。彼の仕事は、サンタの格好をして(映画の中ではサンタの衣装はクリスの自前のものという設定です)、親子連れとお話ししながらオモチャを売りつけるというものです。上司は、この際に在庫を一掃しようとして、売れ残りのオモチャを売るよう、クリスに言います。

しかし、クリスは子どもの立場に立ってオモチャを勧めます。

ある子どもは、ホンモノと同じように水を放出する消防車のオモチャが欲しいと言います。クリスは快くOKします。母親は、「そんなオモチャはメイシーにもどこにも売ってない。探したけど見つからなかった。子ども相手にいいかげんな約束をしないで欲しい」と怒りますが、クリスは「いやいや、ここの店に行けば売ってるよ」と他の店を教えます。

他にも、「このオモチャは、メイシーで売ってるモノは質が良くない」と言って、競合する百貨店で買うようにアドバイスします。

もちろん、上司は激怒しますが、「自社の利益よりも顧客の利益を優先するサービス」は大評判となり、数多くの顧客から礼状が届き、市長夫人から感謝の電話が入ったりします。

メイシーの社長は、これは有益な戦略だと判断して、全店で同じようなサービスをするよう指示します。

これは、今風に言えば「コンシェルジェ・サービス」とでも言えるサービスですね。メイシーは、商品を売る店から、コンシェルジェ・サービスを売る店に変身し、大評判となって顧客のロイヤリティを獲得します。

この成功を目の当たりにした競合店は、同様のサービスを支店でも行うように決定します。もちろん、メイシーもこのサービスを支店にも拡充させます。

このお話の教訓は、どこかの企業が戦略的CSRに成功すると、競合他社もマネを始めるので結果として、業界全体が生活者フレンドリーになり、生活者は良いサービスを受けられるようになる、世の中が良くなるということですね。

でも、競合他社にすぐに真似されるからといって戦略的CSRを怠るとどうなるか? 業界全体が生活者の支持を得られなくなるので、市場は縮小しますね。競争的優位性ばかりに目を向けていても、企業の成長には寄与しないことも多いのですし、何をやっても効果があるものはすぐに競合他社に真似されるのですから、どうせなら戦略的CSRを考えましょう。(竹井)

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