« 募金番組、これでよかったのかな? | トップページ | 三十四丁目の奇跡 »

2007年12月23日 (日)

中国の社会事業熱

中国での社会事業熱が高まっているらしい。かつての上司をはじめ、いろんな人達からその情報を頂く。最近、慶応義塾大学 総合政策学部 専任講師、及びソーシャルベンチャーパートナーズ代表の井上英之さんと事業の関係でお会いしたのであるが、その際にも、その一端をお伺いすることが出来た

井上さんは、社会起業家研究のトップランナーといえる方であり、本当に時間が過ぎるのを忘れるくらいに面白いお話をたくさんお聞きできたことを思えば、中国の話などは、本当に、その一部にすぎないのであるが、今回は敢えてそこだけをピックアップしたいと思う。

さて、中国、昨今のイメージは、危ないが成長著しい国というのがほとんどの人のそれでないだろうか。コピー天国、誰もが恐れるミッキー鼠でさえコピーしたと思えば、ダンボールを使用した肉まんのニュースさえ流れる(あれ、ニュースの偽造ということになったみたいですが、私は結構どうかなあと疑念に思ってます^^;)。金儲けのためには、何でもする、「向前走:Xiang qian zou)」ならぬ「向銭走:Xiang qian zou)」の国。

しかし、以下のニュースを聞くと、少しイメージが変わってくる。SIFEという団体を御存知だろうか。米国の団体で、社会事業コンテストの世界大会を実施している。昨年の優勝団体が、なんと中国チームなのである。

中国チーム曰く、「企業がやらないと中国は駄目になる」。このせりふ、かつての日本の起業家のせりふにそっくりなのである。「企業の立場から日本を良くしたい」「日本に足りないものを補うために起業する」「日本を、そしてひいては世界に貢献するために起業する」。今、大手となっている日本企業の歴史を紐解いてみるといい。実はほとんどが利益の前に、このような課題を抱いていることを理解するはずである。

今や世界に冠たる日本企業のルーツは実は社会起業にあると言っていい。そして今中国が実はその局面を迎えつつある。環境問題が根底にあり、そこには政府助成金をはじめとした資金が付きやすいという背景も無視できない。正直「要は金儲け」という団体もいるかもしれない。しかし、それで資金が潤沢につくほど、甘いもんでもないだろう。むしろ、環境問題や企業倫理の問題、それに端を発する問題意識が、失墜しつつある中国の誇りに火をつけたと言った方がしっくりするように思える。

日本でも、中国でも恐らく自体は同じだと思うであるが、社会市場、ソーシャルマーケット、コミュニティファイナンスなどと、社会貢献をしたいと思う人達から構築される市場は、実態はまだ、漠としている。国際貢献をしたい人間もいれば、地域貢献をしたいという人間もいるだろう。また、貧困問題に興味があるという人間もいれば、環境問題に興味を抱く人間もいる。このようにバラエティに富んだ市場である一方、よくはわからないが、なんとなく社会貢献したいと考えている人間もいるかもしれない。要は、社会市場と呼ばれるもの自体が、既存のものとして認識されていないことを示している。

漠とした、しかし確実に存在している欲求、これに時に必要なのは、形を与えることである。社会に貢献する、これをライフスタイルとして提案するのは一つの方法であろう。そしてメディアがそれを配信する、それがビジュアルな流れを構築する。社会貢献が、実はビジネスにもなる、つまり利益を生み出す、このような認識だけでなく、事例を排出していくこと、それも大きなストリームを作るはずである。社会事業のムーブメントは、日本、中国の両国をとっても大きな局面を迎えつつあるように思う。明治維新が日本に方向性を認識させ、開放政策が中国のエネルギーに方向性を認識させたように、今社会事業に必要なのは、ストリームを人々に確実に認識させるマーケティングと継続性を確実にさせるライフスタイルの構築だろう。それで、ようやく社会に貢献したいという漠とした人間の欲求に、時代のかたちを与えることが出来るように思えるのである。(坂井)

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/224259/17449282

この記事へのトラックバック一覧です: 中国の社会事業熱:

コメント

コメントを書く