「ワーキングプアⅢ」にはガッカリだよ
このブログはグッドニュースなブログにしたいので、あんまり批判的な記事は書かないようにしてますが、これは言っておきたいなと思ったので批判記事、書きます。昨夜、NHKで放送された「ワーキングプアⅢ」についてです。
なにしろNHKの「ワーキングプア」シリーズといえば、ワーキングプア問題を大きく社会に浮かび上がらせ、国政にまで影響を与えた、テレビの歴史に残るような金字塔であります。
残念ながら「Ⅰ」は見てないのですが、ちょうど去年の今頃に放送された「Ⅱ」を見て、僕もいろいろ考えてしまったのですね。これは難問だなと。
「ワーキングプア」問題は「格差」の問題でもありますが、これの本質は経済問題なので、構造的なものです。乱暴に言えば、産業構造の変化が引き起こした問題なので、そこを解決しなければどうにもならないでしょう。政府が生活保護費を増やしたり、雇用に関する法律をいじったくらいでは根本的な解決にはなりません。
では、どうのように産業構造を変えればいいのか? それは、途上国への移転が難しい産業セクターを成長させるしかないと思うのですが、そんな産業が都合良く転がってるわけもありません。無いわけではないですが、長くなるので割愛させていただいて、個人的には一つの方向性として、社会起業家やNPO、企業のCSRなどソーシャル・ビジネスの方向性が一番有効かなと考えたわけです。
それで、日本のソーシャル・ビジネス分野の成長に寄与する仕事って何?ということを考えて、今年の秋ぐらいからようやく道筋が見えてきて、まだ発表できる段階には無いので恐縮ですが、来年初めくらいからようやく動き出せるかな?という状況にまで持ってきたわけです。
それで、何故にNHK「ワーキングプアⅢ」にガッカリしたかというと、一年前の「ワーキングプアⅡ」までで大きな問題提起をしたのに、それから一年、何をしていたのかと。
今回、放送された内容はといえば、他国のワーキングプア問題を見てみましょうと、韓国、アメリカ、イギリスに取材した。日本で取材したものもありますが、メインのネタは海外取材ネタです。それはそれで、意味のない取材だとは言いません。でもね、
問題提起から一年経ってるわけだから、制作チームなりの解決策を提示すべきだと思うわけですよ。もちろん、彼らもそこは意識しているようで、だからサブタイトルは「解決へ道」となってましたが、見終わった感想は、「何の解決策も提示されてない」であります。
番組では、韓国の労働問題の専門家が「ワーキングプア問題は市場の失敗なのです」と語る。それは確かにそうなのだが、そんなことをいまさら言われても何の役にも立たない。
「ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実」の著者バーバラ・エーレンライクにインタビューして、「ヘンリー・フォードは、自社のクルマを買えるような賃金を払う必要があると語ったが、今の企業経営者にはそんな考え方はない」と語らせる。でも、そんなことを言って何かの役に立つのだろうか? エーレンライク氏はご存じないようだが、実は多くの経営者は、自社の社員に十分な給料を払いたいと思ってるが、そうはいかない事情があるから問題なのだし、社会的責任を果たしていない経営者も多いが、そんな経営者に小言を言ったくらいで態度を改めるわけもありません。
今の時点で重要なのは問題提起ではなくて、問題解決に向けての状況作りでしょう。僕が「ワーキングプアⅢ」にガッカリしたのは、要するに問題解決に有効なメッセージが何も無かったからであります。
ワーキングプア問題も格差問題も、重要なのは解決に向けての行動でありますが、メディアは事業主体にはなれないので、成功例を伝え、提示していくことが大切です。
世界には、ホームレスの自立や格差解消のために取り組んで、実績を上げている社会起業家やNPOがたくさんいるのだから、そいういった事例を紹介して、視聴者に行動を促す段階にあるはずです。問題提起した方が視聴率を稼げるからという考え方でこんな内容にしたのであれば、儲け主義の企業と何も変わらない。それでは、こんなシリーズを作っている意味は無いでしょう。
続編を作るつもりなら、ぜひ社会セクターが成長するような状況を作る、そんな内容にして欲しいものです。(竹井)
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