社会起業家とはライフスタイルの提案
NPO法人の「日本カーボンオフセット」という団体が、国内初の個人向けCO2排出権の購入サービスを始めるという。
会員制のオンラインサービスであり、必要事項入力を兼ねた会員登録を済ませると、自身の一年間のCO2排出量の試算が可能となる。これに基き排出権購入を希望する場合は、CO2 1トンあたり4200円で購入、最低1000円程度からクレジットカードによる決済も可能になる。昨今のCO2ビジネスの盛り上がりの是非についてはさておき、これはアイデアとしては結構面白い。まさに、参加者意欲をくすぐる興味深い試みではないだろうか。
今日、当サイトでも紹介したファンドレイジングの専門家、鵜尾さんと再びお会いし、いろいろな話題に盛り上がったのであるが、ヴァーチャルであれ、リアルであれ、事業に対する協賛者を増やす場合、対象者の参加意欲を如何にくすぐるのか、そして如何に参加意識を抱かせるか、この点の大切さを改めて認識した。やはり、様々なNPOの方々と真正面から付き合ってこられた方であるだけに、その眼差しはさすがだなあとつくづく感じる。
協賛者の広がりに限界がある場合、「市民社会の成熟度に問題がある」と社会に責任を投げるのは、以外に簡単なことだ。しかし、ここで想定される「市民社会の成熟」など、そもそもあり得ることなのだろうか。この場合の「市民」という言葉は、多くの場合、「個」という言葉の類義語として扱われる。未成熟の社会から解放された「個」という存在。このような「個」のイメージが、ほぼ幻想に近いものであることは、すでに多くの方が指摘されているだけでなく、多くの事例が物語っている。現代はむしろ、「個性」や「自立した個」、「自分探し」という観念の浅はかさにとことん愛想をつかした人達が、再び「コミュニティ」の大切さを認識し始めている時代と言えるだろう。昭和30年代初期を描いた映画や小説がヒットし、セカンドライフで社会貢献を志望する人たちが増加しているのも、人々が様々な「コミュニティ」を意識しだしていることが一因のように思える。
単なる「個」の集合体として社会を捉えるのか、或いは、「コミュニティ」の重層的な連なりとして社会を捉えるのか、この意識の持ち方が、社会事業のあり方を大きく変える。自身が所属している「コミュニティ」を活性化し、自身も含めて「コミュニティ」に所属する人達に対して充実感を与える方法はないか、このような意識を多くの人たちが感じ始めているのであれば、それは、社会事業の市場が大きく広がっていることを意味しているだけではなく、その人たち全てが、実は社会起業家になれる可能性を持っているということでもある。
「コミュニティ」への積極的な参加意欲と社会起業家は、切っても切り離せない関係にある。経済的にも自立し継続した事業を実施するコツ、それは、自身と事業対象者を切り離し、上から物言うことではないだろう。決して、「市民社会が成熟することを期待する」などとのせりふを吐くことではない。「社会起業家としての生き方とは、特別な資格を持った人間だけに許される専門的なフィールドなのではなく、誰でも参加が可能な新しいライフスタイルの提案である」、今、この視点からの事業を準備している。(坂井)
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