家畜銀行
家畜銀行を御存知だろうか。家畜銀行とは、一定量の家畜を購入し、農民や農民グループに貸与、農民の財産としての家畜を増やしていくとうシステムである。家畜の現物ローンであり、言わばマイクロファイナンスの家畜版といえる。ベトナム等を始め、世界の様々な国で実行されているシステムである。この家畜銀行をスリランカで実行しよう、ということになった。
今日は、かつてスリランカでプロジェクトを共にした北海道の大学のK先生と久々に対面したのだが、この家畜銀行のシステムをスリランカに投入できないかということを、ずっと計画してきた。課題としては、スリランカ側のカウンターパートの選定、そして専門家の割り出し等、幾つかあるが、これらの問題は、私とK先生のコネクションを使えば、あっさりと解決できる。
一番の課題は、家畜に与える飼料。これが実は多くの家畜銀行実施地域での課題である場合が多いらしい。ここで、私が出した秘策が現在、うちで実施しているリサイクルシステムの応用。スリランカの市場では、大量に発生するポストハーベストロスに伴う生ごみの処理が課題になっている。これらの主な市場の地域は、その多くが観光地を兼ねている例が多い。観光地から発生する生ごみもかき集め、市場だけでなく、観光地のごみ対策にも貢献することが可能となる。そして、うちで実施しているリサイクルシステム、「循環型食品残渣リサイクルシステム」を活用することにより、家畜が十分に対応できる安全な飼料が生ごみから再生できる。
また、スリランカでは、農産物や牧畜製品の食品スタンダードの独自の規格を構築しようとする考えが前からある。「循環型食品残渣リサイクルシステム」の適用は、この要望に十分に耐えうるものであるし、また日本の安全な食品供給の場所としてのスリランカの構築に大いに役に立てることができる。ポストハーベストロスの問題解決、市場のごみ問題の解決、安全な飼料に基く話題性の高い家畜銀行システムの構築、スリランカ食品規格制度構築への貢献と、大変に興味深いプロジェクトが誕生することになる。
早速、K先生との間でプロジェクト構築の約束を取り交わす。彼の教え子は、まさにその食品規格構築を担当しているスリランカ農業省のお役人。カウンターパートとしては、私がすでに大きく関わっているセワランカ財団が使える。セワランカ財団は、団体そのものがドナーでもあるが、他に国連機関をはじめ、多くのドナー機関との関係が深い。
ドナーからの支援金によるプロジェクト機関は最大5年。リサイクルシステムの場合は、2年目あたりから、自活による活動、すなわちビジネスへと切り替えることが可能だ。K先生が言った。
「社会起業家というのは、こんなに楽しい職業だったんですね」。
私は、本当に嬉しい気分になった。そう、このわくわく感、この輪を広げる職業、それが社会起業家なんだろうとつくづく感じたお昼であった。(坂井)
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