オイルマネーとNPOのお話
今日、久々にチャイナウォッチャー時代の親しい友人と、ビジネスミーティングを兼ねた夕食。本当に数ヶ月ぶりの対面。彼女は、台湾の大学を卒業して以来、一貫して中国関係のリサーチャー兼マッケッターとして働いてきたのであるが、最近その畑を越えて、オイルマネーに関する動向調査にも関わっているという。彼女いわく、
「初めて中国が小さく感じた!」
うん、その実感が自分にも良くわかる。最近のオイルマネーの動きは、確かに尋常ではない。確かに、先月、NHKのクローズアップ現代で中東マネー特集を、3日連続でやっていた。その際に、かつての上司がコメンテーターで出ていたこともあり、ずっとみていたのだが、オイルマネーの巨額さに閉口した覚えがある。この時代に、そんな巨額をいとも簡単に動かす決断を下せる人間がいるのかと。
今日、彼女曰く、「中東関係者がスポンサーになって提供している日本人研究員向け研究費の額が尋常ではない。数千万、数億円単位ではない、数十億円単位で発注しているらしい」と。正直、目が点になるとはこのことだ。世界中のオイルマネーが投資先を目指して動いているという話は有名だが、日本の関連研究者に対してさえ、こんな額でオファーしているとは。なんとも、景気のいい話といっていいか。
先日、竹井さんとともに、NPOのファンドレージング大会にいった時の話をオーバーラップしながら聞いてしまった。日本のNPOが寄付金集めを目的に、かつての「マネーの虎」の如く、寄付金募りのためにプレゼンなどを催すというイベント。イベント自体は、非常に楽しいのだが・・・感じたのは、寄付金集めという感覚から逃れなれない日本のNPOの自立性の足りなさに加え、寄付金の提示額の少なさというか、しょぼさに対するあきれというか・・・。
刻かもしれないが、正直、多くのNPOに対する偽善とスケールの小ささを感じた一日であった。
一方で、巨額のオイルマネーが動く。その額、最低数十億。一方で、数百万の額を競ってNPOの皆さんが寄付金を争う。この差は一体なんなんでしょうね。
私が思うに、一つにはビジョンの出し方だと思う。ビジネスで大事なのは、ビジョン、つまり投資した先の将来の見通し。何をしようとしているのかとう明確なビジョン。しかし、そのビジョンが欠けているNPOがあまりにも多すぎる。数百万から数千万のお金を使って、村に「竈」をつくったり、森を基盤にした物々交換の制度を保護したり・・・。この矛盾わかります?
資本主義やワールドシステムといういろんな言い方があるが、世界を旅してきた人間ならば、容易にこのなんとも形容しがたい、われわれが今享受している生活スタイルというのは、拒否しがたい魅力を伴っているだけでなく、感染といっても近いような伝達力を兼ね備えている。このシステムとの邂逅をめぐって、近代前後、世界は大いなる試行錯誤を繰り返してきたといえる。面倒くさいので、詳細は書かないが、多くの日本のNPOに足りないのは、このシステムを前提にした現状及び将来的なビジョンである。一体、彼らが直面している途上国の世界、そして人達をどういう風にしたいのか。それが全く無いに等しい。実験室のように、「竈の生活」のままに留めておきたいのか、それとも、その先に何かステップを考えているのか。これが無いので、結局、「空想的」なイメージしか相手に与えない。
一方で、一部の人間は、巨額のオイルマネーを動かして、実質的に世界を動かしている、そしてその一方で、小額のマネーを取り合いするように「理想が」先走りしている。「その理想に過ぎない世界をリードしているのが、社会起業家である、社会事業である」と認識されるようなことだけはあってはならないと思っている。このような「しょぼい」NPOと社会起業家は、根本的に違う。詳しくは話せないが、社会起業家は、マネーの重要さを十分承知している人間たちのことである。ここでは詳しくは書かないまでも、とっくにオイルマネーの動きには注目している。
ウィンウィン関係の構築の要は、無論「ゼニ」ではない。しかし、その重要さを認識してこその社会起業家だ。最近、他者からの支援金をあてにしている団体が、自らを社会起業家と自称している向きもみえるが、正直それは迷惑である。
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コメント
数十億円規模の研究費ですか。なんともうらやましいですねえって、他人事ではない。(>_<)ゞ
NPOとか社会起業家などのソーシャル・ビジネス系の仕事は、アメリカなど海外で資金集めしたほうが早いんじゃないかと思う今日この頃です。もちろん、海外の寄付者やSRIファンドの人は甘くはないですから、彼らを説得できるビジョンと数値目標、それを実現できるスキームとか技術、人材、組織力などの説得性が必要です。でも、それってどんな事業を始めるにも必要なことなんですね。企業活動もNPOの活動も事業という点では同じです。だからビジネス・スキルが重要という当たり前のことがちゃんと認識されてきた。だから、NPOの視点とビジネス・スキルを兼ね備えた社会企業家が注目されるわけですね。
投稿 竹井 | 2007年11月27日 (火) 02時25分