社会起業家はポップじゃなきゃ
いまや社会起業家業界(そんな業界があるのか?)では、スター的存在になりつつある駒崎弘樹氏の半生記(まだ若いけど)を綴った、「『社会を変える』を仕事にする」を読んだ。いや、おもしろい。
駒崎氏というのは、病児保育を目的としたフローレンスというNPOを率いる若き社会起業家で、町田先生も期待する人材で、Newsweekの社会起業家特集でも紹介されていて、そんな意味で、僕が勝手に業界スターと呼んでいるが、病児保育という活動テーマからも、本のタイトルや装丁のイメージからも、いかにもハートウォーミングな暖かい、人によっては生ぬるさを感じる本なのかと思ったら全然違う。ポップな青春物語なのだった。
この本のおもしろさは、そのポップなところにあると思う。文体もポップだが、ここで描かれている著者自身がポップなのだ。
Amazonの書評などでは、このポップな文体が「いかにもマジメな人が無理しておもしろく書いたみたいでウザイ」などという意見もあるが、それがどうしたと言いたい。文体の好き嫌いは個人の好みもあるので意見が分かれてもいいんだけど、僕はこの文体は嫌じゃないです。それより大事なことは、このような本は、根がマジメな人がポップに書くということが大事だし、ソーシャル・ビジネスはポップでカッコよくやりたいなあと思ってる僕としては、駒崎氏のスタイルを支持する。根がマジメでなければ社会起業家なんかやってられないし、ポップでなければ退屈だし、カッコよくなければカッコ悪いし、そんなわけで駒崎氏は正解なのだ。
で、本の内容ですが、高校時代にアメリカ留学したり、大学時代にIT起業のCEOにさせられたり、そんな立場に馴染めなくて温泉に籠ってホントにやりたいことに出会って、社会に役立つ仕事をしようとして、病児保育という、保育業界の中でも最もやっかいとされている領域に、結婚をしたことも子供を持ったこともないのに挑戦してしまう。起業した後も、恋人と別れたり、親から勘当されたり、同業NPOからバッシングを受けたり、厚労省にアイデアをパクられたりと、幾多の苦難を乗り越えながら自分の信じた道を進んでいくという物語。
僕がこの本に共感したのは、「違和感」が底流となった物語だからだ。公務員とか安定した企業に就職しろという世間の常識に違和感を感じ、「IPOして大金を掴んで六本木ヒルズに住んで外車に乗って女にモテて、そんな生き方がカッコいいぜ」と主張する先輩IT起業家の言葉にも違和感を感じ、既存のNPOの考え方にも違和感を感じてしまう。どこまでもつきまとう違和感は、しかし彼の事業のドライビング・フォースなのだ。居場所を求めてさまよう若き魂の遍歴の物語でもある。というか、居場所は自分で作れというメッセージでもあると思ってるのだが、その意味で、社会起業家なんて興味もないしやる気もないという人でも、読んだら救われるかもねという本であります。普通に起業したけど行き詰まってるとか、人生の迷い道に入り込んでるとか、そんな時にはお勧め。
ジョン・ウッド著「マイクロソフトでは出会えなかった天職〜僕はこうして社会起業家になった」と併せて読んで欲しい本です。
リンク: Amazon.co.jp: 「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方: 本: 駒崎弘樹.
リンク: Amazon.co.jp: マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった: 本: ジョン ウッド,矢羽野薫.
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