◇「泣き虫次長」向後功作さん、ぬれ煎餅や市民支援で危機脱出の経験つづる
「銚子電鉄」(本社・銚子市、小川文雄社長)の「泣き虫次長」こと、同社鉄道部次長の向後功作さん(45)が、「がんばれ銚子電鉄~ローカル鉄道とまちづくり」(日経BP社)を出版した。ホームページで経営難を訴え、副業の「ぬれ煎餅(せんべい)」販売がヒットしたことなど、「銚電」とともに歩んだ25年間の歳月をつづっている。
向後さんの同社入社は83年。親会社のバス会社が建設会社に買収されたり、その会社が倒産するなど、これまでに何度も危機に遭遇。その度、市民の「存続運動」で救われた。しかし、前社長の横領事件が発覚したことから、国、県、市の補助金が打ち切られる大ピンチを迎えた。
06年末には、電車の車両検査費もひねり出せない苦境に追い込まれ、「修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」とホームページで訴えた。その結果、ぬれ煎餅の注文が殺到して、徹夜で生産して対応。全国の鉄道ファンが参加した支援組織「銚子電鉄サポーターズ」も発足し、検査費をカンパでまかなうなど、一時のピンチが救われた。
向後さんは同社に勤務しながら、03年から4年間、千葉大工学部都市環境システム学科で学んだ。本ではその経験をもとに「まちづくりとローカル鉄道」「これからの地方鉄道」などの章で、ローカル鉄道と地方都市再生について持論を展開している。
相次ぐ心温まる支援に号泣する姿が報じられ、「泣き虫次長」と呼ばれるようになった。向後さんは「今後の課題もいっぱいあり、すべては始まったばかり。支援者への感謝を心に、銚子電鉄が町の活性化に役立つよう頑張ります」と語る。
四六並製、178ページで1470円。問い合わせは日経BP社(電話03・6811・8650)へ。【新沼章】
毎日新聞 2008年3月13日