No.68 |
転勤から戻ってきたら、住宅ローン減税を復活
自民党の国会議員や財務省、国土交通省の官僚たちから「執念で通した松島税制」と呼ばれている新しい制度があります。これまで住宅ローン減税は、転勤で引越したら打ち切られてしまったのですが、来年度からは、転勤による引越しでいったん適用外となっても、戻ってきてその家に住んだら、ローン減税が復活することになったのです。ただし、適用期間の残存期間だけです。
現在の住宅ローン減税は、年末の住宅ローン残高の1%を税額控除する仕組みで、適用期間は10年間です。つまり、年末に3000万円のローン残高があれば、すでに納めた所得税から30万円が還付されるというものです。ところが、例えば、東京でマンションを買って2年後に大阪に転勤になった場合、単身赴任して家族がその家に住んでいればローン減税は継続されますが、家族ぐるみで転居したら、適用が打ち切られ、あとの8年分は無効になりました。3年後に戻ってきても復活されませんでした。財務省の言い分は、一度住まなくなったら、他人に家を貸すかもしれないし、そうしたら投資用のマンションとの違いがわからないので、居住用としてのローン減税は適用できないというのでした。
私は、当選した平成12年の暮れの自民党税制調査会で、初めてこの問題を取り上げましたが、発言者は私だけで、財務省の抵抗が強く駄目でした。13年も国土交通省の事務当局があきらめがちなのを叱咤激励して再度挑戦。「いつ転勤して、いつ戻ってくるかわからない民間企業のサラリーマンのつらさがわかっていない。特に景気が悪くなると、会社は引越し費用の負担がいやなので、行ったっきりの塩漬けになりがち。財務官僚は官舎に住んでいるうえ、人事異動は1年か2年ごとと決まっているから、民間サラリーマンの痛みがわからないのだ」 と主張しました。宮下創平・自民党税調小委員長を初めとして税調に出ている国会議員たちは「松島さんの言うことはもっともだ」と理解を示しましたが、なお財務省が「投資用マンションと区別するための証明が難しい」と反対しました。
14年末は「私が議員である限り、毎年これを取り上げ続けます」と宣言して、「サラリーマンの声なき声も吸い上げる自民党でなければだめだ」と主張しました。今度はこれに賛同して発言する若手議員も出てきて、やっと実現が決まりました。党税調の場で財務省の事務方から決定の報告がされると、同僚議員たちから「みどりちゃん、おめでとう」と拍手が起きたほどでした。
もっとも、私の本来の主張は、転勤中もローン減税を続けるか、あるいは、戻ってきたら通算10年になるまで減税期間とするというものでしたが、今回の変更では、住宅取得後10年になるまでの残りの期間だけ適用されることになりました。
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No.67 |
日暮里駅にエレベーター、エスカレーター
JR山の手線の日暮里駅正面口(荒川区)に平成17年度中に、エレベーターとエスカレーターが1基ずつ設置されることになった。国会で取り上げ、国土交通省に対して言い続けたかいがあった。
私がこの問題に取り組むようになったきっかけは、今年1月に顔を出した日暮里連合町会の新年会でのやり取りだった。年輩の男性が私のところにやってきて、「日暮里駅の階段をどうにかしてくれ」と詰め寄った。
私もかねて、日暮里駅の外階段は長くてきついな、と思っていた。太田道灌の像と噴水があり、バスロータリーとなっているのだが、東京のJRの駅では他にあまり例がないほど、活気のない、古いスタイルのままである。
ただ、地域の人から、階段についての不満、要望を聞いたのは初めてだったから、その新年会で、他の町会役員たちに尋ねてみた。地元の日暮里中央町会の大和田会長らによると、「地元の署名を集めて、何年も前からずっと、国鉄そしてJRに要望してきたんだけれどだめなんだ」と諦めかけている様子だった。誰に要望書を出したのか質問すると、駅長に署名簿を届けたと言う。
私は、このやり方では駄目だ、と思った。いくら駅長に要望しても、駅長が予算を握っているわけじゃないし、予算取りの仕事が増えてうっとうしく思うだけだ。と同時に、絶対に解決させたいと思った。私が当選する直前に、交通バリアフリー法ができて、新しく駅を作るときには、エレベーターかエスカレーターの設置が義務付けられることになった。しかし、新駅というのは郊外の住宅地にできて、平均的な利用客は若い。それに比べ、既存の駅のほうが、周辺住民の年齢は高いはずである。ちなみに荒川区は65歳以上の人の割合が20.7パーセントを超している。既存の駅のほうが、バリアフリー化が、より必要ではないだろうか。
それで、まず、3月に予算委員会の分科会で、国土交通省と財務省に質問した。「階段は52段あります。45歳の私でも、疲れたり、荷物を持ったりしているときは、この階段をのぼるのはつらいです。お年寄りの方はのぼりより下りのほうがきついとも聞きます。ころんでけがをする人が出てからでは遅い。ですから、ぜひ、エレベーターかエスカレーターをつけてほしい。駅などのバリアフリー化のためには、国の支出も考えてほしい」と扇千景大臣に要請しました。
国土交通省の説明によると、平成19年度に日暮里ー舎人線が開通するのに合わせて、日暮里駅の大改造をするので、それに合わせてバリアフリー化も実現させる計画で、JR東日本と京成電鉄と東京都交通局(日暮里ー舎人線は都が所管している)の3者で協議会が設けられており、荒川区も熱心なので、区の助役がオブザーバーとして参加しているという。さらに、JRも京成もコンコースから自分のところのプラットフォームに降りる階段をバリアフリー化することには積極的だが、共通に使う外の階段をどうするかについては不熱心なのだそうだ。それを聞いて私の怒りはさらに沸騰した。
ところが、この階段の上には区道が走っており、エスカレーターを設置するには頭打ちとなってしまうことがわかった。現状ではエレベーターのスペースもないそうだ。しかし、私は「駅舎の大改造まで待っている間に、お年寄りが階段をふみはずして、転げ落ちて亡くなったりしたらどうするのか」と言い続けた。春から夏、さらに秋口にかけて、同省の鉄道局の幹部や道路局の人までも、私が何か言いかけると、「あっ、日里駅の件ですね」と条件反射のように言い返すようになった。そのたびに私は「駅舎の大改造の話じゃなくて、外の階段ですよ」と繰り返した。
地元でも竹内かつみ区議などが一生懸命、区議会でこの問題を取り上げていたので、荒川区役所も、23区で最も早く交通バリアフリー計画をまとめ上げ、日暮里駅周辺を最重点地区に掲げた。
その結果、日暮里ー舎人線の開通を待たず、17年度中、つまり3年後には、JRが、エレベーターと片道だけのエスカレーターを設置してくれることになった。やっと、肩の荷をおろせた気がする。
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No.66 |
嫁や家業を継ぐ子供に配慮した相続制度を
日本では相続税がかかる人の割合は100人亡くなって5件だけという具合いに相続税の対象者は低く、その反対に、生前贈与の場合の贈与税がかかる人の割合は高い。そして、高齢者は金融資産をたくさん持っていて、一方、30代から50代にかけては住宅ローンや子供の教育費がかかって、ゆとりがない。そこで、高齢世代の金融資産を早目に若い世代に移して消費を拡大しようというねらいで、相続と贈与の一体化する税制改革案が財務省から出てきた。アメリカも相続と贈与を一体化して、死んだときにそれまでの贈与分について清算するというやりかただ。
私は、相続制度については持論がある。
長年、舅や姑の介護を続けた嫁が、お葬式を出した後、相続の話になると「お嫁さんは席をはずして」と言われる気の毒なケースが後を絶たない。いちばん可哀想なのは、すでに義父が亡くなり、夫と義母がともに入退院を繰り返し、結局、夫が先に死に、その後、義母を見送ったような場合。夫の姉妹が乗り込んできて、結婚以来、義父母と同居してきた家を60代になって追い出され、アパートに引っ越したという悲劇的なケースさえある。苦労したお嫁さんが実子並みに相続できる制度にすべきだ、というのが私の当選前からの公約の一つだ。こういう話をすると、遺言を残してもらえばいいと言う男性がいるが、病床の義父母にそんなことを要求できるものじゃない。
相続については、もうひとつ、親の家業を継ぐ子供も、家を出てサラリーマンやサラリーマンの妻になる子供も同じように分割相続する法定相続制度のもとでは、中小零細な商工業の継承はできない、と思う。家業を継ぐ子供に集中して遺産を譲れるようにすべきだ。
だが、これらを解決するには、民法の改正が必要で、大変困難である。衆議院の憲法調査会の委員になったとき、自由論議の時間を与えられたので、参考人の憲法学者相手にこのことを質問したら、他の委員たちから「ここは、そんな具体的なことを議論する場ではない」とたしなめられてしまった。
だから、税制改正論議の中で、相続税と贈与税の一体化の話が出てきたとき、私は生前贈与なら親の意思を通しやすいと思い、民法改正までの第一歩として喜んだ。しかし、それはぬか喜びに終わった。というのは、ここでいう生前贈与は法定相続人が対象だから、嫁は入らない。また、家業を継ぐとか、親の面倒を見てくれるとかの理由で、特定の子供に集中的に贈与しても、いざ、親が死んだとき、他の子供が、法定相続をたてに、遺留分について「不公平だ」と裁判を起こして取り戻すことができるというのだ。私はがっくりした。
そこで私は、自民党税調で、このテーマになったとき、上に挙げた2点について発言し、「税調で議論することではありませんが、ぜひ、この機会に皆さん、考えてください」と述べた。「いい視点の発言だ。しかし、憲法を変えないといけない」などと伊吹文明元労働大臣など先輩議員たちから言われた。
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No.65 |
経済活性化税制議連の幹事に
尾身幸次・前北方、沖縄担当、科学技術担当大臣が会長を務める経済活性化税制議員連盟が、「反自民党税調」的な取り上げられ方で、マスコミなどで話題になっている。私は尾身代議士の指示に基づいて、この議連の発起人の一人になり、人集めに走り回った。議員本人だけでも70数人が集まる活況を呈した設立総会で配られた人事資料には、幹事として名前が載っていた。1回生議員で発起人、幹事は私と左藤章議員(大阪)だけだった。
税のあり方を決めることは、政治の重要な役割のひとつである。世界史を見ても、古今東西、税への不満から、多くの反乱が起こり、政権が倒された。政治家の仕事には、他にも、治安の確保や外交、教育など大事なテーマはあるが、経済記者出身の私は、税、年金、保険など国民の負担が公平、公正で納得の得られるものであるかどうか、経済が安定し、雇用が確保されるかどうかといった国内の経済問題を一番の関心テーマとしている。
だから、年末に開かれる自民党税制調査会は私にとって非常に重要な活動の場である。党税調は、11月から12月にかけて開かれ、平場(ひらば)と称される小委員会では、誰でも自由に発言していいことになっている。1昨年、昨年と当選以来2回の年末、私は毎日午後1時から開かれる税調に出席し、中小企業税制、自動車、エネルギー関連税制と、住宅・土地税制について発言量ナンバーワンを誇った。
しかし、私も、この税調に不満と問題意識を持っていた。第一に、税調を年末にしか開かないこと。今後の税制のありかたについて、年金、保険など社会保障を含めた国民負担全体の中で基本的な議論をじっくりと時間をかけてするべきであることに加え、景気対策としても減税を機動的に活用すべきなのに。もうひとつは、年末に単年度の税制改正を議論することもあって各部会の減税要求オンパレードとなり、部会対抗の要求合戦、いわゆる族議員の力の見せ所みたいな様相を呈してしまうのである。国の財政を考えればこの項目は増税もやむをえない、あるいは増税につながる税制の仕組みにしたほうがいいと考えても、そんな議論をする場ではなくなってしまっている。
今年は2月から、経済財政諮問会議が開かれ、そこでの税についての議論が、あたかも決定事項のように新聞記事になった。また、政府税調も通年で開かれている。私は税制こそは政治家が責任を持って決めるべきことであると信じているので、昨年末の党税調の最後の会合のときに、「小泉改革は次は税制だと総理が言っています。経済財政諮問会議などに先行されるのではなく、党税調も通常国会の開始と同時に開き、税制の抜本改革を議論しましょう」と問題提起したし、春から夏にかけ数回開かれた税調総会が、財務省の官僚から経済財政諮問会議の内容について新聞記事になったのと同じ内容の説明を受けるだけであることにいらいらして、「我々としての議論はしないのですか」と質問したが、変化はなかった。 相沢会長に「年末を待たずに早く税の議論を始めましょう」と直訴したこともあったが、「私もそういう考えを持っているんだが、税調の幹部には、違う考えの人もいてねえ」という返答だった。
党税調のドンである山中貞則税調最高顧問の意向が強いのである。なにしろ、小泉首相が何度も山中最高顧問の事務所を訪ねて頭を下げても動かない人なのだから、私ごときが力んでもどうしようもない。
そんな気持ちを持っていたところへ、同じ森派で商工族の先輩でもある尾身さんから、「こういう議連を立ち上げる。あなた、1回生だけど発起人に入れておくから、明日の発起人会に来るように」との電話を受けた。法務委員会を抜け出して遅れて行ったら、尾身さんのほか、額賀福四郎幹事長代理、甘利明筆頭副幹事長といった商工族の幹部がメンバーとして並んでいる。昨年の税調では、入閣していた尾身さんに代わり、党税調の副会長の甘利さんが商工関係をまとめていた。小林興起代議士、塩崎恭久代議士、世耕弘成参議院議員、元伊藤忠常務の近藤剛参議院議員らも発起人だった。
議連の趣旨は、景気対策のための各種減税や、外形標準課税反対など差し迫ったテーマのほか、中長期の税制改革、そして、党税調の透明化、民主化ということが含まれていた。党税調が、インナーと呼ばれる、平均年齢80歳くらいの数名の超ベテラン議員で構成される会議で決着されることへの怒りが盛り込まれているようだった。私は末端の1回生議員だから、どの分野でも最後は大物たちが決めるものだと割り切っていたが、当選4回以上になると、やはり許せないようだ。
知事らが導入を図る外形標準課税への反対や、市町村税を減らすことになる固定資産税の引き下げなどを盛り込むので、知事や市町村長の意向を大事にする議員には声をかけないようにしよう、というのが皆の共通認識だった。
1昨年も昨年も、党税調の日程が進むにつれ、知事や副知事が議員会館を回って、外形標準課税賛成派を増やそうと躍起になり、その結果、導入阻止集会に出席できなくなった議員もいたのだから。そんなわけで、発起人会では、一般の議員連盟と異なり、全議員に入会案内を流すようなことはしないことにした。
ところが、それから約1週間後、また、午後3時半ごろに、突然、尾身さんから電話がかかってきた。「入会者を集めてくれ。今日中に入会申し込み書を提出してもらうこと。そして明日の朝8時半の設立総会に出てもらうこと。テレビカメラも入るから、人が少ないと困る」というのだ。いつも、切羽詰った指示で、あわただしいことこの上ない。が、ばたばたと人集めをするのは、私も嫌いではないから、そのとき開かれていた委員会を回って、頼みまくった。必ずしも、ふだん、税調には熱心でないメンバーもとにかく、動員だ。最大派閥、橋本派の1、2回生も、額賀さんと通産省出身の村井仁代議士が声をかけてくれていたので、ある程度の成果を出せた。
かくして、設立総会は本人出席70余名、代理を含めて150人が参加するという、近年見たことのない盛況なものとなった。尾身会長のほか、額賀会長代理、甘利幹事長などを選んだ。この3人は同期だが、年齢順に役職を決めたようだ。
ただ、この議連が第2の経済産業部会になっては意味がない。私は尾身会長に「経済産業省の役人を議連の部屋に陪席させるようなことはやめてください」と注文した。また、要求だけでは格が落ちる。例えば、益税との批判が強い、消費税の免税点引き下げや簡易課税のありかたについても、議連で提言していくべきだと思う。
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No.64 |
自動車、ガソリンの暫定税率を撤廃せよ
自動車とガソリンには税金がかかりすぎている。特におかしいのは、道路特定財源確保のために、自動車取得税、自動車重量税、ガソリン税、軽油引取税に本則以外の上乗せ負担として暫定税率がかけられ、「暫定」と言いながら、昭和49年以来、かけられっぱなしとなっていることである。その結果、クルマにかかる税負担は欧米諸国よりもはるかに重いし、ガソリンの場合、小売価格の約6割が税金となっているほどだ。
小泉内閣発足以来、公共事業抑制の中で、一般道路の建設費も減っていることから、自動車関連団体やガソリンスタンドの業界団体、トラック協会などから「暫定税率の軽減」の要求が出されている。私は従来から、暫定税率という、まやかしの方法で負担をかけ続けるのは税制の本道からはずれているし、もう、むやみに道路を作ることはやめるべきだと考え、クルマと油の暫定税率撤廃論を唱えてきた。これは業界のためではない。広くユーザーの立場に立った考えである。
道路の建設に関しては、国土交通省(かつては建設省)が、5年ごとに整備計画を立てることになっており、来年度から新たな5カ年計画が始まる。この機会に暫定税率を見直さなければ、また、5年間辛抱しなければならなくなるのである。
無駄な公共事業はやめるという小泉改革は、本来ならば、暫定税率見直しの好機のはずだった。ところが、一般の国道や地方道の建設のために使うはずの特定財源を、駅前広場の整備や地下鉄整備、トラックの環境問題対応、本州四国連絡橋公団の債務返済など、周辺の用途にも使おうという話になってきた。道路特定財源の一般財源化は反対が多いから、関係分野に限って使途を拡大しようというわけだ。建設省と運輸省が合併してできた国土交通省にしてみれば、「道路だけに使えないのは残念だが、これくらいの使い道なら自分たちの守備範囲だから、特別会計を維持できれば、それでよしとしよう。ひところ言われたような、保育園の整備まで含むような都市整備予算なら反対だが」というのがハラの内のようである。旧建設省の道路局の官僚は「道路以外にもこんなに使われる」と不満顔を示すが、国土交通省全体としては、自分たちの権限を侵されずにすんでいるわけだ。
私は駅前広場や地下鉄も重要だが、道路建設以外のことに使うなら、まず、税率をその分下げるべきで、他の重要な使途のためには、一般財源として新しい税を生み出すか、どの税の税率を上げるべきかの議論をしなければいけないと考える。
新聞記者時代に見た光景で、印象に残っているものがある。自民党本部前で、地方自治体から大勢の人が出張してきて「道路特定財源確保」「道路新5ヵ年計画の達成」といった横断幕を掲げ、道路族議員たちが通るたびに歓声が上がっていた光景である。自動車や石油、ガソリンスタンドなどの業界側に立つ商工族は人数も少なく、自民党議員のほとんどは道路族だから、勝負は目に見えていた。道路族プラス旧建設省の連合軍に対し、商工族プラス旧通産省は、連戦連敗を繰り返してきたのである。
だから、私は、日本自動車工業会と議員の税制勉強会や、ガソリンスタンドを支える若手議員の会で、「私はもともと暫定税率撤廃論者ですが、皆さん、いろんな地域事情を抱えているにもかかわらず、業界の要望を聞き入れて、しっかりと応援する、それで本当にいいんですね」と出席者たちに念を押した。ガソリンスタンドを支える若手議員の会などは、新潟県選出の会長自ら、「いや、道路は大切です。暫定税率をなくすなんて、そういうわけにはいかない」と公言する始末だった。メンバーの大半が「道路財源は維持しないといけない」としたうえで、自分の地域性に応じて「地下鉄に使うのはおかしい」とか「本四公団の穴埋めは自治体の予算では無理だから、ぜひ、道路特別会計を使って」などと口にした。自動車の会でも、道路特定財源をかばう、似たような声があった。みんな、地元を抱えているのだから、私はそういう考えの議員がいるのは当然でかまわないと思う。
しかし、それならば、業界団体の味方のような顔をして出席するような八方美人的振舞いはしないでほしい。私は、全国道路整備期成大会とかダムの大会とか、整備新幹線の大会とか、漁港整備大会とか、そういう心にもないテーマの大会には、招待状が来ても出席しない。
11月11日に日比谷公会堂で開かれた、自動車関係団体の決起大会は、議員があまり上京していない月曜の夕方ということもあったが、それにしても、壇上の国会議員の数が少なかった。甘利明筆頭副幹事長は会場を埋めつくした業界関係者に向かって「今日、来ている議員は、いろいろなプレッシャーをはね返して、ここに座っている。しっかり覚えて応援してやってほしい」と挨拶した。
15日に開かれた経済産業部会の税制要望とりまとめでは、経済産業省が配った税制要望案に、暫定税率問題が明記されていなかった。自動車関連税制では、環境に配慮した自動車を買った場合に軽減税率の延長など、無難な項目しか並んでいない。証券税制や土地税制など、他の部会からも要望が出てくるようなことばかり強調されている要望案では意味がない。私はそれまでに何度も、経済産業部会で、クルマと油にばかり高い税負担を強いている暫定税率の問題を取り上げてきたのに無視されたので、経済産業省に対して「納得できない」と食いついた。
税の担当課長は「暫定税率の問題は、先生方の間で、いろんなご意見があるので、事務方としては、書けませんでした」と弁明した。しかし、同省の本音は別のところにある。自分たちが石油やガソリンに税をかけている石油特別会計も、太陽光利用の研究など環境対策一般に使途を広げているので、道路特別会計のことを問題視せず、そっとしておきたいのだ。どの官庁の官僚にとっても、財務省の手を経ないで、自前で集め、自分たちの考えで使うことのできる特別会計は、非常に大切なのである。
結局、尾身幸次代議士と甘利代議士の二人の幹部の意向で、暫定税率問題も部会としての要望案に盛り込まれることになった。私たち議員は、役人の考えに従って税調で発言する下請け機関ではない。時折、勘違いしている役人がいるようだが、とんでもないことだ。
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No.63 |
わが町のヒーロー北島康介君
「北島康介さんの世界新記録樹立をお祝いする会」が11月13日、地元の荒川で開かれ、私も喜んで駆けつけた。釜山で開かれたアジア大会の男子200メートル平泳ぎで世界新記録を出して優勝した北島康介選手は、荒川区西日暮里のお肉屋さんの息子なのである。ひじの故障を乗り越え、日本の競泳男子としては30年ぶりの世界新という快挙だった。大会MVPも獲得した。
彼と初めて会ったのは、シドニーオリンピックに出場する前に地元で行なわれた壮行式だった。そのときは、まだまだ少年という感じで、私は「水泳は一流でも、大人の都合で、こんな場に引っ張り出されて、本人は迷惑だろうな」と内心同情した。その後、彼がオリンピックで入賞した選手の一人として(100メートルで4位)森内閣の首相官邸でのパーティーに出たときに会って一緒に写真を撮ったり、彼のご親戚のお葬式で焼香する私を見つけて黙礼してくれたり、昨年、世界選手権大会で銅メダルを取ったあとのお祝いの会で会ったりと何度か会う機会はあった。
だが、今回、20歳になった北島君に身近に接して、本当に堂々とした態度で、「立派な青年、大人になったなあ」とつくづく感じた。世界規模の一流の人間が単にスポーツでだけではなく、人間としても急成長する過程を見ている気持ちがした。彼は「アテネオリンピックでも、世界新を更新して金メダルを取ります」と力強く挨拶した。藤沢区長からは荒川区区民栄誉賞が贈られた。
私は祝辞で 「北島君のおかげで私たちは、どきどきワクワクしながらテレビを見ることができました。日本で一番有名な20歳がわが町にいることを誇りに思います。次はオリンピック発祥の地アテネで開かれる記念すべき大会。ぜひ、金メダルの約束を果たしてほしい」と述べた。私と同世代の髪の長いきれいなお母さんと、がっちりした体格のお父さんを見ながら「こんな息子を持ってうらやましいな」と思ってしまった。彼は長男で、そっくりの弟がいるが弟は水泳をしていない。
テレビでインタビューを受けている様子を見た印象から「全然、プレッシャーとか感じないの?」と尋ねたら「やっぱりスタート台に立つときは緊張しますよ」。「応援は聞こえるの?」「泳いでいるときは聞こえないけれど、それ以外のときは励みになりますよ」。 いろいろ聞こうと思っていても、20歳の青年を前にすると、どうも愚問続きになってしまう。かわいい系のハンサムボーイ。もみ上げが長いのが印象的だ。「形だけ」と言って、一応、ビールで乾杯したが、すぐ真っ赤になってしまう体質で、オレンジジュースに切り替えていた。
ちなみに、私の自慢(?)は、小学生時代の北島選手が泳いだときの記録がまだ破られずにいる荒川区水泳大会に昨年出場し、南千住の同じプールで泳いだことである。
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No.62 |
わかりやすい言葉
政治の世界に入るまで15年間、新聞記者だったせいか、誰にでもわかる言葉にこだわっている。
最近、霞ヶ関の官庁用語でいちばん腹が立つのが「パブリック・コメント」。「意見の公募とか、一般の人から意見を聞くとか言えば、簡単じゃないの。日本の役人でしょ」と、これまで金融庁、経済産業省、法務省の官僚に文句をつけてきた。おそらく、他の官庁でもはやっている言葉なのだろう。
せっかく、役所の政策を実施する前に一般の人の考えも聴こうという殊勝な趣旨なのだから、日本語で言えばいい。小泉首相が初めて厚生大臣になった時、役所にカタカナ用語が氾濫していることにあきれ、「日本語に直せ」と厳命したというエピソードにうなずく。
法律用語もひどい。法務省の人が「テンポする」と言うので、「どんな字?」と尋ねると「テンは土偏に写真のシンです」。「損失補填のテンね。ホは?」「補欠のホです」「じゃあ、補填のひっくり返しね。意味は?」「補填と同じです」。「それなら、法律でも補填と言えばいいでしょ!」と私は爆発した。こんなやりとりを役人いじめなどと言わないでほしい。国民の代表として、チェックしているつもりである。
商法のカタカナ表記を平仮名に改める大改正を行うというので、「条文作りの作業には国語学者か新聞記者を加えるべきだ。国語審議会のメンバーなら、最適だ」と法務委員会で主張した。国語審議会が、文部科学省の仕事だけしていたのではもったいない。生きた日本語を使い、法律を国民に身近なものにするためにも、国語のプロに活躍してもらいたいと思う。
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No.61 |
ふるさと文化館に郵便局のキャッシュコーナーを誘致
荒川区南千住6丁目の荒川区立ふるさと文化館1階に10月1日、荒川郵便局のキャッシュコーナーがオープンし、ATM(現金自動預払機)が設置された。
このキャッシュコーナーは、地元の強い要望を受け私が東京郵政局と区長に働きかけ、実現にこぎつけたものだ。
コトの起こりは平成13年秋。すぐ近くの千住大橋郵便局(特定郵便局)が、局舎が狭くて老朽化し、危険な構造のため、大橋局長が定年を迎えるのに合わせて平成14年3月に閉鎖するよう、東京郵政局が通知してきたのだ。地元で郵便局の存続運動が起こり、田島町会長、近藤町会長の依頼を受け両会長とともに、東京郵政局長(当時)を訪ね、郵便局の存続を強く申し入れた。
存続要望の理由は、南千住6丁目と7丁目の3300世帯がこの郵便局を利用していること、近年、銀行の統廃合などで近隣の金融機関の支店がなくなり不便になっていること、高齢化が進んでいる地域でお年寄りが日光街道を渡って郵便局や金融機関に出かけるのは危ないことなどだった。
結局、東京郵政局の指定する広さの代替地は近くに見つからず、後継者も明確でないことから、建て替えは無理ということになった。かつて、ふるさと文化館の設計段階で、千住大橋局を文化館の一階に移せないかと申し入れたが当時の区当局に断られたという経緯を知り、せめてキャッシュコーナーだけでもふるさと文化館に設置できないかと考え、3月に藤沢区長に申し入れ、区長は、文化館の管理者である区教育委員会に、防犯面などを含めて検討を指示した。一方で、東京郵政局に対し、「人口も増加している密集地で採算性も高い南千住6丁目から撤退したまま、というのでは、郵便局は住民に必要だから郵政民営化に反対などという言い分は通らなくなる」と強硬に要請し、キャッシュコーナーの開設を了解してもらった。
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