任期満了に伴う日向市長選が16日、告示される。現職で再選を目指す黒木健二氏(65)=無所属=と、新人で元県警察学校長の上原勇氏(63)=同=が立候補を表明しており、2人による一騎打ちとなる公算が大きい。投開票は23日。同市の課題を探った。

◆危機的な医師不足

 「まさに非常事態だ」。同市東臼杵郡医師会の甲斐文明会長はそう言って頭を抱えている。

 今年1月、市内の救急病院が夜間・休日の急患を受け入れる「輪番制」からの離脱を関係者に打診してきたからだ。このままでは同市と周辺2町2村からなる日向入郷地区の救急医療体制は危機的な状況に陥る。

 同地区では1995年から、同市と門川町にある計3病院が当番日を決め、夜間と休日の急患に対応してきた。だが、2年前、門川町内の病院が「医師不足」を理由に輪番制から離脱、同市内の救急病院がこれに続くと、残りは1病院となる。

 同医師会は開業医が平日の夜間、軽症患者を診療する対応策を市に提案した。だが、医師や看護師の報酬などの予算措置を伴うことから市は二の足を踏む。過去の大型投資が響き、財政状況が逼迫(ひっぱく)しているからだ。

◆膨らむ借金重荷に

 同市は、元市長時代の93年から日向市駅周辺など3カ所で総額計533億円に及ぶ土地区画整理事業を進めている。さらに全天候型屋内運動場・サンドーム日向やサンパーク温泉整備事業なども加わって、市の借金となる市債が大きく膨らんだ。その残高は355億円(2006年度末)に達する。

 その結果、市債の返還に充てる公債費をはじめとした義務的経費が一般財源に占める割合(経常収支比率)は「危険ゾーン」とされる85%を大きく上回る92%となっていおり、「首が回らない状態」(市財政課)だ。

 厳しい財政状況は合併した旧町をも直撃している。06年2月に日向市と合併した旧東郷町では、今年4月から地域自治センターの職員が34人から29人へとさらに絞り込まれる。

 東郷町地域協議会の黒木茂範会長は「ある程度の削減は仕方がない」と理解を示すものの、「旧町立病院や水道、ケーブルテレビなど社会インフラ整備はどうなるのか」と不安げな表情だ。

◆「最低」の求人倍率

 一方で、雇用の拡大も急務だ。日向公共職業安定所によると、今年1月の有効求人倍率は県内最低の0.51。地域経済の冷え込みが際立つ。

 こうした事態を打開しようと市は、細島臨海工業地帯への企業誘致の推進を図るが、思わぬ事態を招いた。

 昨年3月、製材最大手「中国木材」(広島県呉市)が同工業地帯に進出計画を表明、地元の製材業者らが「原木の奪い合いになり、死活問題になる」と反発したのだ。

 昨年9月以降、関係団体が協議を重ねているが、「伐採した後の植栽や地元業者との共存策など、納得できるものまだない」と製材業者。

 黒木氏は11日、上原氏は14日にそれぞれ決起集会を開き、気勢を上げた。熱を帯びる前哨戦。山積する市の課題の対策についてどう有権者に訴えるのか、その論戦が注目される。

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 日向市長選の立候補受け付けは、16日午前8時半から午後5時まで、同市役所で。23日午前7時から午後8時まで(一部1時間繰り上げ)、市内52カ所で投票され、日向市体育センターで即日開票される。

 有権者数は5万1711人(3月2日現在、市選管調べ)。

=2008/03/15付 西日本新聞朝刊=