岡山県吉備中央町で先日、ささやかな式がありました。わずか二十一年の歴史に幕を降ろした県立吉備北陵高校(同町湯山)の閉校式です。最後の卒業生二十五人は喜びと寂しさを分かち合い、巣立ちました。
その中の一人、慶二君(仮名)は、四月から広島県内の企業に勤めます。近くの児童養護施設で中学一年から暮らし、毎朝の新聞配達で自活を目指してきました。将来は「シェフになる」との夢を持っており、実現のためにまずは就職する道を選びました。
高校生活最後の年、慶二君は野球部の活動や、県スクールインターネット博に出品するホームページの制作に力を傾けました。野球部でチームを組んで県高校駅伝にも出場するなど「完全燃焼した」との思いがあります。しかし日を追うごとに寂しさが募り、閉校式では幾度も涙が浮かんだ―といいます。
吉備北陵高校は吉備高原都市の人口増を前提に造られました。ところが、同都市への入居者は伸びず、県教委の高校再編によって閉校となりました。跡地利用策も決まっておらず、当分空き家状態となります。
町内に高校が無くなったため、児童養護施設の後輩たちは遠い学校へのバス通学を余儀なくされます。それに伴い、限られた措置費で大勢の子どもを受け入れている施設の財政状況も厳しくなります。ハンディを持つ子どもの進学の選択肢が減り、周囲の経済的負担も増す―という中山間地の厳しい現状に、関係者はもっと目を向けてほしいと思います。
(高梁支局・神辺英明)