人が育つにはそれなりのチャンスも必要だろう。次代を担う美術家を基金で支援し、育成しようという動きが岡山で相次いでいる。
まずは、美術家で倉敷芸術科学大客員教授の高橋秀さんと、コラージュ作家の藤田桜さん夫妻が、若手美術家の海外留学を支援する全国公募の「秀桜基金留学賞」。アートへの情熱にあふれる夫妻が私財一億円を投じ、一昨年創設した。
高橋さんといえば、紫綬褒章にも輝いた国際的美術家だ。四十一年間過ごしたローマから倉敷市の沙美海岸に居を移したのが四年前。若い才能の発掘と倉敷からの文化発信に力を注ぐ。
賞は毎回三人まで選び、一人三百万円が提供される。留学期間は一年未満。帰国後の成果発表展もフォローする。「海外から日本を感じてほしい」という高橋さんの熱い思いが詰まった賞だ。十七日に二回目の受賞者が発表される。
岡山県が創設した「I氏賞」は、高梁市出身の会社役員伊藤謙介さんが寄付した三億円が基になった。ターゲットは郷土ゆかりの新進美術家。大賞三百万円、奨励賞(二人以内)百万円と賞金は魅力的だ。展覧会開催なども支援し、地域文化の活性化を狙う。一回目の表彰式は二十五日だ。
羽ばたくチャンスを与えられた“若い芽”がたくましく育つ姿をじっくりと見守りたい。アートが力を発揮すれば、地域もきっと元気になるはずだ。