奥村徹弁護士の見解(hp@okumura-tanaka-law.com) このページをアンテナに追加 RSSフィード

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プロフィール

弁護士 奥村 徹
奥村&田中法律事務所
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530-0047 大阪市北区西天満4-2-2 ODI法律ビル203
TEL06-6363-2151 FAX06-6363-2161
hp@okumura-tanaka-law.com
 奥村徹(大阪弁護士会)の弁護士業務と研究活動(不正アクセス禁止法・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(周辺の青少年健全育成条例、強制わいせつ罪、強姦罪)、児童福祉法、著作権法、信用毀損、名誉毀損、わいせつ図画公然陳列、電子計算機損壊等業務妨害、その他サイバー犯罪、プロバイダ責任制限法などが中心です。)の一片を御紹介しています。
 休日や遠方の御相談も受け付けます。
 よくある質問はFAQにまとめていますから御一読下さい。
 電話・メールでの問い合わせに対しては、法律相談に至らない範囲で一般論や費用の見積もりを回答していますので(無料)、具体的な事件の御相談や御依頼についてはとりあえず電話かメールでご連絡下さい。電話は事務員が応答します。メールは弁護士が随時チェックしています。

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2008-02-26

[] 摘発困難な児童ポルノ

 公明党は実在しないキャラのを処罰したいようです。

 法律上の「わいせつ」なら現行犯で逮捕してもらえばいいわけで、そうでないところの問題なんですよね。それは「有害図書」っていうんですよ。

http://www.komei.or.jp/news/2008/0226/10878.html

公明新聞2008年2月26日

東京秋葉原 アニメDVDなど現状探る

プロジェクトチーム

DVD販売店を視察する党プロジェクトチームのメンバー

 公明党児童買春ポルノ禁止法の見直しプロジェクトチーム(PT、丸谷佳織座長=衆院議員)は25日、東京秋葉原を訪れ、現行の児童ポルノ禁止法では規制の対象外となっている、わいせつコミックDVDなどを販売する店舗を視察した。

 店内には女子中学生を描いたと思われる、わいせつアニメコミック、女児の水着姿を撮影したDVDなどが所狭しと並んでいる。特にアニメの登場人物などは架空のため、例え露骨な性描写であったとしても、現行法では摘発されない。

 視察に先立って行われた万世橋警察署での意見交換で、警視庁少年育成課の田中英明警部は、「わいせつDVDパッケージだけを見ると、いかにも小中学生という少女でも、本人の身元を確認すると成人というケースが多い」として、摘発の難しさを説明。また「現行の児童ポルノの定義ではアバウトで、現場では戸惑うこともある」と語った。

 視察を終えた丸谷座長は、「子どもを性の対象として商品化している現実を変えなければならない」と述べた。

Tバックは児童ポルノの定義に該当すると思いますけどね。


http://www.maruya-kaori.com/topix_2008_02_25.htm

今回の視察を終え、子どもを性の対象として商品化している現実を何とかして変えなければいけないと実感しました。

 現行法で保護対象となっている実在の児童(児童買春少女や、児童ポルノモデル)が、予算も救済機関もないのでキャッチアンドリリースされている現状をなんとかしてほしいものです。

 そもそも児童ポルノ陳列や提供のモデルなんて、被害者と認められてませんから。

 保護法益を個人的法益とさらに明確にして、実在の児童の権利侵害を認めて、それに対応していくのが先決です。

 法律がある以上現場はずーっといろいろやって、問題抱えているわけですが、3〜4年に改正の度に1回現れる「プロジェクトチーム」が付け焼き刃で勉強会を重ねても、実感できないと思います。関西援交シリーズの被害児童(奈良県警)が、他県の提供事件では被害者としてカウントされていないことを知ってるんでしょうか?

 児童ポルノ児童買春によって、実在児童が商品化されて権利侵害受けることを前提にして、まず法令適用でも現場でも被害児童の救済をしっかりやって、さらに、外延部分として2次元を規制して、実在児童の保護を強化するというのならわかるのですが、それやらないで、安易に2次元を規制すると、実在児童についてもアニメのキャラ並の扱いになるおそれがあります。安上がりですけど。






[] 「児童ポルノ単純所持処罰」規定の創設について 〜現行法の構造上、どう位置づけることができるか?

昔書いた原稿を今風に直してみました。

児童ポルノ単純所持処罰」規定の創設について 〜現行法の構造上、どう位置づけることができるか?

1 現行法は、提供陳列等を頂点とする児童ポルノ流通を阻止しようとするものである。

(1) 現行法の構造

 目的犯の目的を手掛りに、児童ポルノ各罪を分析すると、児童ポルノの各罪は次のような構造である。

1製造目的人身売買

=製造の前段階としての人身売買を処罰するもの

2提供・公然陳列目的製造・所持・運搬等

=提供・公然陳列の準備行為

3姿態とらせて製造

=不意に流通する危険に着目したものである。

4提供・公然陳列

=目的のいかんを問わず、提供・公然陳列行為そのもの(以下「販売等」という。)を直接禁止するもの。相手方が特定少数の場合よりも不特定多数である場合には加重される

 法は、児童ポルノ流通過程に分けて、同種の行為類型として、禁止する行為をグループ分けしているのである。

 つまり、児童ポルノ法の究極の目的は、提供・公然陳列行為の禁止にあり、そのために、その前段階としての製造・所持・運搬が禁止され、さらに製造・所持・運搬の禁止をはかるためにその前段階の人身売買が禁止されていることは明白である。

 言い換えれば、法は提供・公然陳列行為による法益侵害(本丸部分)を最も重視し、その前段階の行為(内堀部分および外堀部分)まで厳重に禁止しているのである。

 このように、

1 製造目的人身売買

2 3項製造

3 提供公然陳列目的製造・所持・運搬等

4 提供・公然陳列

の4類型は一体となって、児童ポルノ流通を禁圧して、児童ポルノ法の目的=法益保護を目指しているのである。

(2) 他の目的犯との比較

 ちょうど、通貨偽造に関する罪の場合、行使の目的が構成要件とされていていることから「行使」を防止することが法の最終目的であり、そのために、その数段前段階の行為を禁止しており、それゆえ、行使罪も偽造罪も準備罪も同じ保護法益であるのと同様である。行使は対人的行為であるから、詐欺罪同様に個人的法益だと言う者はいない。この結論は各種偽造罪の場合でも共通である。

 このように目的犯とその目的たる行為とは密接な関係がある。

 しかも、刑法であれば、国家法益社会法益・個人的法益について各種の罪が列挙されているからある罪が社会法益か個人的法益か微妙な場合もあろうが、児童ポルノの罪は、児童買春児童ポルノ法という特別法に、

旧法第1条(目的)

この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。

現行法第1条(目的)

この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

という極めて限定された特別の目的を目指して、児童買春罪と並べて規定されているのであるから、上記4類型の関連性はきわめて密接である。

(3)改正刑法草案わいせつ文書の罪との比較

 このことは改正刑法草案をみても明かである。

 実は、旧児童ポルノ法7条の規定は、改正刑法草案247条と酷似している。改正刑法草案の規定を先取りしたものであることはあきらかである。丸写しといってもよい。

改正刑法草案

第247条(わいせつ文書の頒布等−刑一七五)

(1)わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然展示した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(2)前項の行為に供する目的で、わいせつな文書、図画その他の物を製造し、所持し、運搬し、輸入し、又は輸出した者も、前項と同じである。

児童ポルノ

第7条(児童ポルノ頒布等)

児童ポルノ頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。

3 第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノ外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

 ここで、わいせつ文書製造罪等の創設について「改正刑法草案の解説」P259では

わいせつ物の頒布等について処罰規定を残す以上は、その内容を合理的なものとする必要があること、製造・運搬・輸入・輸出は、販売等の前段階の行為として所持と同等に評価することが出来る

と説明されている。

 このような規定方法からして、保護法益にかかわらず、数段階の準備段階からわいせつ文書ないし児童ポルノ流通を禁止しようとするものであることは明らかなのである。

(4) まとめ

 結局、現行の所持罪は、提供・陳列を目的とする流通危険がある所持行為のみを処罰するものである。

 譲渡等を目的とする場合は処罰しない趣旨である。

2 保護法益との関係

 ある法益保護のために、どのような行為に対して、どのような刑罰を科すかは立法問題であって法律問題ではない。

 児童ポルノ保護法益について、描写された者の権利(個人的法益)ととらえようが、社会的風潮(社会法益)ととらえようが、その法益保護の手段としては、所持行為については、不特定または多数者に対する譲渡・貸与・陳列を目的とする所持行為のみを処罰するというのが現行法の姿勢である。

 従って法益のとらえ方との直接的関係はない。

 しかし、いかなる法益であるにせよ保護法益の重大性・保護の必要性によっては、単純所持・送信を処罰する必要性について影響を与えることはありうる。

3 単純所持罪の位置付け

 単純所持罪の構成要件は明らかにする者がいないので不明であるが、一応、「単純所持=販売等を目的としない所持」であるとの理解で論を進める。

 上記の分析によれば、現行法の児童ポルノの罪は、児童ポルノ流通に関するものであり、現行所持罪も流通の一過程・販売等の準備行為であることから処罰されるものである。

 ところが、単純所持は、流通には関係しない(未必的にでも流通の危険があるのであれば、現行法の1項提供罪で処罰できる)・提供・陳列等の準備ではない点で、現行法の児童ポルノ関係の罪とは全く異質である。

 法益侵害の点では、単純所持行為よりも譲受行為の方が、児童ポルノを拡散させる点で法益侵害の程度が重いにもかかわらず、単純所持は許されないが、譲受は許されるというのは一貫性に欠ける。

4 立法論の道筋

 翻って考えると、ある物を規制する場合には、営業としての流通を規制する方法(わいせつ図画等)と、目的を問わず流通を厳格に規制する方法(覚せい剤サリン等)の2通りに大別できるのではなかろうか。実際には無限の規制方法がある。各種取締法の罰則を眺めればわかることだが、たとえば覚せい剤についてはそれに関与するあらゆる行為が細かく規制されているといっていい。

 そして、規制目的の物についてどのような手段で規制するのかは、立法目的、保護法益取締りの必要性を考慮して立法において判断されるのである。

 児童ポルノについては、制定当初はわいせつ図画と同様に、営業としての流通を規制する方法が採用されたことは間違いない。それは立法者が保護法益が違う刑法175条を真似たという立法ミスでったが、改正法により是正され、個人的法益を重視して、有償性をとわずに画像を拡散する行為が処罰されるに至っている。

 この流れで立法の方向を占うならば、薬物犯罪並に児童ポルノ流通に関わる行為を細かく取り上げて個別の構成要件を設けることになるであろう。その中で、児童ポルノ害悪を強調して単純所持行為の流通危険性を強調すれば処罰することも可能であろう。

 ただ、児童ポルノ提供・陳列行為は回数・被害児童数にかかわらず包括一罪だという裁判例(提供行為による権利侵害を重視しない)が多数派であり、撮影行為も気づかなければ処罰されない(盗撮行為は被害児童が気づかないから製造罪にあたらない〜島戸「児童買春(かいしゅん),児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08)という解釈が支配的であることを考えると、現行法の趣旨のさらなる徹底(個人的法益重視)をはかることが大前提となるであろう。



[] 「児童ポルノマニアに娘の写真が見られているなんて!」

 親がそんなことしちゃだめですよ。

 この親も、被害者ぶってるようですが、やってることは児童性愛者といっしょで、公然陳列目的製造罪と公然陳列罪の併合罪ですよ。故意も欠けない。最高懲役7年6月。

http://diamond.jp/series/netsecurity/10007/?page=1

3歳になる娘が可愛くて仕方がない彼は、みんなにも娘の写真を見てもらおうと、インターネット上にホームページを開設。おもちゃで遊ぶ無邪気な姿から、天使のような寝顔まで、実に様々な娘の写真を公開していた。親戚や知人からの評判も上々で、彼を真似て、子供自慢のサイトを開設する人も出てきていた。

まさか子供写真が……

 そんなある日のこと、知人から「君の娘の入浴姿が、海外の児童ポルノサイトに掲載されているぞ」と警告するメールが届いた。指摘された児童ポルノサイトを見てみると、彼の娘の入浴時の写真が掲載されているではないか。どうやら、彼の作成したホームページから無断で画像を盗んだらしい。

児童ポルノマニアに娘の写真が見られているなんて!」と、ゾッとした彼は、英語の堪能な友人に頼んで、娘の画像を直ちに削除するように求めるメール児童ポルノサイトの管理者宛に送るが、いつまで待っても返事は来ない。そこで、ネット犯罪に詳しい友人に相談すると、「児童ポルノ画像は、欧米では所有しているだけでも重罪になるだけに、児童ポルノサイトの運営者を突き止めることは難しいといわれているんだ。写真の削除を依頼しても、多分、応じてはくれないだろう」という。

(中略)

【鉄則】 ホームページプライベート写真は公開しない。特に子供写真は取り扱い注意

 「ネット犯罪に詳しい友人」なら、警察に相談するように勧めましょう。

児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

第7条(児童ポルノ提供等)

4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

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