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クルマとガソリンにかかる暫定税率を撤廃し、税金を安くせよ
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クルマとガソリンにかかる税金は高すぎる。私は当選1回の時からずっと、そう考えてきた。例えば平成16年度にクルマとガソリンと軽油にかかった税金(消費税を含む)は約8兆9000億円で、これは国税、地方税合わせた税収全体の11.7%を占め、固定資産税(11.3%)より多い。
クルマは買うときに自動車取得税と消費税、持っているだけで、自動車税(または軽自動車税)と自動車重量税、乗ればガソリン税(揮発油税と地方道路税の総称)または軽油引取税(トラックが使うディーゼルガス)または石油ガス税(タクシーが使うLPガス)、それに消費税がかかる。ガソリンなどの燃料は、本体価格に税金がかかった額に5%の消費税がかけられるという滅茶苦茶な仕組みである。これはタックス・オン・タックスと呼ばれ、この仕組みで税金がかかっているのは、他にはタバコと酒類だけだ。
全国のガソリンスタンドで3月20日からユーザーを対象とした署名活動が始まった。チラシの表には「道路に使わないならガソリン税を1リットル当たり25円安くすべきです」、裏には「われわれは一般財源化を許しません」とある。タクシー内の電光ニュースやラジオCMも流している。
自動車販売店や整備工場、JAF(日本自動車連盟)の支部でも4月1日から同様の署名活動を始める。自動車業界の署名集めは昨年11月から12月にかけても240万人分集め、トラック1台に乗せて自民党本部に持ち込まれたのに続く第2弾だ。昨年末の時は、私は経済産業部会長として、甘利明政調会長代理や片山虎之助参議院幹事長、保坂三蔵参議院議員らとともに、党政調会長室で、代表者から署名を受け取った。
道路を作るためと言って取っている税金(道路特定財源)を一般財源化するなら、上乗せしている暫定税率を撤廃して、税金を安くせよ、というわけである。
私も同意見である。といっても、石油連盟やガソリンスタンドの組合、自動車工業会に頼まれたからではない。当選1回の時から、つまり、道路特定財源の一般財源化問題が発生する前から、ユーザーのために、暫定税率撤廃論を唱え続けている。
もともと、「道路を初めとする公共事業は減らし、税金を安くしよう」という考えで、与野党ともにほとんどの国会議員が道路族という実態の中では異端といえる存在だったのである。
私は東京選出の国会議員だが、「一般財源化するなら自動車やガソリンの税金を安くしろ」というのは都会の人間のためではない。公共交通機関に恵まれないためにクルマを必需品としている地方の人たちに、あまりにも気の毒だから言っているのだ。
自動車工業会が作成した自家用乗用車の市区町村別の普及率を示す一覧表がある。合併が今ほど進んでないうちに全国2544市町村を調べたもので、区のうち東京の特別区(23区)だけは個別に調査している。
1世帯当たり平均保有台数を見ると、一番たくさん車を持っているのは茨城県千代川村の3.929台。村民の平均でこの数字であり、年寄り2人世帯という家庭もかなりあるだろうから、若い世代はほとんど1人1台持っているのだろう。上位一覧表の2位は愛知県飛島村の2.890台、そのあと10位まで、茨城、群馬、栃木、福島、埼玉、富山各県のいずれも町や村が2.4台から2.3台でずらりと並ぶ。
おそらく、バスが一日数回しか来ないといった地域の兼業農家で、若いお母さんが子供を保育園に預けてから働きに出るのも車、お父さんの通勤も車、さらに農業をやっているおじいさんかおばあさん用の車もあるのだろう。もちろん、軽自動車の場合も多いだろうが。病院に行くのも買い物に行くのも車を運転して行かなければならない地域だと推測できる。中学生や高校生は雨の日も自転車で長距離通学、あるいは駅まで自転車なのだろう。
一方、いちばん車を持っていないのは東京都中野区で1世帯平均0.294台。10世帯のうち車を持っている家は3世帯足らずということだ。上位ランキングの町村とは一桁違う。中野区は道が狭くクチャクチャと曲がっていて車を運転しづらい上に、新宿に隣接して地価が高いから、駐車場代が高い。私の友人でも、中野のマンションを買ったときに車を手放したという人が複数いる。
中野区の次に持っていないのは東京都豊島区の0.304台。ここも池袋を抱える都心だ。自家用車保有の下位ランキング10位までのうち、3位と4位が鹿児島県の村(狭い離島で車を持っても意味がないのだろう)であることを除くと、東京の区が8つを占める。私の選挙区である荒川区は8位で1世帯当たり0.351台となっている。
だから、一般財源化後に高い税率をかけ続けることになれば、公共交通機関の整わない地方で、やむを得ず一家に何台も自動車を持っている家庭から税金をたくさん取って、都会の病院や学校の建設費や生活保護費がまかなわれることにもなりえるのだ。これではあまりにも申し訳ない。
暫定税率がかかっているのは、国税では自動車重量税とガソリン税、地方税では自動車取得税と軽油引取税。昭和49年(1974年)、田中角栄内閣の時に道路の充足のために設けられた暫定税率の制度は、いずれも、「暫定」とはいえ、5年ごとに作られてきた道路5ヵ年計画(現在は平成19年度末=2008年3月までの計画)ごとに延長され、税率は途中で何度か引き上げられている。
自動車重量税は本則税率が0.5トン当たり年間2500円に対し、暫定税率は2.52倍の6300円。自動車取得税は本則は3%だが、営業車と軽自動車を除き購入額の5%とする暫定税率がかけられている。ガソリン税は揮発油税と地方道路税の総称だが、この二つを合わせて本則が1リットル当たり28.7円、暫定税率は1.87倍の53.8円。軽油引取税は本則が1リットル当たり15円、暫定税税率が2.14倍の32.1円である。
未整備な道路の建設を進めるために利用者から税金を取るというのが道路特定財源の趣旨であり、暫定税率の延長に次ぐ延長という形で高い税がかけられてきたのは道路族の力が非常に強かったためだ。ところが、小泉内閣になってから、公共事業を減らし続けてきた。公共事業の筆頭である道路の建設も減った。そうすると、暫定税率までかけて集めた道路特定財源が余るようになる。そんなこともあって、小泉総理は昨年から道路特定財源の一般財源化、すなわち、赤字国債の発行を抑制するために道路のための諸税を一般会計にすべて入れて何にでも使う、と言い出した。そのうえ、「暫定税率の上乗せ部分はそのままで」と国会答弁で繰り返している。
国会議員は与野党を問わず、おそらく9割以上の人が道路族というか、「社会資本整備の根幹である道路をもっと作れ」派であり、予算編成期である秋から年末にかけて国会周辺のいろんな会場で開かれる「○○縦貫道(あるいは横断道)建設既成同盟」決起大会では、その地域の議員が与野党そろって壇上にずらりと並び、こぶしを振り上げて「エイエイオー」なんかしている映像がよく流れる。私は、道路の決起大会には行ったことがない。
私は元来、一般財源化論者であり、かつ、「暫定税率をやめて本則税率に戻せ」論者であった。1、2回生のころは、税調でこれを発言しては、「東京の人間に地方の道路のことがわかるか!」と先輩議員に怒鳴られたことが何度かある。
さすがに、自民党経済産業部会長という公的な立場になってからは、むやみに敵をつくるのはよくない、と考えるに至った。だから、表立って、一般財源化論は唱えないことにした。
時あたかも、小泉総理が道路特定財源の一般財源化を繰り返し主張するものだから、私がわざわざ触れる必要もなくなり、「一般財源化するなら、暫定税率は撤廃せよ」の部分だけ発言し続けている。昨年12月、自動車関係の業界の大会に招かれ、自民党を代表して壇上で挨拶する際にも、後ろに掲げられた看板には「道路財源の一般財源化反対」と「暫定税率の撤廃」の両方が書かれてあったが、前半には触れず、後半だけ力説した。
例年は11月から12月にかけて開かれる自民党税制調査会が今年は3月から始動し、各部会ごとに中長期の検討課題の一覧表を提出するよう、柳沢伯夫税調会長から指示された。経済産業部会では、道路特定財源に関し、「一般財源化するなら、自動車重量税とガソリン税、自動車取得税、軽油引取税にかかる暫定税率を撤廃する」と書き込んだ。
昨年秋以降の議論では、一般財源化問題は国税と国の財政の議論だったが、地方税である自動車取得税と軽油引取税にも広がってきたのだ。2月に衆議院本会議で、民主党の福田昭夫議員の質問に答えて、竹中平蔵総務大臣が「地方でも、道路特定財源を一般財源化すべきだ」と答弁したためである。
一方、国土交通部会では、いろんな考えがあることから、税調に提出した検討項目では、はっきりした書き方を避けたようだ。というのも、昨年秋、行政改革のひとつの柱として、特別会計の合理化が議論され、公共事業の5つの特別会計は1つにまとめることになった。道路特別会計と空港整備、港湾、治水、都市開発が1本になるのである。こうなると、議員であれ、役所(国土交通省、財務省)であれ、人により、立場により、またいろんな思惑が生じてくる。例えば、道路特定財源を一般財源化するのではなく、公共事業特別会計で使えばいいという考え方なども予想されるのだ。
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