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札幌圏

万感の閉店 116年続いた味 狸小路・老舗そば「山福本店」(03/14 13:11)

使い込んだのれんを手に互いをねぎらう高松輝雄さん(右)と久子さん

使い込んだのれんを手に互いをねぎらう高松輝雄さん(右)と久子さん

 札幌市中央区の狸小路商店街の老舗そば店「山福本店」(南三西二)が二月末、のれんを下ろした。創業百十六年。四代目社長の高松輝雄さん(72)が高齢となり、後継者もいないことなどが閉店の理由だが、初代から綿々と受け継がれてきた、こだわりのそばを味わえなくなることに、常連客らから惜しむ声が出ている。

 「もう潮時だと思ってね」。閉店を決断した胸の内を、高松さんはそう、静かに言う。

 店は、幕末の江戸でそば店を開き、明治になって開拓使のそば料理人として来道した初代の利平さんが一八九二年(明治二十五年)、開いた。一九八八年に現在の五階建てビルに建て替えるまで木造二階建てだった店舗では、昭和三十年代、店内の約二百六十席が連日埋まり「一日五千人入った時もある」(高松さん)ほど繁盛した。

 店の切り盛りは妻久子さん(68)が一手に引き受けた。結婚して四十五年。接客はもちろん、多い時は三十人以上いた従業員の食事の世話もこなし、「働きづめだったね」と夫婦で笑う。

 こだわりは、そばつゆだ。かつお節を四十分ほど煮出して取るだし。しょうゆとみりんを合わせて一週間寝かせる「返(かえ)し」。輝雄さんの弟で専務の睦雄さん(64)は「初代からの味を守るのが誇りでね。百年以上、一度も味を変えたことはないよ」と振り返る。

 その一方、そば店とは思えぬメニューの豊富さも人気だった。輝雄さんの父で三代目の勲さんが新しもの好き。「欧米スタイルって言うか、ファミリーレストランの走りみたいな店になった」(睦雄さん)といい、昭和の中ごろには、ハヤシライスやチャーハン、コーヒーなどがメニューに加わった。座敷だった店内も早々にイスとテーブルに変わった。

 閉店直前の客は平日で一日約百五十人。宴会も月に二十団体ほど予約があり、まだまだ商売の出来る売り上げはあった。ただ、輝雄さん夫婦には子どもがなく、後継者がいなかった。「将来を考えたら、そろそろ…」と店を閉めることにした。

 常連客らはがっかりするばかりだ。同じ狸小路商店街の学生服店の営業部長角田仁さん(62)は二十年以上、毎日のように昼食を食べに来た。食べたことのないメニューは「お子様ランチくらい」というほど。閉店を知り、「これからどこで昼食を食べたらいいのか」と寂しがる。

 輝雄さんと久子さんは「長く続いた店を自分たちの代で閉めるのは本当に心苦しい。でも、時の流れには逆らえない。これまで来店していただいた方にはとにかく感謝の一言です」と話し、のれんを静かに畳んだ。(鷲見浩二)

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