今週も松本清張の「砂の器」を続けて掲載します(「村上龍を歩く」はもう少しお待ちください)。先週は蒲田操車場から秋田の羽後亀田までを歩きましたが、今週は蒲田操車場で殺害された元警察官 三木謙一の故郷、島根県仁多郡仁多町亀嵩を歩きます。
今回の取材は、原作と、昭和49年(1974) 主演:丹波哲郎、加藤剛、森田健作で映画化された時の撮影場所を中心に紹介しています。2004年1月18日から始まる中居正広(SMAP)主演の「砂の器」は、原作とは少し違ったストーリーで、TBSのホームページを見ると、時代設定は現代、主人公を刑事役から犯人に置き換えています。中居正広が犯人役になるようです。テレビドラマの撮影場所が何処なのか愉しみです。(そちらも順次紹介したいとおもっています)
<亀嵩へ> トリスバーでの被害者の東北弁「カメダ」をたよりに、今西刑事(丹波哲郎)と吉村刑事は羽後亀田を訪ねますが、調査は実りのない旅となりました。しかし、事件は意外な所から進展します。「…事件が起こってから、すでに二月以上経っていた。捜査本部が解散してからも、もう一カ月以上になる。そのころになって突然、被害者の身もとが割れたのである。それは捜査当局の自力ではなく届け出があったのだ。ある日、警視庁に一人の男が訪ねてきた。彼は「岡山県江見町××通り、雑貨商三木彰吉」という名刺を出した。自分の父が三カ月前に伊勢参宮に出たまま行方不明となっている。もしや、それが蒲田操車場で殺された被害者ではないか、というのだった。…」、ストーリーとしては、ここで一気に進展します(やっぱり小説ですね)。「…今西栄太郎は、都電で一ツ橋に降りた。暑い盛りを濠端の方に歩くと、古びた白い建物があった。小さな建物である。「国立国語研究所」の看板がかかっている。…「出雲のこんなところに、東北と同じズーズー弁が使われていようとは思われませんでした」今西はうれしさを押さえて言った。…近くの本屋に寄って、島根県の地図を求めた。彼は本庁に帰るのも間遠しく、本屋のすぐ隣の喫茶店に飛びこんだ。ほしくもないアイスクリームを頼んで、地図をテーブルの上に広げた。今度は、出雲から「亀」の字を探すのである。…すると、途中で、思わず息をのんだ。「亀嵩」とあるではないか。「かめだか」と読むのであろうか。……昭和三年二月島根県巡査を拝命、松江署に配属。四年六月大原郡木次署に転属、八年一月巡査部長に昇任、同三月仁多郡仁多町三成署に配属され、同町亀嵩巡査駐在所詰めとなる。十一年警部補に昇任、三成警察署警備係長となり、十三年十二月一日依願退職となる。…」。ここで、いままでの”東北弁”と”カメダ”が繋がっていきます。今西刑事は島根県警からの回答だけでは物足りず、自ら、島根県仁多郡仁多町亀嵩に向かいます。
【松本清張】 1909(明治42)年12月、福岡県小倉市(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により日本ジャーナリスト会議賞受賞。70年菊池寛賞、90年朝日賞受賞。「点と線」「波の塔」「日本の黒い霧」「現代官僚論」「昭和史発掘」「古代史疑」「火の路」「霧の会議」「草の径」など多方面にわたる多くの著作がある。92(平成4)年8月死去。98年8月、北九州市に「松本清張記念館」が開館した。(文春文庫「松本清張の世界」より)
★左上の写真が、宍道〜備後落合間を走る、JR木次線亀嵩駅のホームにある駅名看板です。松本清張の「砂の器」で有名になったので゛昭和30年代風の駅名看板になっていました。 |