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残留孤児長野訴訟が終結、国側「誠実に支援策」

3月7日(金)

訴訟終結を受け、支援者らに手を振りながら笑顔で長野地裁を後にする原告団=7日午前11時35分

 日本への早期帰国策を取らず、帰国後も十分な自立支援を怠ったとして、県内外の中国残留孤児や遺族79人が1人当たり3300万円の損害賠償を国に求めた訴訟の第12回口頭弁論が7日、長野地裁(近藤ルミ子裁判長)であり、孤児側は政府の新たな支援策の実施を受け、訴えを取り下げた。国側は同意し、近藤裁判長は提訴から約4年に及んだ訴訟の終結を宣言した。

 全国の都道府県で最多の約3万3000人の開拓団を旧満州(現中国東北部)に送り出した長野県。2004年4月、県内の孤児や遺族67人が長野地裁に提訴。05年12月には山梨県内の孤児1人を含む12人が第2次提訴をした。孤児は78−61歳で、係争中に1人が亡くなった。

 この日の弁論で原告側の下平秀弘弁護団長は、新支援策について「残留孤児が求めてきた老後の生活保障を大きく前進させた」としつつ、残留邦人への社会の理解が十分でないことなどに課題があると指摘。原告団は解散せず「課題解決について厚労省や自治体と協議する母体になる」とした。

 国側は「厚労省としても新たな支援策を誠実に実行していく」と述べた。

 原告団副団長の石坂万寿美さん(65)=松本市=は通訳を通じて中国語で「支援策は完ぺきではないが、多数の残留邦人は助けられ、一応の生活が保障されることになった。この支援策をさらに改善できるようお願いしたい」と意見陳述した。

 閉廷後、原告団は長野市内で報告集会を開いた。

 全国の残留孤児集団訴訟のうち「中国残留邦人等帰国促進・自立支援法」の改正を受け、訴えを取り下げたのは東京や福岡などに続き9カ所目(一部高裁控訴審)。長野地裁での取り下げで、全国の原告計2212人のうち、三分の二の1497人が取り下げたことになる。

 改正支援法に基づく新支援策では、残留孤児らの帰国前の年金保険料などを国が代わりに納め、老齢基礎年金(月6万6000円)を支給。さらに多くの孤児が受けている生活保護とは別の生活支援給付金(月最大8万円)を上乗せした。