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【第3章③】気持ちいいことがやめられません──「人間だもの」と脳科学者

 なぜ恋人たちは繰り返し体を求めるのか。
 どうしてチョコレートはやめられないのか。

 答えは簡単。快感だからです。

 おいしい物を飲んだり食べたり、褒められたりライバルに勝ったり、気持ちよい体験をすると、私たちは再びその快を味わいたくなります。逆に腐った物を口にしたり、バカにされたり敗北したりすると、二度とそんな不快な思いはしたくないと望みます。

 脳が、そのようにできているからです。

 脊椎動物の脳には「快中枢」(または「報酬系」)とよばれる回路があります。おいしい物を食べたり異性と性的な接触をしたりすると、この「快中枢」が刺激されます。すると動物は、その快適な体験を何度も繰り返そうとするのです。

 例えばラットやサルの脳の「外側視床下部」という部位に電極を埋め込み、レバーを押せば電流が流れるようにすると、一心不乱にレバーを押し続けます。電気刺激欲しさに他の一切を忘れ、発情した異性や餌、水さえ拒んで無心にレバーを押すのです。

 同じ実験を人間でするのは困難ですが、1960年代から1970年代にかけて、脳外科手術の準備として、似たような実験が行われました。患者が自分で脳に刺激を与えることを許されると、ラットと同じことをしたといいます。

 人間も実はラットと同じくらい単純で、気持ちいい体験は繰り返したい、不快な体験は二度としたくない、と思うようにプログラムされているのです。

 なぜ、そんな仕組みがあるのでしょうか。

 第2章で論じたように、男性にとって「気持ちよいこと」は、「生き延びて、精子を拡散するのに役立つこと」になっています。ひたすら精子をばらまくよう、絶えず男を駆り立てる刹那的ご褒美が「快感」なのです。

 この一時の快楽欲しさに、死ぬまで報われぬ苦労を強いられているのではないでしょうか。

「気持ちいい!」という快感は、「私」を喜び一杯にするためにあるのではありません。「もっと気持いいことしたい! もっと、もっと……」と、強烈な誘惑で「私の体」を死ぬまで全力疾走させるためにあるのです。

 すべての人は〝快感〟中毒。
「気持ちいいこと」は、人間をやめない限り、やめられません。


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