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大任町長射殺事件



 1986年10月6日午前10時前、福岡県大任町役場の町長室で、町内の土木建築業の男が持ってきた拳銃を執務中の崎野正規町長=当時(42)=に向け至近距離から5発発射、うち3発が左胸などに当たり、崎野町長は搬送先の病院で死亡した。逃走中に逮捕された男=同(37)=は「(拳銃は)暴力団関係者からもらった」などと供述した。88年2月、福岡高裁は男に懲役14年の判決を言い渡し、動機については「町のごみ収集が一業者に独占されていることなどで以前から町長の施策に不満を抱いていたが、事件前日に町長から『あんた、いい格好するな』とからかわれたことで殺害を決意した」と指摘した。

町長射殺は「不慮の死」 負の歴史 町誌は”沈黙” 事件から18年 編さんに苦悩 34年ぶり刊行の大任町

2004年07月31日掲載)

 「忘れてはならないが、触られたくない」 福岡県大任町が三十四年ぶりに町誌を編さん、刊行した。しかし、一九八六年に当時の町長が町長室で白昼射殺された事件については「不慮の死」としか触れていない。全国を震かんさせた前代未聞の大事件が地域に残した傷はあまりに深く、十八年の歳月を経た今も生々しい。「忘れてはならないが、触れられたくない気持ちが強くて…」。編さんに携わった関係者が語る言葉に“負の歴史”を克服できない地域の苦悩がにじむ。

 (田川支局・川崎弘) 「ふるさと大任」の表題を付けた町誌。同町は二〇〇一年一月、町制施行四十周年記念事業の一つとして編さん作業に着手した。町の歴史に詳しい有識者や元町職員、町教育委員会職員ら十一人が編さん委員となり、執筆、編集を担当。一九七〇年に刊行した町誌の続編の形式はとらず「文化」「町政」「自然」「産業」「教育」など項目別に、上下巻計千六百六十五ページに収録した。

 しかし、町長射殺事件が起きた「十月六日」を「暴力絶滅の日」と定め、翌年から毎年その日に暴力絶滅住民総決起大会を開催してきた経緯については「当時の町長が不慮の死を遂げたのを契機に…」としか記していない。巻末の年表には「不慮の死去による町葬」との記述があるだけだ。

 ▼住民感情に配慮

 「大任はやばいところですね」。町職員の一人は、県内市町村職員の研修会の席で、ある自治体職員から面と向かって言われたことがあるという。この町職員は「大任といえば、あの事件とすぐに結びつけられる。大任出身と胸を張って言えず、縁談にも支障を来す深刻な地域差別につながっている」と嘆く。

 「どんなに時間が経過しても事実は変わらない。事実は事実として、あの事件を直視しなければならない」「しかし、あの事件を忘れたいという町民感情にも配慮が必要ではないか」―。

 関係者によると、町の公式記録である町誌に町長射殺事件をどう記述するか、編さん委員会の席ではさまざまな議論があり、最終的に「不慮の死」の表記にとどめることになったという。

 ▼暴追運動いまだ

 事件後、一日でコップ一杯の水を浄化するとされるシジミが、暴力追放運動に取り組む町のシンボルになった。町商工会青年部を中心に取り組む「しじみの里づくり」の恒例行事として今年の夏も、地元小学生が町内を流れる彦山川に約五十キロのシジミを放流した。

 しかし、暴力団絡みの事件や町議の不祥事は今も絶えない。二年前、当時の町議会議長が銃撃される事件が起きた。昨年は傷害事件や銃刀法違反事件、高級車窃盗事件などで現職町議や元町議が相次ぎ逮捕された。

 事実は消しようもない。むしろ、事件を教訓に徹底的な暴追運動につなげようとしてきた取り組みを正確に記録し、次の世代へ伝えるべきではないのか。「どのように書き、どう伝えればいいのか。難しい問題、これからの課題だ」。住民の心の底に重く沈み込んだ“負の歴史”を前に、編さん委員の一人は苦渋の表情を見せた。



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