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児童ポルノ、単純所持も禁止へ 自民党、法改正を検討

2008年03月04日

 インターネットによる児童ポルノの拡散に歯止めをかけるため、自民党は児童買春・児童ポルノ禁止法を改正し、厳罰化する方向で検討を始めた。第三者への販売や提供などが目的の場合のみが違法となる現行法を改め、目的にかかわらず原則として児童ポルノの所持そのものを禁止する。警察当局は取り締まりを強めているが、個人がネットなどを通じて集めた児童ポルノを載せたサイトが乱立しており、単純所持を禁じることで発信源を断つ必要があると判断した。

 児童ポルノは、ネットで複製した画像や動画が多数出回っており、これらは海外のサーバーを経由しているケースが多い。このため、発信源となっている所有者を摘発するのが難しいという。

 自民党は森山真弓元法相をトップにした小委員会を今年2月、法務部会に設置。どの程度の罰則を設けるかなどについて今後議論し、超党派の議員立法で今国会への改正案の提出を目指す。

 警察庁によると昨年1年間の同法違反事件のうち、児童ポルノ関連で立件されたのは567件(暫定値)に上り、5年前の3倍になった。

 こうした状況から日本が「児童ポルノ大国」という国内外の批判は根強い。主要8カ国(G8)中のほとんどはすでに単純所持を禁じている。

 単純所持をめぐっては、04年の法改正時にも与党が禁止条項の創設を検討した。しかし、たまたまダウンロードしたり、迷惑メールなどで一方的に送りつけられたりした場合も摘発対象となる可能性があり、「捜査権の乱用を招くおそれがある」との指摘があった。「表現の自由を侵すことにつながる」という批判もあり、このときは創設が見送られた。

 森山元法相は「事態は深刻化しており、前回の改正時とは状況が違う」としている。ただ、プライバシーの侵害を懸念する意見も強く、小委員会では違法とする範囲を「収集の意思があった場合」などに限ることも含めて検討する。

     ◇

 子どもをレイプする動画が取引され、「ジュニアアイドル」と称する水着姿の小中学生が出演するDVDが人気を集める――。児童ポルノをめぐる状況は、現行法の施行後も決して改善されていない。警察の捜査にも限界がある。

 大阪・日本橋の電気街。大通りから一筋入った雑居ビル3階の児童ポルノ専門DVD店に1月15日、大阪府警が家宅捜索に入った。

 約90平方メートルの部屋の壁一面に1千種類以上がそろう。1枚千〜2千円。7歳児の性行為動画もあった。府警は同日、経営者ら2人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(販売目的所持)容疑で逮捕した。

 店には看板もなかったが、インターネットで知った愛好者が来店。1カ月で100万円超の売り上げがあったという。「欲しがる人がいるから商売が成り立つ。所持自体を取り締まらないと、子どもの性被害はなくならない」と捜査員。

 ここ数年人気を集めているのは、「ジュニアアイドル」と呼ばれる幼児や小中学生がビキニ姿で入浴したり、下着を見せたりするDVDや写真集だ。ネットなどで広く市販されている。

 警視庁は昨年10月、ジュニアアイドルDVDのプロデューサーら4人を同法違反(児童ポルノ製造)容疑で逮捕した。裸のない映像を児童ポルノと認定した初のケースだった。しかし東京地検は、児童に悪影響を与える行為をさせるために支配下に置いたとする児童福祉法違反罪(有害目的支配)で起訴。同種作品とのわいせつ性を比べ、児童ポルノ禁止法違反罪での立件は難しいと判断したとみられる。

 04年に小1女児殺害事件があった奈良県では、13歳未満の児童ポルノの単純所持を禁止する条例を05年7月に施行したが、これまでに立件されたのは同年12月に奈良簡裁から罰金命令が出た1件にとどまる。奈良県警は「条例が抑止力になっているが、捜査では被害児童を特定するのが難しい面もある」とみる。

 《児童買春・児童ポルノ禁止法》 「日本は児童ポルノの発信地」とする国際的な批判の高まりを背景に、99年に施行された。児童ポルノについては「18歳未満の子どもの裸や性行為などを記録した写真や映像で、性欲を刺激するもの」と定義。販売や製造、陳列のほか、譲渡や販売目的の所持を禁じ、違反すると最高で5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方が科せられる。

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