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京大病院の3医師を書類送検 脳死肺移植での死亡巡り

2008年03月13日21時44分

 京都大医学部付属病院(京都市左京区)で06年3月に脳死肺移植をした30代女性を手術でのミスで死亡させたとして、京都府警は13日、執刀した呼吸器外科医(46)と、移植チームに所属した心臓血管外科医(44)、麻酔科医(48)の3人を業務上過失致死の疑いで京都地検に書類送検した。厚生労働省などによると、97年の臓器移植法施行後の脳死移植手術で医師が書類送検されたのは初めて。

 府警によると、同病院は06年3月21〜22日、肺機能が著しく低下する難病の肺リンパ脈管筋腫症にかかった女性に対し、脳死したドナーから提供を受けた肺の移植手術をした。呼吸器外科や心臓血管外科、麻酔科の複数の専門医による「移植チーム」が担当。血液に酸素を供給する人工心肺を女性に装着して血液循環をしたうえ、肺を移植する手順だった。

 府警の調べでは、心臓血管外科医と麻酔科医は、心臓から肺に血を送る肺動脈の状況などを知らせるモニターを確認せず、装着した人工心肺が順調に機能していると誤認。女性の脳に十分な酸素を含む血液が送られていないのに、人工呼吸器を止めて低酸素脳症に陥らせ、同年10月に多臓器不全で死亡させた疑いが持たれている。両医師はモニターを確認しなかったと認めたが、自らの過失は否定しているという。

 肺移植を直接担当し、執刀医だった呼吸器外科医は、手術前の合同打ち合わせ(カンファレンス)を開かず、心臓血管外科医や麻酔科医にモニター確認などの指示や注意喚起を怠った疑いがある。同外科医は過失を認めているという。

 府警は、複数の専門医らの意見なども踏まえ、手術にあたった医師3人の過失が重なり合った結果、女性を死亡させたと結論づけた。ただ、検察内には「遺族との示談が成立しており、高度な医療現場への司法の介入は慎重であるべきだ」との声もあり、検察の判断が注目される。

 同病院は今回の事故でミスを認め、肺移植手術を中止している。内山卓院長は13日、「検察当局の今後の動きを見守りたい。(移植)手術再開の具体的な時期は未定だ」などとするコメントを出した。

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