「児童ポルノ法は人権を侵害せず、児童ポルノに関する被害は悪化している」という論調のトリック
テーマ:反児童ポルノ法こうした態度を、規制よりも規制が進んだ米国の、シーファー駐日大使のコメントからは如実に見ることができます。
以下引用
「カナダやフランス、
ドイツ、イタリア、米国、英国は、プライバシーと言論の自由に高い価値を置
くが、権利を侵すことなく、児童ポルノ所有の非合法化は可能だと判断した。
子どもを犠牲にする行為を保護する必要はない」(平成20年1月30日付
読売新聞『論点』)
引用ここまで URL http://archive.mag2.com/0000127727/index.html
英国で、児童ポルノ摘発「作戦」において、大量の自殺者が出ていることは、以前当方でも取り上げた話ですが、規制推進派にとっては、いかなる問題が出てこようが、「権利の不当な侵害をしていない」と言えるだけの根拠が、児童ポルノ法にはあるのです。極めて範囲が広く、日常的な領域を取り締まり、かつ恣意的な運用が(「性欲」、「範囲」の概念など)出来るように組み立てられているのが児童ポルノ法の特徴ですが、これを逆に言い換えると、「よほど無理な使い方をしても、法の正当性の範囲に収めることが可能なのが児童ポルノ法」と言えるわけで、法律の拡大によって、実際にはいかなる不利益が生じたとしても、問題が、無かった事になってしまう側面があるのです。それどころか、「児童の人権保護」という名目があるために、拡大する標的を設定しただけで(単純所持・単純閲覧等々)、「児童虐待」という新たな「敵」が設定されることになり、規制を拡大すればするほど、推進派内では称賛されるために、新たな規制レースが終わることなく進められていくという構図が成り立っていくのです。無論、「法の正当かつ適正な運用」の前提があるために、彼らの自制心によってブレーキがかかることは期待できません。
では、その「敵」、この種の問題においての「児童ポルノ被害」が、いかに拡大されていくか、という部分ですが、この度「問題」を報じた記事が、極めて明瞭に、その部分を示しています。
以下引用
児童ポルノ、持つだけも禁止 自民、厳罰化を検討
2008年03月04日15時13分
インターネットによる児童ポルノの拡散に歯止めをかけるため、自民党は児童買春・児童ポルノ禁止法を改正し、厳罰化する方向で検討を始めた。第三者への販売や提供などが目的の場合のみが違法となる現行法を改め、目的にかかわらず原則として児童ポルノの所持そのものを禁止する。警察当局は取り締まりを強めているが、個人がネットなどを通じて集めた児童ポルノを載せたサイトが乱立しており、単純所持を禁じることで発信源を断つ必要があると判断した。
児童ポルノは、ネットで複製した画像や動画が多数出回っており、これらは海外のサーバーを経由しているケースが多い。このため、発信源となっている所有者を摘発するのが難しいという。
自民党は森山真弓元法相をトップにした小委員会を今年2月、法務部会に設置。どの程度の罰則を設けるかなどについて今後議論し、超党派の議員立法で今国会への改正案の提出を目指す。
警察庁によると昨年1年間の同法違反事件のうち、児童ポルノ関連で立件されたのは567件(暫定値)に上り、5年前の3倍になった。
こうした状況から日本が「児童ポルノ大国」という国内外の批判は根強い。主要8カ国(G8)中のほとんどはすでに単純所持を禁じている。
単純所持をめぐっては、04年の法改正時にも与党が禁止条項の創設を検討した。しかし、たまたまダウンロードしたり、迷惑メールなどで一方的に送りつけられたりした場合も摘発対象となる可能性があり、「捜査権の乱用を招くおそれがある」との指摘があった。「表現の自由を侵すことにつながる」という批判もあり、このときは創設が見送られた。
森山元法相は「事態は深刻化しており、前回の改正時とは状況が違う」としている。ただ、プライバシーの侵害を懸念する意見も強く、小委員会では違法とする範囲を「収集の意思があった場合」などに限ることも含めて検討する。
引用ここまで URL http://www.asahi.com/national/update/0304/OSK200803040051.html?ref=goo
この記事で報じられている「児童ポルノ深刻化」では、語られるべき重要なポイントが抜け落ちています。五年前から現在にかけて、児童ポルノ法の「改正」が行われ、誰に見せるつもりでもなく(携帯電話などで)撮影しただけで罰せられる「単純製造罪」や、特定少数への受け渡しも禁じた「提供罪」が創設されたことで、児童ポルノ法の取り締まり範囲が極めて拡大されたことや、当局が重点化を図った結果、検挙数が増大したのだろうという分析が全く語られていない点はもちろんですが、この一事をもって、「こうした状況から日本が「児童ポルノ大国」という国内外の批判は根強い」と、客観的に日本が「児童ポルノ大国」ではないことを示すいくつものデータを出さずに断じていたりと、記事としては、一面的と言わざるを得ない記述が、かなり見られるのですが、規制推進派が、「被害の悪化」の根拠として持ちだすなら、これでも充分なものになるのです。検挙数が五年前の三倍になった時点で、「被害の深刻化」を示す証拠になり得るわけで、「事態は深刻化している」とコメントした上で、規制推進の論拠にしていくことも、おそらく、彼らの中では可能なのでしょう。
しかも、この「被害悪化の継続」という言説には、事実上終りがありません。検挙数の拡大を理由に、「被害が悪化しているために更なる規制を」と呼びかけ、規制が拡大したとすれば、当然、触法的領域は広がり、新たな「犯罪者」が多数生まれ、検挙案件は増加することになります。そして、検挙数の増加は「問題の悪化・深刻化」を示している以上、更なる規制の拡大に対しての論拠となります。より懲罰的な側面を強めるため、量刑が順次増大されていくこともあるかも知れません。こうして推進派が、新たな「敵」を打倒していくごとに、人々は行動を統制され、日々相次ぐ「ロリ系犯罪者」の報道に恐怖し、あるいは規制法によって犯罪者に仕立て上げられ……と、平和と安心とは程遠い生活を強いられることになりかねませんが、推進派の人々が、規制に対して自省的になるのは、少なくともしばらくは無いでしょう。何故なら、「児童ポルノ法は、条文で定められた範囲内にのみ、適正かつ正当な運用がなされている」からです。
恐らく、今回、単純所持違法化案が成立してしまったならば、「被害深刻化トリック」を根拠に、更なる規制案が出ていくことになるでしょう。所持者の検挙となると、これまでよりも、遙かに多い人々が逮捕されるだろうことは、「作戦」を展開している各国の情勢から見て明らかであり、そうした事例は、かつてないほどの規模でもって、マスコミを賑わしていくことになる可能性は極めて高いと言えます。そして、報道によって恐怖してしまうと、トリックを看破することではなく、「問題の根本的解決」、つまり更なる規制へと、極めて誘導されやすくなってしまいます。そして、新たな規制は、児童ポルノ法における「三年後」とは限りません。法律とは別に、条例での規制案を各自治体で定めることも可能な以上、即時的な規制が条例で行われることも、充分考えられます。奈良で事件が起きた際には、奈良県が独自に単純所持規制と、声かけ禁止規定を成立させましたが、単一の重大事件が報道されるのではなく、無数の事件が全国で報じられるということになれば、各自治体が足並みを揃える形で、条例を作っていくことも、充分に考えられるからです(青少年関連の条例などで、全国縦断的な動きを見せることは、決して珍しくありません)。
「事態は深刻化しており、前回の改正時とは状況が違う」という言説は、検挙数のようなデータとともに出されると、いかにも説得力のある物言いに思えるかも知れませんが、法律の規制強化がなされる度に、検挙数は拡大する理由を持ち、故に「問題が深刻化」しているように見えてしまうというトリックの構造は、押さえておきたいところです。
■深夜放送自粛と児ポ法、森山真弓の共通点
児ポ問題とは直接関係のない話ですが、自民党が深夜の放送自粛を提案しているようです。
旗振り役は今回も森山真弓。
自粛の目的は環境対策だそうですが、テレビの深夜放送を控えることが環境にどれほどの影響を与えるというのでしょうか?
私は以前から主張していることですが、環境対策は割り箸やレジ袋、放送自粛などという枝葉より、車の総量対策のほうがよほど効果的です。これは業界団体の力もあってできないようですが。
さて深夜放送枠の自粛に話は戻ります。
現在、深夜枠はいわゆるゴールデン枠で放映が困難なもの、すなわち残酷映像を含む映画や、アダルトゲームが原作となっているアニメの放映が行われています。
つまり深夜放送枠というものは、ただ単に時間潰しのためにあるわけではなく、テレビ上でのゾーニングの結果存在している面があるのです。これを自民党の要望で「強制的に自粛」させられては、Fateやひぐらし、その他ギャルゲー系の作品は陽の目を見ないことにもなりかねません。
どうも森山真弓という人は、自分に関係ないもの、自分が興味を持たないものはこの世に存在しなくても良いと考えているふしがあります。