拙著『食品の裏側』(東洋経済新報社)がおかげさまで六〇万部のベストセラーになっているからかもしれませんが、近頃、添加物について興味を持つ人が増えたような気がしてなりません。私の講演会にも、以前にも増して、多くの人がお越しになります。 講演会後の質問を聞いていると、みなさんの関心事がよくわかります。 「日頃買う食品に○○という添加物が入っていますが、大丈夫でしょうか?」 「××という添加物は危ないと聞いたのですが、本当でしょうか?」 それに対して、私は多くの場合、こう答えます。 「国は、添加物一つひとつの毒性の検査はしています。しかしそれは、ネズミなどを使った実験結果ですし、数種類を一度にとった場合の『複合摂取』については、よくわかっていません。だから、安全とも言えるし、安全でないとも言える。毒性に関しては、まだよくわかってないのです」 ところが最近は、「子供の食事」に関する質問が多くなりました。とくにPTAや幼稚園、小学校などで話すときは、いつも決まって次のような質問が出ます。 「子供がご飯をきちんと食べてくれないんですが……」 「お菓子ばかりを食べて困っています」 そう嘆かれるお母さんが、本当に多くいます。 子供がまともな食事をとらないのですから、心配な気持ちはわかります。なかには、「味噌汁は臭いから飲めない」と言う子供もいるようですから、事態は想像以上に深刻です。 そういう事情もあって、子供の食事についての世間の関心は高く、「食育」に関する本もたくさん出版されていますし、「食育」についての講演会やシンポジウムも、よく開かれています。 そこで必ず言われるのが「栄養バランス」についてです。 「主食、主菜、副菜など、バランスよく」 「食塩、脂肪は控えめに」 そういうスタンスのもと、食事のバランスガイドのようなものを作って、食生活の見直し・改善を訴える人が多い。 しかし私は、どうしても少し首をかしげてしまいます。 たしかに、栄養バランスも大切です。だけど、先ほどのお母さんの話などを聞いていると、どうも事態は、それ以前のレベルのような気がしてならないのです。講演会で子供たちに、「今日の朝ご飯は何だった?」と聞いてみると、 「たこやきと炭酸ジュース」 「カップ焼きそばの、水を捨てなかったもの」 と、平気で答える子供が、本当にいます。そこまでいかなくても、何にでもマヨネーズをかけて食べる子供、お母さんのおにぎりより、コンビニのおにぎりのほうが「おいしい」と言う子供の話も耳にします。 栄養バランスどころか、きちんとした食事をしていない。子供の食がいま、完全に壊れつつあるのです。
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