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This is a global good news vol.1
スリランカ農業開発支援プロジェクト

このプロジェクトは、グローバル・グッド・ニュース・プロジェクトの設立メンバーでもある坂井朋則(株式会社アセント戦略ネットワークス取締役)が推進している、スリランカの農業開発を支援するプロジェクトです。

スリランカはマス・メディアなどではまるで激しい内戦が繰り広げられている国であるかのように報道され、確かに反政府組織によるテロ事件は続いていますし、外務省の海外安全ホームページでも、一部地域については渡航を延期したほうが良い旨アナウンスされています。しかし、本来は穏やかな気質の民が住む、インド洋の宝石とも言える美しい島国です。食料自給率は100%を誇る農業国でもあります。

坂井はこの国の豊かな農産品の商品価値を高め、輸出産業として発展させるための支援事業に取り組んでいます。このコーナーでは、当プロジェクトの進行をリアルタイムでお伝えしていきます。


スリランカ農業開発支援プロジェクト概要と基本的な考え方
株式会社アセント戦略ネットワークス 取締役 坂井朋則

1.簡単な事業紹介
まず、今スリランカで準備中の事業のことについて、話したいと思います。
一言で言えば、スリランカ産の青果物の加工・貿易事業ということになるでしょうか。スリランカ産の青果物を現地でカッティング、ドライ加工を施した後、日本に輸送しパウダー状へと変化させます。この青果物パウダーを野菜スープや健康ジュース、健康食品に応用、更にはベビーフードやドッグフードへと適用することを計画しています。

スリランカ側の事業パートナーは、二つの団体。一つは、セワランカ財団という民間財団であり、国連やJICAと提携した漁民・農民支援事業から独自のマイクロファイナンス網を活用した金融事業まで、幅広い支援活動を行っている組織です。こちらの企業部が我々の提携先になります。もう一つは、Best Seeds Production Co. Ltd.という民間の農民会社です。この会社は、元スリランカ政府農業省のお役人さんが退職後設立した会社であり、独自の農民ネットワークの下、種野菜の研究や青果物の販売を手がけています。

この事業の目玉は、二つあります。一つは、スリランカ産の青果物を使用すること、もう一つは青果物パウダー化の技術です。スリランカは周知の通り熱帯に属しており、北海道よりも小さい面積の割には、非常にたくさんの種類の青果物が栽培されています。また、有機農法が盛んであるため、食の安全性が問われる昨今、非常に魅力的な食料生産地の一つであることは間違いないところです。

青果物のパウダー化においては、日本側で開発した独自の製造機を使用しています。この製造機を使用すると、高速低温によるパウダー化が可能になるため、栄養素や色素が壊れることは無く、更に味にも影響が出ることが無いため、非常に高品質の青果物パウダーを製造することが可能になります。スリランカの青果物と日本の高技術のコラボレーション、これこそがこの事業の特徴です。

現在両団体の協力の下、製品サンプルを開発中であり、このサンプルが完成次第、日本における本格的販売ルートの構築を手がける予定です。

2.スリランカとの出会い
本来、北京での留学や香港での長期滞在など、むしろ中国との接点の多かった自分がスリランカという国と出会ったのは、ODA事業との関わりにあります。独立する前、開発コンサルタントとしてJICAや国連関係の途上国支援事業に携わっていたのですが、2005年から2006年にかけて、スリランカの農業支援に関するプロジェクト調査に携わることになりました。これがスリランカとの出会いの始まりです。

スリランカ政府は、現在、農産物の多様化を推し進める一方、農産物の商品化を目標に、農業市場と流通システムの整備を重要な課題と位置づけています。農民に対しては、信用制度を充実させる一方、農業技術支援とマーケティング知識の普及に力を入れており、徐々にですが、効果を出しつつあります。元々識字率が高く(90%以上であると言われる)、教育水準も高いため、良質の人材を輩出する素地は整っています。特に南アジアにおける代表的な仏教国であり、温和な人柄は日本人に非常に似ています。これらのことから、私はスリランカに大きなビジネスポテンシャルを見出しています。

3.支援事業の限界
かつて開発コンサルタントとして途上国の支援事業に携わった自分が、何故今ビジネスとしてスリランカと向き合っているのか。それには、幾つかの理由がありますが、簡単に言うと、支援事業としての限界を感じたことにあります。緊急支援や戦後処理、最貧国と称される国への支援事業など、必要性が十分高いものもありますが、スリランカのような中進国レベルの国に対してどこまで支援事業が必要かという点です。

営利事業との境界線
内戦が完全な終焉を見ないスリランカですが、2006年はそれでも7%の経済成長率を達成しており、前述の通り、国家としての経済的課題は、市場及び流通システムの整備という局面を迎えています。流通施設やインフラ等の整備において、政府やODA事業の役割が大きいことは確かだと思います。しかし、それと並行して必要な人材整備や企業支援においては、JICAや国連機関は未だにイニシアチブを取れていないのが現状です。早々と裕福層に仲間入りした流通業者を如何に巻き込むかが重要なポイントのはずなのですが、あくまでも営利事業とは線を引く形で様々な支援事業を実施しているため、流通業界における支援事業はそもそも組むことが困難らしいのです。

普及の問題
その代わり、JICAや国連によって、相変わらずと言ってもいいほどに続けられているのが、「最貧困層支援」を題目とした農業技術の移転事業です。これらの支援事業は、通常、事業地域が限定されるかたちでのパイロット事業として実施されます。大型の予算が組まれ、最高とも言える専門家が配置され、緻密なスケジュールに従った事業が実施されます。そのため、多くの場合は、評価通りの実績を残すことになります。
問題は、その成功事例をパイロット事業実施地域以外に普及させる際に発生します。他の地域ではそもそも、そのような予算や人材が継続して配置されるわけなどありません。「成功モデル」を真似ることが必要になってくるのですが、それは不可能に近いわけです。結果、数年後に、今度は地域を変えて、ほぼ同様のプロジェクトが実施されることになります。結局は、この繰り返しが多いのです。

支援対象からの脱却の難しさ
さらに、支援されている国が、支援されている立場から脱却するタイミングをどのように見出すかという困難さもあります。よく言われることなのですが、一旦支援される側に身を置いてしまうとその状態から抜け出すのは、非常に難しいのです。そこにはもちろん、支援されることへの慣れということも含まれると思います。

びっくりされる方も多いかと思いますが、アジアで一番貧富の格差が大きいのは、実は香港です。しかし、香港では支援事業は組まれていません。IMF等の国際機関が、貧困層向けの支援パッケージを準備したいとのオファーを香港政府に出したこともあるのですが、そのオファーは断られたといいます。何故でしょうか。それは香港人のプライドがそれを許さなかったのだろうと思います。香港の富裕層の多くは、大陸移民等の貧困層出身なのです。上に行きたければ、自分で努力する、このマインドと支援という施しは、そもそも接点が無いのです。

4.ビジネスの可能性
ODAや国連事業だけでなく、世の中にはNPOやNGOによる支援事業があふれています。しかし、もう一度考えないといけないのは、そのようなNPOやNGO自体が、寄付行為や助成金等の支援対象になっているということです。自立と継続をモットーとすべき支援事業の主体となる方々は、己の足元をもう一度見直してもいいのではないでしょうか。

支援事業に携わる方々のなかには、稼ぐという営利行為自体を忌み嫌う人達もいます。しかし、それも己の立場を忘れた身の程知らずの考え方であると揶揄されても仕様がないと思います。そもそも事業資金は、決して天から降ってくるものではないのです。途上国の人々に対して、「自らで稼ぐこと」を教える立場の人間が、営利行為を嫌うのは本末転倒であるはずです。

日本も戦後しばらく、国際社会の支援を受けてきた時期があります。しかし、人々は、自活の精神を忘れることなく、事業開拓に励んできました。この起業家の精神を持てるか持てないか、ここに私は途上国支援の鍵があるように思います。ビジネスのモットーとは、ウィンウィン関係の構築にあります。相手も幸せにし、自分も幸せにする、もっと俗な言い方をすれば、相手も儲けて自分も儲ける、ということに他なりません。

このように書くと、「営利行為の追及は、際限の無い欲望の追及であり、破滅の元に他ならない」と反論する人もいるかもしれません。しかし、「営利行為」がそのままイコール「際限の無い欲望」であるわけではありません。営利行為は、生活のうえで欠かせない行動であるにすぎません。途上国にビジネスをしかけることは、欲望の道具として途上国を利用することでは決してありません。安全の保証された生活の場を、途上国まで押し広げていく、つまり平和の普及方法としては、ビジネスが有効であるということです。途上国とウィンウィン関係を構築することとは、安心と平和を享受することに他ならないのです。


5.社会企業の将来性
以上述べた通り、スリランカという国と事業を通じて、利益をシェアしていきたいと考えています。スリランカのような中進国に求められているのは、従来どおりの技術移転型の支援事業ではなく、ウィンウィン関係を構築できるビジネスです。そして、求められるビジネスとは、決してかつての植民地事業のような途上国から一方的に収奪する事業ではなく、途上国の資源を有効活用した利益シェア型のビジネスモデルであることは、言うまでもありません。

今、欧米ではSocial Entrepreneur、すなわち社会起業家というものが非常に注目されています。本業が別にあり、本業の儲けの一部を使ったチャリティ型の支援事業ではなく、社会貢献の行動そのものを、ビジネス本業として成立させていくというスタイルです。私は、社会起業というビジネススタイルに非常に共感を覚えています。そして、自身が今スリランカで手がけている事業もまた、立派な社会起業の一つであると確信しています。善意は忘れてはいけませんが、自身もまた営利行為により生きているということを忘れてはいけない、だからこそ私は、自身も社会起業家であることに誇りを持っているのです。



当プロジェクトを援助したい、スリランカ農産品を扱ってみたいという方はお気軽にお問い合わせください。

問い合わせ先 グローバル・グッド・ニュース事務局(office@globalgoodnews.tv)


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