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「環境にやさしい」のはどんなテレビ?――薄くなる大型テレビの環境的視点(08/03/12)

「環境にやさしい」のはどんなテレビ?――薄くなる大型テレビの環境的視点(08/03/12)

安井至(やすい・いたる)
科学技術振興機構 シニア・フェロー、東京大学名誉教授。1945年東京都生まれ。東大工学部卒。環境科学(環境負荷総合評価、ライフサイクルアセスメント、環境材料、グリーンケミストリー評価尺度)を専門分野とし、日本LCA学会副会長などを務める

 液晶、プラズマテレビといった大画面薄型テレビの活況が目覚しい。最近では「有機EL」など新しい方式の薄型テレビ技術も商品化が進んでいる。一方で、テレビを視聴している際の消費電力量なども話題になることが多い。環境に配慮した場合、どんなテレビを選ぶことが「正解」なのだろうか。

 2011年、テレビの地上アナログ波は停止される予定である。すると、テレビは地上デジタル、いわゆる地デジが受信できないと、通常のテレビ番組を楽しむことができない状態になる。古いタイプの多くのテレビが買い換えられることだろう。

 買い替えはいつ頃が良いのか。デジタル製品の場合、しばらく待つと良い製品が出てくるので、買い時が難しい。その典型が、デジカメだろう。さすがに価格がそれほど下がることは無くなってきたが、広角レンズ、手振れ防止、顔認識という3つの重要な条件を満たす製品がやっとでてきたところである。

 薄型テレビも、果たしてデジカメと同様なのだろうか。しばらく待てば、さらに良いものがでるのだろうか。最近の傾向は、ますます薄くなることである。消費者にとって、何が薄さのメリットなのだろうか。さらに、このようなテレビは、環境面で見たとき、どのような問題点があるのだろうか。

■そもそも、液晶テレビは環境に良いのか

2007年の液晶テレビ世界シェア1位はソニー。写真の「KDL-46F1」など08年春モデルの一部では本体に自社循環再生プラスチック材を初めて採用した

 某メーカーの広告で、「テレビの性能は環境です」というものがあった。その真意は不明であるが、恐らくは、有害物質を使っていないということだったのではないか、と推測している。

 実は、環境面からみると電気製品には2種類あって、製造時の環境負荷が大きなもの、使用時の環境負荷の大きなものに分けることができる。製造時の環境負荷だけを問題にすればよいものの典型が携帯電話である。消費電力はほとんど無視できる程度のものだからである。後はリサイクルをしっかりすれば良い。テレビは重いので、製造時負荷も問題にすべきなのだが、それよりも圧倒的に使用時の電力消費量による環境負荷が大きい。

 という状況だから、比較は簡単である。テレビの環境負荷は消費電力で概ね分かる。ところが、不思議なことに言葉使いがメーカーによって様々である。パナソニック(松下電器産業)は、定格消費電力という値が出ている。シャープやソニ―などは、消費電力である。東芝は消費電力定格動作時という表記である。もしもカタログに年間消費電力量というデータが出ていれば、それが実情をもっとも反映している可能性が高いのだが、製品によってはデータが出ていない場合もある。

 以前、様々な製品について、比較検討をしたところ、年間消費電力は、液晶テレビの場合には、画面の明るさを暗めに設定して計算されているようで、本当の消費電力はまさに使い方次第、という結論になった。液晶テレビは、プラズマよりも圧倒的に消費電力が低いということでも無さそうで、20%程度の違いと考えれば良さそうであった。

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