FASTENING

分解しやすく組み立てろ

[2008年01月号]

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る
<<12 PAGE 2/2   目次に戻る
その他の変更点:

Avdel社の新しいRivscrewは、一方向からの作業によって組立作業を簡素化する
提供:Avdel

・接着剤の使用を中止した

・プラスチックよりもリサイクルしやすい金属の使用量を増やした

・プラスチック材料は、芳香族ベースのものとオレフィンベースのものといったように
化学的にタイプの異なるものではなく、同系統のものを使用するようにした

・スナップフィットの利用を増やした

・使われているプラスチックの種類を分かりやすいマークで示すようにした

 HPは、簡素でただちに実施可能な組み立て技術の採用に積極的だ。リサイクル設計のためだけに新しい組み立て方法を開発することは、ほとんどない。ただし、メンテナンスのための分解性設計については、非常に有効な技術が開発されている。

 これら両方の目的に対して効果を発揮する新製品の一例が、米Avdel社のRivscrewだ。これは、リベットのように迅速に取り付け作業ができ、スクリューのように取り外すことができる。Avdel North America社のゼネラルマネジャーPhil Szuba氏によると、Rivscrew PLファスナーは、セルフタップスクリューやナットとスクリューとワッシャーの組み合わせと比較すると、最大で6倍速く取り付けることができるという。

 この製品はさまざまな応用分野を想定して開発されたもので、その中には自動車や、コンピュータ用プリンタなどの電子機器も含まれている。これらのスクリューは、プラスチックアセンブリの締結に利用することができる。

 米PennEngineering社でもまた、メンテナンスやリサイクル目的の分解性設計に狙いを定め、複数の製品を用意している。同社の主要製品ラインであるセルフクリンチ・ファスナーは、金属の薄板に取り付けて恒久的なねじ締結部を提供することができる。PEM社の担当者によると、最終的な組み立てに必要なのは相手側のハードウエアだけになり、分解も非常に簡単になるという。この製品ラインにはプラスチックアセンブリ用のインサート部品も含まれ、分解時には同様の利点が得られる。

 さらに、ユーザーが道具を使わず、スナップ動作だけでボードの取り付けや取り外しができるスタンドオフ・ファスナー(プリント基板の積み重ねやクリアランス確保に使用)もある。

 ペンシルベニア州DanboroにあるPennEngineering社のLeon Attarian氏は言う。「我々は何よりもまず、組立性を重視して設計を行っている。しかし、これは逆方向にも当てはまる。ナットやボルト、ワッシャーなどのばらばらのハードウエアをなくすことにより、組立作業の際に、これらの部品を扱わなくても済むようにしようとしている。すると、分解するときには、これらの部品があちらこちらに落下する心配がなくなる」

 ニュージャージー州ハケッツタウンにあるAsymmetric Fasteners社もまた、分解工程を迅速化する製品を提供している。同社社長のTad Staniszewski氏は、同社の製品Torksleeve Mについて、「この部品をシャフトから取り外したり、金属やプラスチック製の壁面からシャフトを分解したりするのは、数秒間でできる。ナットを緩め(半回転〜3/4回転)、部品をシャフトに沿って動かして外すだけだ」


できるだけシンプルに

プリント基板の間のクリアランス確保に使用するスタンドオフ・ファスナーは、スナップ動作だけでボードの取り付けと取り外しができる
提供:PennEngineering

 しかし、分解性設計の取り組みの中で、特殊な技術が活躍するのはごく一部に限られる。

 ロードアイランド大学で産業システム工学の教授を務め、工業設計に関して複数の著書を持つWinston A. Knight氏は言う。「我々は、分解性設計というのは、組立性設計とほとんど同じものだと考えている。部品点数を減らして製品全体を簡素化することに注力すれば、組立工程に与える影響と同じぐらいの影響を分解工程にも与えることになるからだ」

 Knight氏は、ロードアイランド州ワーウィックにあるソフトウエアベンダーBoothroyd Dewhurst社による分解性設計ソフトウエアの開発に協力した。このソフトウエアは1990年代に発売されたものだが、新たなEU指令への関心が高まるとの予想から、再び注目されている。「これらのEU指令に準拠するためには、企業は各製品の構成部品のうち何パーセントまでがリサイクルまたは再使用できるのかを把握する必要があるが、このソフトはその際に使用できる」(Knight氏)。また、異なる設計案が分解と廃棄処理に与える経済的な影響についての情報を提供することもできる。

 このソフトの主要な機能の1つは、推奨材料を提示し、そのリサイクル性を示すというものだ。設計エンジニアは、使用が規制されている鉛などの材料を避けるよう、即座に警告を受けることができる。ポリ塩化ビニルや、臭素化難燃剤を含むプラスチックなどの材料も、推奨されない材料として示される。

 材料の選択は、HPの手法でも重要な位置を占める。HPでは、臭素化難燃剤と大部分のPVCをすでに廃止している。ただし、電源ケーブルの被覆については代替材料が存在しないことから、HPやその他の企業においてもPVCが使われている。

 HPでは、回収したリサイクル材料を再生し、場合によっては最初の用途よりも高度なアプリケーションに使用するなど、材料リサイクルの取り組みを徹底させている。HPのプリンタカートリッジからリサイクルされるポリエチレンは、ガラス繊維配合の材料に生まれかわる。一方、炭酸飲料のボトルからリサイクルされたポリエチレンテレフタレート(PET)とその他の材料から作られる材料は、ポリカーボネートに代わって光学スキャナの光源を保持する部品に使われている。HPのFrey氏は、「この部品の構造的な安定性は、光学的透明度を確保するうえで非常に重要だ」と言う。この材料は、環境にやさしいだけではなく、コストもポリカーボネートより低く抑えられている。このリサイクル材料は、RPETと呼ばれている。

 リサイクル性設計のプロセスでは、厳しい設計ルールを適用することが重要だ。特に電子設計は、その多くが世界各地のサードパーティーによって行われていることを考慮すると、ルールを徹底させる必要がある。

 「我々が早くから気付いていたことの1つは、新製品を設計するすべての部門の設計標準の中に、リサイクル性に関する規定を組み入れなければならないということだ」(Frey氏)。これは、環境マネジャーが、設計エンジニアとともに製品開発チームに参加することを意味する。

HPのリサイクル設計のルール
・各製品モデルまたはモデルシリーズに関する新製品導入時チェックリストの中に、リサイクル性設計基準への適合に関するチェックリストを完成させて含めることが推奨される。

・HPの各製品は、HPリサイクル性評価ツール(RAT)または同等のツールを使用した測定によって、重量の65%以上がリサイクル可能と判定されなければならない。

・25グラム以上の重さのプラスチック製部品は、HPのプラスチック製部品マーキングアルゴリズム仕様に基づいて物理的に識別しなければならない。この仕様は、ISO 1043 Parts 1-4を含むISO 11469の物理的マーキングの規定に基づいている。



<<12 PAGE 2/2   目次に戻る
この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

Sponsor Links

Partner Solutions

EVENTS

DNJ RESOURCE CENTER

共和電業
高速サンプリングによるオンライン/オフライン計測が可能なユニバーサルレコーダ EDX-100A
技術資料
資料一覧を見る この資料をダウンロード