◇2人だと欲望を抑えられない彼。結婚まで待ってほしいのですが……
■相談 19歳女子学生
Q
つきあって3年になる同級生の彼がいます。2人きりになると欲望を抑えられないらしく、私の体を求めてきます。学生ですし、万が一の妊娠も考えると、避妊してもできません。結婚を約束しているので「それまで待ってほしい」と2年間言い続けているのですが、先日も無理強いされそうになり、力ずくで止めて「結婚するまでそのことは言わないで」と言いました。次に会った時にまた迫られるのかと思うと恐怖を感じます。彼は2人で外出することを好まないので、外に出て気分転換もできません。彼のことは好きなので、普段の彼とのギャップにも戸惑っています。待ってもらいながら、良い関係をはぐくむ方法はないでしょうか。
◇不潔と決めつけないで
A
未知の世界を恐れる乙女の気もちって、そういうものなんですね。でも、ぼくには彼のほうが今の「普通」で、あなたがそこまで性的経験や欲望を恐れるのか、よくわかりません。非常に潔癖な家庭で育ったのかもしれないけれど、学校を卒業したらすぐに結婚するのかな。まだまだそれまで何年もかかるのでは、果てしない忍耐が彼を待ちうけている。ちょっと恋人がお気の毒だなあ。
◇友人にも相談を
終わりなきデフレ不況が続いて、男女間の欲望全般がダウンサイズしています。男女交際の在りかたも、例えばバブル期の20年まえよりも保守化したような印象をもつのは、ぼくだけでしょうか。気がつけば30代なかばのニッポン男子の4割が未婚という恐るべき事態です。恋愛低体温症が猛威をふるう現在、彼のように素直に欲望を表現できる人は逆に少数派なのかもしれません。
あなたはセックスは結婚した男女がするもの、しかも生殖目的だけでするものと、幼いころから教えこまれていませんか。しかし、実際にはどこの国でも初体験の理由を調べると、単純な好奇心からというのがトップだったりするのです。新聞に相談を送って、おじさん作家にこたえをきくより、周囲にいる同性の友人に話をしてみたらどうでしょうか。そちらのほうが、公の場では書きにくいようなズバッとした明快な回答が返ってくるはずです。
別に無条件でセックスをすすめるわけではありません。決めるのはあなた自身だしね。でも、あなたが思っているよりセックスは日常のなかにあたりまえに存在するすてきなもので、いやらしいと単純に排除したり、無理やり隠蔽(いんぺい)する対象ではないのです。結婚を約束していて、両家の親にもあいさつをしているくらいの関係なら、無理して我慢させる必要はないんじゃないかな。まあ試してみればわかるけど、そんなにたいしたことではありません。避妊してでもできないというくらいの恐れは、どこからくるのかな。そのほんとうの理由をあなたのなかで探ってみてください。
◇代替手段もある
とはいえ、あなたは彼に待たせながら交際は続けたいというんですよね。では、最終的な性交の代わりに、ふたりで話しあって、いろいろな代替手段を考えてみてください。おおきな声ではいえないけど、ふたりには手も口もあるのだ。その際、頭から男性の欲望は野蛮で不潔だなどと決めつけないように。性的な局面で豹変(ひょうへん)する彼が怖いといいますが、どんな人間のなかにも動物はいるものです。性的なケモノは案外かわいいものだと、ぼくなんかは思いますよ。どちらにしても、性をあまりに恐れたり忌避したりするのはもったいない。もうすこし大人になってみましょう。<漫画回答・柴門ふみ>
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■3月の相談 t.love@mbx.mainichi.co.jp
前回(3日掲載)はバツイチ子持ちの彼との関係に悩む24歳女性からの相談でした。次回は夫との口げんかに疲れた妻からの相談です。今回も含め、同じような経験はありませんか。体験に基づく解決法やご意見をお寄せください。秘密は厳守します。
手紙は〒100-8051(住所不要)毎日新聞生活家庭部「愛」係。メールは表題を「愛」として上記アドレスへ。匿名可ですが、可能な範囲の住所、職業、年齢は明記を。採用者には柴門ふみさんイラスト入り特製図書カードを進呈します。
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■人物略歴
◇いしだ・いら
1960年東京生まれ。成蹊大卒。03年「4TEEN」で直木賞。ミステリー、青春小説、恋愛小説など幅広いジャンルで活躍。代表作に「池袋ウエストゲートパーク」シリーズなど。本紙日曜版で「チッチと子」連載中。
毎日新聞 2008年3月10日 東京夕刊