死因究明の第3次試案、近く発表

 手術ミスや誤った投薬などで患者が死亡した場合に事故調査に当たる「医療安全調査委員会(仮称)」の創設に向け、厚生労働省は「第3次試案」(仮称)を近く発表することを明らかにした。昨年10月に公表した第2次試案に対して、医療現場や関係学会などから「刑事責任の追及を目的とした制度」という批判が出ていることなどを受けて、第3次試案は医療事故を起こした医師らに対する再教育などの「再発防止」に重点を置いた内容になる見通しだ。

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 厚労省は3月12日、「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)を開催した。

 この日は、前回積み残しになっていた医師らに対する行政処分について議論したほか、第2次試案を公表した後の委員の意見を確認した。

 医療安全調査委員会をめぐる主な審議が一区切り付いた今回の検討会では、委員から「第3次試案を出すべきだ」との意見が相次ぎ、これに厚労省が同意した。

 これまでの経緯を振り返ると、厚労省は昨年10月に「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案」(第2次試案)を発表し、国民からの意見を募集した。しかし、医療従事者や関係学会などから「刑事責任の追及を目的とした制度だ」との批判が相次いだ。
 
 前回の検討会で、厚労省は再発防止に重点を置いた「業務改善命令」や「再教育」などの行政処分を提案し、了承された。医療関係者の責任追及が目的ではなく医療安全や再発防止を重視する方針については、委員の間で好意的に受け止められている。

■ 「重大な過失」は医療関係者の専門的な判断
 13回目となる今回の検討会で、厚労省は行政処分の対象となる事例について広狭2つの案を示して意見を求めた。「案1」は、故意や重過失、カルテ改ざんなどの悪質な事例、「案2」は捜査機関に通知されるような事例に限定せず「医療機関の管理体制、他の医療従事者における注意義務の程度を踏まえて判断する」としている。
 この提案に対し、「案2」に賛成する意見が多かったため、試案では行政処分の対象となる事例の範囲が広くなる見通し。

 一方、医療安全調査委員会が捜査機関に通知する事例の範囲は、医師らに故意や重大な過失がある場合や、カルテ改ざんなどの悪質な場合などに限定する。
 このうち、「重大な過失」の意味について医療現場などから「結果が重大なら重過失にされる」との批判がある。

 この日、厚労省は「死亡という結果をもって重大ということではなく、医療水準から著しく逸脱しているかであり、わずかに手技が下手だったなどの事例に対して刑事責任を問うことはないのではないか」とした。
 その上で、医療安全調査委員会が医師らの医療関係者を中心とする委員会であることを強調。「重大な過失」の有無について、同委員会が「専門的な見地から判断する」とした。


更新:2008/03/12 20:59     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。