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2008年3月13日

◎消防広域化 医療圏との一致は合理的

 石川県内十一の消防局・本部を五ブロックにする県の消防広域化推進計画案は、実現す れば地域医療計画で定められた二次医療圏のエリアに近づくことになる。富山県が県東部、西部に分けてそれぞれ示した三案でも一パターンは二次医療圏を基本としており、消防業務で救急出動の占める割合が増加し、搬送拒否が社会問題化する中、医療圏との一致は合理的な考え方と言える。

 両県とも検討会議で妥当性を判断し、ブロック構成自治体が運営計画を策定して二〇一 二年度末までの実現を目指すが、消防広域化は火災出動体制の充実とともに医療と連携して救急救命体制を強化する視点が重要である。業務の効率化ばかりでなく、住民の側に立って「消防力」が発揮できる体制にしてもらいたい。

 石川県の計画案によると、七尾鹿島、羽咋郡市の消防本部を「能登中部」、金沢、かほ く市、津幡、内灘町を「石川中央」、小松、加賀、能美を「南加賀」とし、奥能登は「能登北部」、白山石川は「白山石川」の各ブロックとする。「石川中央」と「白山石川」は二次医療圏で言えば「石川中央」のエリアとなるが、あとの三ブロックは同じ枠組みとなる。

 富山県では二次医療圏や広域市町村圏の枠組みを考慮し、十三本部を四、五の本部にす る組み合わせが示されている。県民の意見などを参考に最終案をまとめる。

 石川県消防保安課によると、県内の火災出動件数は年間三百―四百件とほぼ横ばいで推 移しているが、救急車出動件数はこの十年間で一・五倍に増えた。高齢化で救急需要の拡大が予想され、救急救命士の養成も大きな課題である。二次医療圏と消防の管轄エリアが重なれば救急業務の一体化が図られ、これまで不備が指摘されていた消防と病院相互の医療情報システムも整備しやすくなる。

 消防広域化は小規模本部を解消し、組織運用の効率化や専門職員の養成、無線デジタル 化のコスト削減などが狙いである。全国的には一県一本部を目指す動きも出ているが、消防団は市町村単位のままであり、スケールメリットを追求するあまり地域との関係が薄れては困る。各地で誕生する自主防災組織や消防団とのつながりを深め、「地域防災力」を高める工夫も課題となろう。

◎公務員改革足踏み 日本再生へ後退は許せぬ

 福田政権になってから、国家公務員制度改革が足踏みしている感が否めないのは遺憾だ 。公務員改革は日本を活力あるものに再生するための、不可欠な第一歩であり、足踏みや後退が許されないのだが、その懸念が生じてきた。その一つが「内閣人事庁」構想の巧妙な骨抜きだ。

 内閣人事庁は、これまで各省庁が担ってきた幹部人事を内閣主導で一元化し、省益がぶ つかり合ういわゆる「縦割り行政」の弊害をなくしていこうとする新構想である。政府は、今年二月の有識者会議の提言を受けて今国会に提出する国家公務員制度改革基本法案に明記する方針を決めたのだが、町村信孝官房長官がその在り方に関して合点のいかない発言をしているのだ。

 すなわち「細部の制度設計は基本法が通った後、詰めていく」「機能は各省庁が行う幹 部人事に対する情報提供や助言に限定する方針」などと記者会見などで述べたのである。具体的な権限などが盛り込まれず、先送りされ、しかも後退させられる可能性さえ出てきたといえる。

 内閣人事庁は官房長官をトップに設置されるのだが、そのトップに就く可能性のある人 物の言だから、官僚たちの強い抵抗をくみ取った巧妙な骨抜き、あるいは改革のサボタージュに映るのである。

 内閣人事庁について、担当大臣の渡辺喜美行革担当相はいくつかのポイントを挙げてい る。その第一は、人事権を官僚から取り上げて一元化することにより、内閣や国会が官僚機構に使われている現状を逆転し、大局から政治や行政を進める可能性が生まれること。第二は、キャリア制度を廃止し、能力主義を徹底させ、合理的な官民交流ができるようになること。第三は、官僚と国会議員の野放図な接触を禁止し、公務員が本来業務に精力を注げるようになること等々である。

 小渕政権で経済企画庁長官をつとめ、小泉政権下では改革に参画した元官僚の評論家・ 堺屋太一氏などは「今や身内をかばい合うだけの“官僚共同体”ができ、日本を仕切り、問題を起こしている」と批判している。日本に元気を取り戻すだけでなく、優秀な官僚たちのためにも改革は後退させられない。


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