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「時給150円」アニメ制作はつらいよ「このままの待遇では若手アニメーターは定着しない」と話す女性アニメーター
「なに、これ」。練馬区の制作会社で働く女性アニメーター(34)は7年前、電卓で自分の時給をはじき出した。液晶画面には「150」円。会社の机に1日15時間かじりついて、月給は7万円。話にならないほどの低賃金だ。 アニメーターがもらえる原画の単価は1カット4000円。背景にスズメ100羽が飛んでいたりすると、描くのに時間がかかる。手のかからない青空でも単価は同じだ。給与は出来高制。手間のかかる仕事が重なると、それこそ手取りはスズメの涙となる。家賃を引くと、残り3万円。その後ひと月は、そうめんだけでしのいだ。「ワーキングプアそのものですよね」 そんな彼女が過酷な生活から抜け出したのは、数年前に会社を変わってから。大きな会社から声がかかり、月給は20万円ほどに改善した。しかし30代半ば、キャリア10年の報酬としては、世間並みとはお世辞にも言えない。 次の目標はキャラクターデザインを手がけること。この段階になって、作品のエンドロールで自分の名がはっきりと見える大きさになる。報酬もぐーんと増える。が、そこに行きつくにはまだまだ。切りつめた生活はしばらく続きそうだ。 彼女が経験した極貧生活は、多くのアニメーターが通る道でもある。子供たちに夢を贈る作品の陰には、貧しい若者たちの忍従の日々が潜む。東南アジアに下請けに出す会社も増えており、国内の労働市況にはなかなか光が見えない。 「そもそも産業構造がおかしい」。最近、アニメ監督らが団体を作り、批判ののろしを上げた。スポンサーが出すお金のうち、8割がテレビ局と広告会社に回ったケースもあったという。 団体の代表は「北斗の拳」監督の芦田豊雄さん(63)。<お前はすでに死んでいる>。そんな風に強がってみたいけど、実社会で一撃必殺の拳法は通用しない。ねばり強く、各方面と交渉して理解を求めることにしている。 ◆労働と報酬 日本芸能実演家団体協議会(新宿区)が2005年に発表した調査では、アニメーターの平均労働は月25日、1日10.2時間。所得は年300万円以上35%、未満65%。100万円未満も27%を占めた。無作為に選んだ300人に調査票を渡し、83人が回答した。年金未払いも22%に上った。 (2008年3月12日 読売新聞)
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