ぼくは長年にわたって「武器輸出三原則等」を緩和し、外国との共同開発を行うべきであると申してきました。 ですから久間防衛相の緩和すべきとの発言は評価します。システムは複雑化し、開発費は高騰しており一国であれもこれも自前でやるのは無理です。 また、武器輸出三原則で禁止されておる「紛争国」である米国との共同開発を例外としてやっておるわけです。例外ばかりで「武器輸出三原則等」が事実上遵守されていない現状は危ういとも思っています。 ですから「武器輸出三原則等」の緩和は賛成です。 ですが、いまのままで共同開発が本当にできるのでしょうか。 あまり他の人が指摘しないのでここで問題点をあれこれ指摘しておきます。 第一に相手を選ぶためには相手のことを知ってなければならない。技術力は勿論ですが、国情やら政治的なリスクも含めてです。その情報や、分析能力があるのか。 政権が変わったらプロジェクトを中止するということだってあります。また二カ国以上の場合、船頭多くして…になりやすいわけで、その場合の対処ができるだけのネゴができるのか、その度量が防衛省なり官邸にあるのか。 外務省やら経産省と国内でも省益のために足を引っ張らないのか。窓口を一元化し、抜け駆けする省庁が出たら局長クラスを更迭するぐらいの意志を官邸が持たないと駄目でしょう。 第二に技術の評価がちゃんとできるのか、技本は失敗しそうもないような案件を選んで研究するという性癖があります。といっても結構しているのですが…・ しかもPXの例でわかるように、あのクラスで4発の機体がないから「我が国独自の環境」に適合した機体を開発しますと、機体からエンジンから開発したりするわけです。 でもって、今エンジンがクラックが入って大変だとか、ソノブイがちゃんと音が出なくて開発が行き詰まっているとか、でスケジュールが洒落にならないぐらい遅れそうとか、業界では話題になっておりますが。 まあ、欠陥があってもそもまま開発して、後は運用部隊に泣いて貰うというのが我が国の美しい伝統ではありますが。今後も今まで同様戦争がおきなければボロがでないんでしょうが。 しかも技本は研究をやりながら、その評価をするわけです。身内ですから当然甘くなる。泥棒に縄をなわせるようなものです。 しかも各幕僚監部は、いままで中長期的将来の環境を想定し、ドクトリンを開発し、それに基づいて装備を開発するという当たり前のことをやってこなかった。 こういう体質で将来を見据えたある程度画期的な装備の開発を事前に評価できるのか。 第3に、防衛産業が未だ零細の世帯ばかりで、利権を分け合っている。ソナーなんか、沖電気とNECでアクティブとパッシブ分け合っているわけです。あの小さい市場をいじましく分け合っているわけです。そんな状態でタレスやBAEシステムズあたりと五分につきあえますか? 早急に国内の業界を再編成する必要があります。 第4に、秘密保持の問題。特に国会議員。縛りがないから秘密の防衛委員会もない。議員に教えると漏れるから官僚は秘密を隠す、でも省益のためには自分たちも多の省庁の機密を平気でバラす。 でも処罰されない。こんなことでは相手国から信用されません。 第5に、はじめから相手を欧米に決めてかかっている。イスラエルや南アは言う及ばず、シンガポールやオーストラリアなどでも高い開発力を持った企業が多々あります。はじめから思いこみで相手を狭める必要はありません。 また相手企業をBAEシステムズとかGDとか、サーブみたいに大きなところを想定している。ブランド品狂いのOLと同じレベルのメンタリティです。自分たちの判断力に自信がないのと、あとで責任をとるのがいやだから、欧米大企業と組みたがる。 なんでも直接製作プロや専門の代理店に仕事をまかせればいいのに、保身のために電通に仕事を振る大企業の宣伝部みたいなものです。 寧ろ、小さいけど高い技術力を持ったところ、ヴェンチャー企業と組むべきでしょう。我が国の一番のアドバンスはカネがあることなんですから。カネにあかせて、弱い立場の相手と組んで主導権を握る、これですよ。 以上のようなことを反省して、改める努力をやっておかないで、共同開発に走ると高い授業料を払うことになります。そういえばF2も「共同開発」でしたねえ…・ (2007年3月29日23時48分 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070329ia25.htm |
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おお! |
オブジェクト 2007/04/04 21:22 |
海自の二曹のイージスシステム中枢情報も持ち出し事件。これで、ラプターのライセンスはおろか、完成機体も駄目になりましたな。というか、こんなに穴だらけの国と共同開発はおろか売ることすら危なくても引いてしまうでしょう。 |
シロ 2007/04/04 21:40 |
The All:現在は民生と軍需の境目が無く |
guest 2007/04/05 05:43 |
機密取り扱いの許可がマニュアル化されていないのが大きな問題です。 |
キヨタニ 2007/04/06 22:32 |
今頃何なのですが… |
彩葉 2007/05/10 19:32 |
信じていただくなくとも結構ですが。どうぞご自由にというしかないですね。 |
キヨタニ 2007/05/10 22:32 |
いや、あの… |
彩葉 2007/05/11 11:23 |
ぼくは自分が感情的な反応をしているとは思っておりません。 |
キヨタニ 2007/05/11 13:47 |
侮辱することを目的とはしていませんよ。 |
彩葉 2007/05/11 14:34 |
ソノブイも含めて対潜哨戒機のASWシステムは構築されているわけです。また、ソノブイの音が鳴らないといってもソノブイ本体に問題があるか、それ以外の問題があるのは現在のところぼくにはわかりませんが。 |
キヨタニ 2007/05/12 23:52 |
今開発しているソノブイがダメならば他のものを持ってくればよい、と簡単に済む問題でありません。他に代用がないから国産開発をしているわけです(我が国が独自の装備を開発する理由の公式発表はそうなっています)。ともかく代用品を外国に求めるであればその製品が合致するのか。運用上の要求をみたすか、試験する必要もあります。また代用品を輸入するのか、それともライセンス生産するのかそれもつめなければなりません。その上で具体的な機種を絞り込む必要があります。 |
キヨタニ 2007/05/12 23:54 |
エンジン、それに対潜哨戒機のキモであるASWの基幹部分(あなたはそう思っていないかもしれませんが、ぼくはそう思っています。恐らくぼくの同業者も同じだと思います)の開発が遅れているのは由々しき問題であるというのがぼくの認識です。 |
キヨタニ 2007/05/12 23:55 |
議論をするときにアナロジーを挙げたり、自分の立場を説明する例を挙げたりするの普通のことだと思いますが、あなたには理解ができないようですね。 |
キヨタニ 2007/05/12 23:56 |
あなたにはその気はないかもしれませんが、ぼくにはあなたが情緒的にキヨタニは信用できない奴である、そう述べているようにしかとれません。 |
キヨタニ 2007/05/12 23:57 |
あなたは2ちゃんに行けといわれたことに大層腹を立てているようですが、2ちゃんなら匿名同士ですから相手に何を言おうが、言われようがお互いに大したことはないでしょう。ぼくはそれでも匿名同士でもある程度の礼節は守るべきだとは思いますが。。 |
キヨタニ 2007/05/13 00:25 |
PXとCXの共通点てどのくらいあるのでしょう? |
アラメイン伯 2007/05/13 13:00 |
本筋とは外れますが、横から失礼します。 |
三条 2007/05/13 22:24 |
かつて長官時代、石破氏はPX開発を中止しようとしました。実現はしませんでしたが。ぼくはこれは正論だと思います。 |
キヨタニ 2007/05/17 22:54 |
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