「ドライブスルー」動画、幸せもスルーしてしまうのでは？

【PJ　2008年03月12日】− 11日夕方、日本テレビ系列のニュース番組とJ-CASTニュースで、youtube上でアップされている動画、タイトルが「ドライブスルーを全力でスルーしてみた【笑】」なるものが物議を醸し出している様子を報じており、気になった私も早速アクセスし、その動画をチェックしてみた。

　まず、この動画が広く市民に視聴され、模倣犯が出て他のドライブスルーを運営されている会社も何らかの被害を受ける事にならないか、危惧（きぐ）せざるを得なかった。どうしてこのような愚行を、堂々とネット上にアップされる気になれるのか。ご覧頂いた方も多いかもしれないが、私自身の感想を率直に述べさせて頂ければ、「全くもって理解に苦しむ」という以外に、適当な言葉が見当たらない。

　私の住む屋久島でも、観光業に従事されている方もいらっしゃれば、知人でも商売を営まれている方も多い。屋久島で同じような事例が発生した場合、私は看過する事はできない。私個人も、島内のとある書店で、時折レジのアルバイトをさせて頂く事がある。愚かな私に対する「たまには街に出ろ」という、店主の方のささやかな配慮であろう。大変有り難い事である。

　だからこそ、その恩に報いるためにも、アルバイト中は店側に絶対に迷惑を掛けてはならないと、万引や金銭の取り扱いには細心の注意を払っている。店ではお客さまから、書店に置いていない書籍の注文を受ける度、絶版等の品を除いて、本土からわざわざ取り寄せている。注文された書籍が届き、その旨の連絡をお客さまへ入れても、なかなか店まで商品を取りに来られない方がいらっしゃると、一介のアルバイト要員である私まで、大変胸を痛めるものだ。

　このドライバーの方、そして撮影された方に直接伺いたい。もし貴方（あなた）のご両親やご親族が何らかの商売を営まれていたとして、イタズラの注文が大量に入り、その結果として多大な損失を計上され、憂き目に遭われた場合、同じ様に笑って済ませる事ができるだろうか。貴方が同じようにドライブスルーで働かれていて、同じようにイタズラでスルーされ、このような動画が配信されているのを知った時、貴方は「笑顔」を作れるのだろうか。

　この方々を養われたであろうご両親も、何らかの職場で働かれているのだと思う。「仕事だから」と下げたくも無い頭を下げて、懸命にあなた方を育てて下さったご両親が、職場で同じような目に遭われていたら、腹の一つも立てないのだろうか。そして何より、このような事をして、ご両親が喜ばれるだろうか。いずれあなた方の正体が判明した時、ご両親をはじめ親類の方々は、一体世間さまにどのように顔向けされるのか、考えた事がおありだろうか。

　今回の動画からも、以前書かせて頂いた事もあるのだが、「自分がこういう事をすればどういう影響を周囲に及ぼすのか」という感受性が欠如しているように思えてならない。どう考えても、私自身が擁護させて頂く「要素」が何一つ見当たらないのが、大変残念である。

　このドライブスルーで働いていらっしゃる方には、血の滲（にじ）むような思いで働いている方もいらっしゃるかもしれない。自分の夢を叶（かな）えるために、懸命にそこで働かれている方もいらっしゃるかもしれない。そういった真面目（まじめ）に、一生懸命に頑張っている方々を侮辱する、まことしやかに悲しい事ではないだろうか。人さまに迷惑を掛けてまで取る「笑い」など、もはや誰も求めてはいまい。

　懸命なネットユーザーは、なおさらそう強く思われるのであろう。youtube上にアップされた動画を削除して醜く逃亡するのではなく、お金を払わずに逃げ去ったドライブスルーまで直接足を運び、非礼を心から謝って頂きたい。間違いは、誰しもが一度や二度、犯すものだ。このままでは今後、この動画を作成された方々に舞い込むはずの「幸せ」まで「スルー」してしまわないか、心配するものである。【了】

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パブリック・ジャーナリスト　大山 啓【 鹿児島県 】
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