(研究社・1200円)
何しろ辞書の研究社である。特集「英和辞典の新時代」はさすがに読ませる。しかし今月一番の読物は編集後記。七年にわたって企画の冴(さ)えを見せつづけた編集長津田正が出版部に移るに当っての挨拶(あいさつ)だから。
彼以前は毎号古風な編集で、市河三喜の隷書(れいしょ)の題字がよく似合っていたが、このところ様子が変って、隷書がかえって粋に見える。「ライト・ヴァース」「インターネット10年」「大学入試英語問題を批評する」「村上春樹のアメリカ」「トルーマン・カポーティ」「卒業論文」「『チャタレー夫人の恋人』を読み直す」などという特集は清新だった。最も楽しんで作った号は「苦手な作家」特集だという。文芸雑誌が真似(まね)てもよさそう。(才)
毎日新聞 2008年3月2日 東京朝刊