一一九番して病院に着くまでの時間ほど長く感じることはない。病院側が受け入れを拒否したり、搬送先が決まらず「たらい回し」にされればなおさらだ。
総務省消防庁がきのう、昨年一年間の救急搬送に関する調査結果をまとめた。急患の搬送で医療機関に三回以上受け入れ拒否された事例は全国で計二万四千八十九件。搬送されるまでに六十二回拒否されたケースもあった。
妊婦や急病人、交通事故などの負傷者も多く含まれている。スムーズに受け入れられる態勢をどう組み立てるか。調査結果をきちんと分析し、行政や関係機関が知恵を出し合いたい。
昨年八月、奈良県で腹痛を訴えた妊婦が奈良、大阪府の救急病院に次々に受け入れを断られ死産。さらに十二月には体調不良の大阪の女性が三十病院で受け入れられず死亡するなど同様の事例が全国で相次いだ。
受け入れ拒否は東京、大阪など大都市周辺に集中。中国五県では、重症者で十回以上の受け入れ拒否があったのは広島県の四件だけ。とはいえ今後同じ問題が起きかねない。
拒否の理由は、医師不足や設備の不備などによる「処置困難」が最も多く、「ベッド満床」「手術中・患者対応中」が続いた。
医師、ベッド数の不足などで受け入れたくても断らざるを得ない病院側の事情もある。ただ消防側と医療機関の連携は十分取れているかが気にかかる。
増田寛也総務相は、受け入れ拒否の一因として、医療機関に導入されている情報システムの不備を認めている。
消防に空きベッドの状況を知らせるシステムもデータ更新をしなければ、いざというとき役に立つまい。入力する人手がないとの声もある。病院の負担を軽減するため行政の助成も必要だ。
情報システムは無くても、病院から消防側に医師の勤務状況や空きベッド数などの情報が常に提供されているか。さらに患者の容体が救急隊から病院にきちんと伝わっているか。消防と病院側のきめ細かい連携があれば救えるケースもあるはずだ。もう一度チェックしたい。
重症患者にとって「頼みの綱」ともいえる救急外来を、軽症者が「コンビニ感覚」で利用してはいないか。頼れるかかりつけ医を持つことも大切だ。利用する側も、意識を変える必要がある。
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