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救急受け入れ 年々悪化

2008年03月12日

 県内の救急病院などで勤務医や設備不足などから急患が受け入れられず、搬送先が決まらない「受け入れ不能」の事例が増えている状況が11日に公表された総務省消防庁の実態調査で浮かび上がった。

 妊産婦の搬送事例では、救急車が現場に着いて搬送先が決まるまでに全国最長の3時間50分もかかった例や、30回目の照会で受け入れ先が決まった例もあった。

(岩堀滋)

 07年に県内で救急搬送された人は35万2857人。同消防庁は昨年10月、救急搬送と受け入れ医療態勢の改善を目的に04〜06年の妊産婦の搬送実態調査結果を公表したが、今回はさらに、重症患者の搬送事例などの調査結果も公表した。

 妊産婦の搬送では、転院のための搬送も含めて3442人が救急車を利用した。このうち、3時間50分も搬送先が決まらなかったケースと、搬送先が決まるまでの照会回数が30回を記録したケースは、いずれも横浜市で起きた。

 県災害消防課によると、妊産婦搬送は横浜・川崎両市で県内の半数以上を占めるという。

 30回のケースは妊娠中期の20代女性が体調不良を訴えたもので、搬送先決定まで1時間半以上かかった。このケースを含め、照会回数が4回以上だったケースは187件あり、大阪府、東京都に次いで全国で3番目に多かった。搬送が拒まれた理由は「手術中・患者対応中」「処置困難」「専門外」の順に多かった。

 産科医の一人は、周産期では特に妊産婦とともに新生児の救急対応が求められるケースが多く、医療機関の新生児集中治療室(NICU)の整備状況が受け入れを左右すると指摘する。

 この産科医は「NICU不足で患者を受け入れたくても受け入れられず、県外にドクターヘリで搬送するケースも出ている。関東全体の医療機関のネットワークで周産期救急のあり方を考えるべきだ」と指摘する。

 一方、一般の重症患者の搬送も、搬送先が決まるまで長時間かかるケースが目立った。「ベッド満床」「手術中・患者対応中」などが搬送を拒まれた主な理由という。

 2時間半以上搬送先が決まらなかったケースが6例。照会回数が4回以上だったのは1358件で、東京都、埼玉県に次いで3番目に多かった。

 照会回数の最多は29回で、川崎市内の80歳代女性が深夜に発熱して呼吸困難になったケース。救急車が到着してから搬送先が決まるまでに2時間43分かかったという。

 今回の調査は、受け入れ不能の数値的な調査で、実際に妊産婦や患者にどのような健康上のダメージがあったかまでは調査、分析していない。

 県災害消防課は「救急隊員は妊産婦や患者のために必死になって医療機関に電話をかけまくっている。厳しい数値が出ているが、医療機関が受け入れてくれないと搬送のしようがない」という。

 これに対し、医療機関側を担当する県医療課は「勤務医が減る一方で、救急を担う医療機関の負担も大きくなっている現状は知ってほしい。調査をもとに、国の動きも見ながら具体事例の検証とともに対応策を検討していきたい」としている。

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