直撃 注目のヒーローくん楽天・長谷部康平投手
「ツモ!」「ロン!」 麻雀で磨いた勘と読み


 新しいグラブ持参で入寮した長谷部。自慢の観察眼で新人王を狙う(撮影・越智健一)

注目のルーキーにスポットライトを当てる特別企画の第6回は、楽天の大学生・社会人ドラフト1巡目、長谷部康平投手(22)=愛工大=だ。昨年の北京五輪アジア予選(台湾)でアマチュアでただ一人日本代表に選出され、一躍全国区となったシンデレラボーイの素顔に迫った。

(取材・構成 越智健一)

4人集まればマージャン荘へ。メンバーがそろわなければパチンコへ。日本代表の左腕、長谷部は意外にも、そんな日常を送る普通の?学生だった。

【マージャン放浪記?】

かつては大学生といえば、“徹夜でマージャン”が合言葉。今のネット時代でそんな学生たちが減っている中でも、長谷部は友人たちと毎晩のようにアツい勝負を演じていた。

「趣味は、ぶっちゃけマージャンです。勝負勘を養っています」

大学入学後に始めた“頭のスポーツ”に、どっぷりとはまった。キャリアは浅いが、対戦中、相手の観察や心理戦が楽しくてたまらないという。

【サボり好きの少年時代】

野球を始めたのは小学2年の時。父・幸太郎さんや兄・佑太さんの影響が大きかったが、別の理由もあった。「ぜんそく持ちで体が弱く、スポーツをやれば体力がつくと思って」。当時、アニメ『スラムダンク』で大ブームとなったバスケットボールか野球かで迷った末、野球を選んだことが人生の最初の分岐点だった。

実力はずば抜けていたものの、「土日に遊べないのがいやで、サボることばかり考えていた」という。高校、大学へ進学しても考えは変わらなかったが、そんな長谷部に転機が訪れたのは大学3年。大学日本代表に選ばれたときだった。

◆少年時代の長谷部について父・幸太郎さん

「私自身、野球が大好きで、兄弟3人に野球をやらせたんです。康平は『バスケがやりたい』とか、『サッカーがやりたい』とか言いましたけど、冗談じゃない。野球をやれ!と怒鳴ったこともありますよ(笑)。小児ぜんそくを持っていて、小学校のころは発作で大変でしたが、高2を最後に治まりました」

◆長谷部が所属した岐阜中濃シニアの相談役をつとめていた尾藤義昭・関市長(61)

「子供のころから知っていますが、気配りができるというか、よく周りを見ている子でした。仙台にいって活躍しても、住所は関市にしてほしい。そうすると税金は関市に入るんですよ(笑)」

【大学日本代表】

代表の合宿で衝撃を受けた。1学年上に岸(東北学院大→西武)、金刃(立命大→巨人)といったその年のドラフト上位指名選手がズラリ。「みんなスゴい球を投げていました。レベルが違った」。ここで初めて闘志に火がついた。

「なぜか“化学反応”が起きました。やってやるという気持ちになりましたね」

自分もプロに、という気持ちが芽生えると、練習に対する取り組みも変わった。「それまでは与えられたメニューをこなすだけだったのが、考えて練習をするようになった」という。

【星野ジャパン】

愛知大学リーグの星から一躍全国区へ。周囲の見る目も変わった。しかし、チームに入ればアマは自分だけ。「どこまで踏み込んでいいかわからないし、基本的に自分から話しかけることはなかった」という。そこで役立ったのが、マージャンで培った?観察力だった。ダルビッシュや涌井のブルペンでの投球を見つめるうちに、大きな発見があった。「体幹というか、体の芯にだけ力が入っていて、あとは力が抜けている。われながらいいところに目をつけたと思います」。現在、自主トレでも、速球にさらに磨きをかけるため、腹筋、背筋など体幹を重点的に鍛えている。

■長谷部 康平(はせべ・こうへい)

★生まれ 1985(昭和60)年5月21日、岐阜・関市生まれ、22歳
  ★サイズ 1メートル73、68キロ。左投げ左打ち
  ★血液型 A型
  ★家族 父・幸太郎さん(52)=会社員、母・泰子さん(48)、兄・佑太さん(24)、弟・拓朗さん(20)
  ★球種 直球、スライダー、チェンジアップ。直球のMAXは152キロ
  ★球歴 旭ヶ丘小2年で野球を始め、中学時代は岐阜中濃シニアでプレー。愛知・杜若高では、甲子園出場経験はなし。愛工大では3年からエース。
  ★好物 煮物。調理師免許を持っている母・泰子さんの手料理も大好きで、特にハンバーグが好物。
  ★特技 入団発表でトランプを使った手品を披露したが、本当の特技?は「歯ぎしりですかね。夜中はうるさいらしいです」
  ★ファッション サーフ系。穴のあいたダメージジーンズばかり持っている。ところが犬鷲寮の春日寮長が穴あきジーンズを取り出し、「こういうのは絶対に許さない」とダメ出し。「全部買いなおさないと…」とショックを受けている
  ★幸せな一日 オフの間は目覚まし時計をかけず、携帯電話もマナーモードにしてなるべく遠くに置く。「(午前)10時半くらいに目覚めて、体調がよくて、天気もよくて…。じっくり体を動かして、部屋の掃除もできれば充実した一日だと思いますね。午後2時とかに起きると、もったいない」。
  ★メジャー 「英語しゃべれないですから。いきません!」